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キヴォトス  作者: ととこなつ
第五部 ~ラグ・ヴァダの神話篇~
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194話 アストロスの兄弟神 Ⅱ 1


 サルーディーバは、屋敷に閉じこもったまま、真砂名神社の異変を感じていた。ベランダに行けば、その光景が見られる。だが、サルーディーバは室内を動こうとしなかった。


(助けに行けというのですか、神よ)


 サルーディーバの目前には、真昼の女神と月の女神が現れている。サルーディーバが小さく首を振ると、女神たちは消えた。


(グレン様……)

 あの階段で、グレンが苦しんでいる。アズラエルも。


 夜の神が八十三段目にまで誘えば、サルーディーバが九十三段目まで上らせる。サルーディーバが十段分助ければ、あとはルナが残り十五段を助けるだろう。

 だが、サルーディーバには、助けに行けない理由があった。そうしてはならないのだ。いくら彼らが心配でも。


(わたくしの目に映るものは、すべて“父”の目にも映る)


 ラグ・ヴァダの武神に、見せてはならない。

 この、アストロスの武神が蘇る儀式を――。





「おい、九庵は無事か!!」

「気ィ失っただけや」

「ようがんばったのう、九庵」

「がんばった! ホンマようがんばった! 一週間ウチのモーニングセット、タダで食わしたる!!」

「だれか、オラも褒めて!!」

「あーようやったようやった! シオミの若旦那!! キスケらもご苦労さん!」

「撫でたるからちょっとかがめや!」

「もうひと樽用意しとるで、飲んできや!」

「フサ坊、景気づけに一杯いくで!」

「オニチヨ、なんか肴ないんか」


 気絶した九庵は、階段下で、皆の涙と拍手喝さいを浴びながら、紅葉庵に運ばれた。

 フサノスケと鬼たちと、九庵がさらに五段上げてくれたが、まだ終わってはいないのだ。


 ――おかしな気候だ。だれもかも、そう思った。


 九庵が来たときに一度止んだ雨は、彼が紅葉庵に運び込まれたとたんに、また降り出した。

 雨雲に覆われ、前が見えなくなるくらいの豪雨だ。身体が冷えてもおかしくない。なのに、なぜか猛烈な暑さを感じるのだ。真夏のような、むわりとした熱気。

 また、雨が止んだ。


「なにかね? この天気」


 皆が皆、驚いて、周囲を見回す。傘をさしていたものは、傘をたたんで頭上を見上げた。雨が、いきなり消えるように、止んだのだ。


「ララ! クラウド! おぬしら、すぐに上まで上がれ!」

 イシュマールが金切り声で叫びながら、横道を降りてきた。

「ニックとベッタラは下へ行け! あの二人を残して階段から皆下りろ! 下にいる連中も、大路を開けて、みな家屋敷の中へ逃げろ!」


 階段頂上のやじ馬たちも、おじいさんの声に従って、次々奥殿へ続く山道のほうへ避難した。


「急げ! 急がんか!」


 階下では、ナキジンたちが、何人かと協力して、救急車の中に寝ている救急隊員を、紅葉庵まで担架ごと運びだした。


「太陽の神さんが来る。みんな奥までひっこめ! 燃やされるぞ!」


 暗雲が、幕を引くようにさあっと晴れ、真夏にしか現れないような強い輝きの太陽が、中天でぎらつきはじめた。


 さっきまで雨に打たれて冷え切っていた身体が、今度は全身から汗が噴き出るような暑さに支配されていく。


 ルナは噴き出る汗を拭った。びしょびしょだった服は、まるで砂漠のような熱気に、一気に乾いた。そして今度は、自らの水分で服を濡らすことになった。だれもが布で、自分の衣服の袖で汗を拭っているというのに、シグルスはまるで凍えたような顔をしているのだった。


 その腕が震えているような気がしたのでルナは、「シグルスさん……だいじょうぶですか」と聞いてみた。

 シグルスはふっと苦笑した。だが、身体の震えは収まらないようだ。


「怖いんです――情けない話ですが」

 歯をカチカチと震わせながら、彼は言った。

「私は、今、何を目の当たりにしているのですかね――」





「あんた! そんなとこにいちゃいかん!」


 真砂名神社のふもとにものすごい人だかりができていて、なんだなんだと足を急がせたセルゲイの前で、その人ごみがさあっと店の中に隠れていく。


 雨は降ったりやんだり。分厚い黒雲で夜のようになっていたかと思ったら、急に太陽が出てきた。


 なによりも、セルゲイの目をくぎ付けにしたのは、階段にそびえたつ、