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キヴォトス  作者: ととこなつ
第一部 ~時の館篇~
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31話 ルナ Ⅰ 2


 廊下を抜け、校庭に出て、それから体育館へ――と思ったら、そこは体育館ではなく、射撃場だった。ルナは、ミランダと、見知らぬ三人の女の子と一緒に入った。


 学生は集まっていたが、教官らしき人はいない。

 場所はちがうが、学生時代がなつかしく、ルナはキョロキョロとひっきりなしにあたりを見回した。


(いまは、みんなにあたしが見えてるのか)

 ルナはウサ耳をせわしなく揺らした。

(ここが、L18の学校かあ)


 射撃場が学内にあるということが、L77のルナの母校との違いを感じさせた。


「やだ、アズラエルが来てる」


 ミランダが、(おび)えたように後ずさった。彼女の視線の方をみると、ひときわ異彩を放っている五、六人の男子学生がいた。


 制服は着崩しているし、Tシャツ一枚でジャケットすらない。腕や手の甲にタトゥは当然のように入っていたし、目の周りに入れている者もいる。ヒゲにハゲにモヒカン、表現のしようもないデザインもいた。髪の色もカラフルだ。


 でかい声でなにか笑いあっている。その中央に座って、おもしろくなさそうな顔をしているのは、髪の長い――十五歳ころのアズラエルだ。


「めずらしいわね。アイツが授業に出てるの」

「ウソ。軍刑から出て来たの?」

「まだ入ってないって」


 女の子たちが、ひそひそと、笑いあった。


(ぐんけい……刑務所のことですか)

 ルナの目が平たくなった。


「ヘーキよミランダ。オトゥールも来るし」

「でもクラウドもオトゥールもまだ来てないわ」

「アズラエルが今ミランダになにかしたら退学だって。それに、あいつ、フツーの子には近づかないって」


 ミランダは、その言葉が聞こえていないかのように、そそくさと射撃場を出て行った。


 よっぽどアズラエルが怖いんだな、とルナは眉をへの字にした。

 アズラエルは小さなころから迫力があったからなぁ。


 ミランダが出て行ったと同時に、女の子三人が鉄砲玉のようにわめきだす。


「バカじゃないの!? 自意識過剰すぎんじゃない?」

「ミランダが怖がってるだけで、アズラエルがあのこに近づいてきたことあった!?」

「ないよね。アズラエルがミランダに話しかけてるとこもあたし見たことないんだけど。だっていつもオトゥールにべったりじゃないあのこ」

「オトゥールと付き合ってるくせに、アズラエルにも好かれてるって思われたいんでしょ」

「単なる幼馴染みなんでしょ? それをいつまでもビクついてバカみたい。あそこまで大げさだと逆に引くよね。アズラエルのほうはなんとも思ってないでしょ」


(ひい)

 ルナも逃げ去りたくなった。


「なんとも思ってないって。だってアズラエルのタイプじゃないじゃんあのこ」

「あいつのどこがよくてモテるのかわかんない。あたし好みじゃないし」

「あんたの好みはオトゥールとかでしょ」

「つか、まず傭兵じゃん。その時点でアウト」


 ルナは思わずそれを言った女の子の顔を見たが、彼女たちはまったく気づかず、しゃべりつづけた。


「あたしも傭兵はパース。遊びならいいけど」

「そりゃだれだってそうでしょ?」

「傭兵だって時点で無理よ」

「来ないね教官。あたしトイレ行ってくる」


 一番過激なセリフを吐いていた女の子が、綺麗に巻いた金髪をひるがえしてトイレの方に歩いて行った。


 ルナは、ちょっと落ち込んだ。

 ――傭兵への差別って、こんなところにもあるんだ。

 自分のことではなくても、なんだかすごくいやな感じがした。


 アズラエルのほうをみると、なにかおかしいことがあったのか、仲間と笑っている。こっちの会話は、そっちには届いていないようだ。

 トイレにいった子の後姿を見ながら、残されたふたりはまた噂話を始める。


「アイツ、ビルと別れてから男いないからね。すさんでるよ、怖!」

「グレンに冷たくされたから荒れてんじゃないの。アイツ絶対グレン狙ってるからさ、気をつけなね、ルナ」


(え?)


 急に話に巻き込まれ、ルナは聞き返しそうになったが、女の子たちの鉄砲玉のようなトークは、相槌(あいづち)も質問も必要としてはいなかった。


「タフィって、将校のオトコ狙いなんだよね。オトゥールに迫って断られてからだよ。ミランダに当たりきつくなったの。今度あんたの番だってウワサだよ」

「将校のオトコ彼氏だと、大変だよね。てかアイツ、将校狙いじゃなくて、ひとのオトコ狙いなんだって」


 あはは、と甲高い笑いに、ついに周りの生徒も振り向いた。


 どうやら、あたしはグレンの恋人らしい。

 で、あの、タフィという子が、グレンを狙っている?


「ルナ」


 ルナが状況を飲み込もうと、ウサ耳を全開にしてうわさ話に聞き入っている後ろから、今にもへたり込みそうな声が聞こえた。

 聞き覚えのある声に振り返ると、あの十六歳のグレンが、弱った顔でしゃがみ込んでいた。噂話をしていた女の子ふたりも、驚いた顔をしている。


「腹減った……。なにか食わせてくれ……」


「ど、どうしたの?」

 あわててルナもしゃがみこんだが、グレンはためいきをつき、「朝からなにも食ってねえんだ」と言った。


「どうして!?」


 グレンみたいなお坊ちゃまで、専用のコックさんもいるという家で、だれもごはんを作ってくれなかった、というのはあり得ないだろう。


「今日あけるために、このあいだから生徒会の仕事片っ端からやっつけてて。そしたらさすがに今朝寝坊して、メシ食いっぱぐれて。昼まで持つかと思ったけどダメだった……」


 本当にお腹がすいているのか、今にもかすんで消えていきそうな声だった。

 生徒会の仕事。

 グレンは生徒会の役員か。生徒会の仕事は、そんなに忙しいのだろうか。


(そういえば、せいとかいちょうだって、ゆってた!)


 ルナははっとして、抱えていた包みの存在を思い出した。

 お弁当のふたを開け、中からおにぎりを二個だしてグレンに渡す。水筒らしきものはスープジャーで、なかに入っていたのはコンソメスープだった。なみなみと注いで、グレンに渡した。

 グレンは、三口ほどで小さなおにぎりを平らげて、コンソメスープを一気飲みする。


「……あー生き返る。マジでうめえ」

「朝ごはんは食べなきゃだめです」


 ルナが嘆息していると、あとからぞろぞろと学生たちが入ってきて、グレンとルナを冷やかしていった。


「グレン。奥さんのメシにやっとありつけたか」

「いいな。うまそうな匂いさせて。俺も腹減ったぜ」

「ルナちゃーん。俺にも愛妻弁当作ってくれよ」


 グレンは口いっぱいに頬張っているのでなにも答えなかったが、身振り手振りであっちいけ、と怒鳴っていた。


 グレンは口の中を空にすると、ルナの額にちゅっとキスをして、

「うまかった。愛してるぜルナ。あとでな」

 と言ってさっさと仲間たちの中にもどっていく。


「……」


 ルナは真っ赤な顔で、キスされた額に手を当てた。

 ミシェルがクラウドと付き合い始めてから言っていたが、L18はスキンシップが多いというのも本当らしい。ルナがキスされても、とくに冷やかされることもなくスルーされている。


 周りを見れば、恋人同士はルナとグレンだけではない。ふたりで指をからませあって、すみっこでキスしていたりと、かなりオープンだ。L18では普通かもしれないが、ルナには慣れない。


 慣れないルナが、キスされた額を手で押さえて赤面していると、視線に気づく。もしかして、さっきのタフィとかいう女の子かと思ったが、違った。さっきしゃべっていた女の子ふたりでもなかった。


 アズラエルだった。

 肘をついて、無表情でじっとこっちを眺めている。

 ルナと目が合うと、急ににっこり笑った。


「!?」

 ルナは驚いて、目をぱちくりさせた。


「……アズラエルってさ、やっぱミランダじゃなくてルナのこと見てんじゃないの」


 急に頭上から声がして、ルナは驚いた。さっきの女の子たちはまだここにいたのだった。


「あんただってアズラエルと幼馴染みだっていうし、あんたのママとアズラエルのママって仲いいんでしょ?」


「ほ!?」

 ルナは、また返答しかねた。


「傭兵なら傭兵どうし、グレンよりアズラエルと付き合ってほしいんじゃない? あんたの親」



 ――あたしの親が、傭兵?


 ルナはあわてて、自分の制服を見直した。そうだ、この服はカーキ色。傭兵の制服だ。


(そうだった、あたしは傭兵だった!)


 自分が傭兵なら、親も傭兵だという可能性はじゅうぶんにある。

 ルナの目に、はじめて周囲の制服のカラーが目に入った。

 アズラエルの仲間はアズラエルも含めて全員カーキ色、グレンとその仲間はグレー。めのまえの女の子二人とタフィとかいう女の子もカーキ色。


 この女の子たちは、傭兵なのか?

 傭兵なんて、ありえないと言っていた、この子たちが?


「いえてる。たぶんあんたとグレンが好きあってたって、グレンの親が許さないよ。傭兵との結婚なんて。それで行くとさ、アズラエルとの方が存外うまくいったりなんかして」


 また女の子たちの弾丸トークが始まりそうになったとき、やっと教官がきた。


「集合!!」


 がなり声に向かって、学生たちが中央に集まって行く。

 ルナも、一応みんなに沿って、集まりに参加した。


「今日は時間まで射撃訓練だ。いつもみたいに同じ出席番号同士で組んでやれ」


 教官は、そう言って手元のバインダーを見た。


「ああ、今日は三クラス合同なのか。なら、一学年上は下二クラスの指導にあたれ。分かるな? 同じ出席番号同士で、三人ひと組だ」

「教官! 同じ出席番号同士だったらだれと組んでもいいんですね?」

「ああ。だが、年長のクラスは必ずひとり入るように。指導のためにな」


 バラバラとひとが散っていく。ルナは戸惑った。同じ出席番号の人はだれだ。分からない。

 そう思っていると、三人の男女――女ひとりに男ふたりがルナの方にやってきた。


「ごめんルナ」

 女の子が申し訳なさそうに頭を下げた。

「あの……あたしたち三人で組むから……アズラエルと組んでくれないかな」


「ぷぎ?」


 ルナが口を開けているあいだに、何度も「ごめん」と彼女は謝り、男ふたりも苦笑いして、さっさと行ってしまった。

 それとほぼ同時に、ぬっと大きな影に覆われ、振り返るとやっぱりアズラエルだった。


「なんだ、おまえか」


 今さらルナは、アズラエルを怖いとは思えなかったけれど、怖いふりくらいしなければならないだろうか。


「あの。三人ひと組でしょ? もうひとりは?」

「あ? 知らねえ。どっかの組にはいってんじゃねえか」


 アズラエルはもうルナを見ていない。コースに立って、銃を(いじ)っていた。


 アズラエルはいつもみんなに避けられていたのだろうか。

 でも、無理もないとも思う。ルナだって初対面の時は怖いと思ったし、このころのアズラエルはとくに、顔つきも荒んでいるし、動作も荒々しくて、もっと怖い。


 アズラエルは銃を台に置き、「お先にどうぞ」と言って、後ろの椅子に座り込んでしまった。


 しかたなくルナは銃を手に取ったが、つかいかたなど分かるわけがない。急に周りが銃声であふれて、ルナはびっくりして跳ね上がった。


 射撃訓練が始まっている。耳をふさぎながらルナは銃を見た。よくみると、弾は込められている。ルナはさすがに銃を扱ったことなどないが、映画や漫画で、どこを押せば弾が飛び出すのかぐらいわかる。


(トリガーを引くだけ、かな)


 周りをきょろきょろ見渡せば、みんなちゃんと耳あてをつけている。ルナが探すと、下の台にそれはあった。もたついていると、アズラエルが眉をひそめて言った。


「タマは入ってるけど?」


 ルナは焦った。


(怪しまれるかな。フツーにこの学校にいたら知ってることだよね?)


 着けかたが分からないゴーグルと悪戦苦闘していると、うしろから手が伸びてきてさっとそれをつけてくれる。


「つけかたも分からねえなんて、おまえ、授業出てんのか? 俺より出てねえんじゃねえの?」

「出てます!!」


 出てないけど。

 あまりの銃撃の音と、自分だけ出来ないのに焦って、ルナは思わず叫んでしまったが。

 両隣の組が、真っ青な顔をしてルナを見た。ルナもあわてた。

 つい、条件反射で。

 信じられない、という顔でみんなルナを凝視していた。

 アズラエル本人は気にもしていないようで、鼻で笑っていた。いちいちむかつく態度だ。


 なにもしないわけにはいかないので、とにかくルナは、銃を両手で持って、的のほうめがけて撃ってみた。ガアン! という衝撃のあと、腕にものすごい痛みが走って、ふっ飛ばされるように真後ろに座っていたアズラエルの膝に乗っかってしまった。


 くっくっく、とこらえ切れない笑いがアズラエルの口からもれている。


 両隣は射撃訓練どころではなかった。アズラエルがいつキレるか、怖くてそれどころではないのだろう。アズラエルにうるさいといい、挙句にふっ飛ばされたせいで、しかたないとはいえ、膝に乗っかっている女がいる。


 ルナもそれどころではなかった。腕が痛い。ビリビリ(しび)れて、肘のあたりも泣き出しそうなくらい痛かった。

 夢なのに、なんでこんなに痛いのだ!


「おまえ、マジでバカじゃねえの」

 アズラエルがおかしそうに笑った。

「ちゃんとよく見て撃てよ。三十八口径なんかおまえの細腕で撃てるかよ」


 もしかしてわざとやったのか? 

 タチが悪すぎて、ルナは怒りが沸点に達しそうだった。


「いだい!」

 ルナが怒鳴る前に、アズラエルがルナの肘をつかんだ。

「抜けたか? もしかして」


「アズラエル! そこ、なにしてる!!」


 教官の怒鳴り声に、アズラエルは肩をすくめた。


「別になにも? コイツが勝手に三十八口径撃ってふっ飛ばされただけだ」


 教官は疑わしげな目でアズラエルをにらんだが、ルナを見て「……ほんとうか?」と尋ねた。

 たしかにほんとうだが、アズラエルの嫌がらせだ。ルナが説明できなくてまごついていると、教官がため息を吐いた。


「ルナ。親が泣くぞ。ちゃんと銃はたしかめて撃つように。おまえは二十二口径だろう。三十八を撃つ女子もいるが、おまえは二十二もまだまともに撃てんのに背伸びしすぎだ。それに」


 教官は、奇妙な顔をした。

「どうしてゴーグルなんぞつけてるんだ?」


 どこからか笑い声があがった。

 ルナはあわててゴーグルを外す。

 そうか。これはいらなかったのか。そこにあるから、必要かと思ってつけてみたが、だれも付けている人はいない。


(アズラエルも教えてくれればいいのに!)


 ルナは真っ赤な顔で睨みつけたが、彼はそっぽを向いている。

 ふと、遠くにいるグレンと目が合った。ルナは驚いた。グレンが険しい目をしてこっちを睨んでいる。


(なんで?)


 ルナは戸惑った。

 銃がうまくうてなかったから怒っているのだろうか。ゴーグルをつけていたから? それとも、笑いものになったから?


「おまえならやりそうだからな。助かったぜ」


 おかしそうに笑うアズラエルの(すね)を、ルナはこの際とばかりに蹴ってやった。


「いてっ!」


 アズラエルが思わずうめき声をあげ、ふたたび両隣が「ひいっ!」と悲鳴をあげた。


「てめえ……」


 アズラエルが強烈な眼力で睨んできて、ルナもさすがに怯んだが、なんとかこらえてそっぽを向き、ほかの銃を探した。そうしたらやはり、こちらが二十二口径なのか、小さめの銃がある。それを取ろうとしたら、

「オイ。調子のんじゃねえぞ」

 アズラエルが火を噴きそうな目で、ルナを真上から睨んでいた。


 ルナもさすがにごくりと息をのんだが、ピーっという笛の音で、皆の注意も、アズラエルの注意もそれた。


「射撃訓練が始まってまだわずかだから仕方ないが、みな、基礎がなっとらん。中には二十二口径も三十八口径も分からん生徒もいるようだしな」


 プーっと吹きだすような笑いが上がり、ルナは赤面した。

 ……ヤな教師。


「そこで、射撃の優秀な生徒に手本になってもらう。グレン! アズラエル! 前へ出ろ」


 皆が注目する中、グレンとアズラエルが中央のコースに立った。


「グレンからだ。撃て」


 教官の声に従い、グレンは耳あてだけをして銃をつかむと片手で構えた。数度、小気味よい音がして、グレンの弾丸はすべて標的の真ん中を貫いていた。感嘆の声が周りからあがる。


「アズラエル。やれ」


 隣のコースでアズラエルが面倒そうに銃を持ち上げた。


「さっき、俺の(すね)思いっきり蹴りやがったヤツがいたな」


 アズラエルがじろりとルナの方を睨む。周囲のざわめき。

 ルナはまったく怖くなかったので、歯をむき出してやった。ふたたび、両隣のグループが、ルナを異星人でも見るような目で見た。

 教官だけが、眉をあげてすごむ。


「よけいなことをいうな。さっさとせんか!」

「はァい」


 アズラエルは返事と同時に撃った。だが、それは中心からは外れ、的の右足部分を撃ち抜いた。


 ざわめきは一瞬にして静まり返った。アズラエルの意図が分かるころには、射撃場が、息苦しいまでの沈黙に支配されていた。


 右足、左足、右腕、左腕。最後に眉間の位置。


 順番に、慣れた所作で撃ち終えたアズラエルは、「……動かねえ的って楽だな」とぼやいて銃を台の上に置いた。


 済んだとたん、グレンのときよりも、ざわめきの色が濃くなる。どこかから、「すげえ」というため息のような声も聞こえた。グレンのときよりも、みなの感嘆は上のように見れるのに、その感嘆を表現することを、押さえているようだった。

 困惑の混じった――どこか遠慮がちな――。


 やがて、咳払いとともに、教官の声が聞こえた。


「――グレンはさすがだ。あれほどのスピードで、すべて中央に的中させる技量はずば抜けている。これからも“グレンを見習って”練習に励むように!」


 アズラエルの射撃の腕には一切触れず、教官は妙に明るい声で締めくくった。


 ざわめきはまだ続いていた。アズラエルは台から離れると射撃場を出ていく。まだ授業は終わっていないのに。

 ルナはびっくりしたが、教官も知らぬふりをしている。


 グレンは、周りを生徒に囲まれて、口々に()めそやされているが、顔がこわばっているのはルナにも分かった。

 ルナは、ようやく気づいた。


(これって、グレンとアズラエルの夢の中に出てきた、射撃場での勝負の一件?)



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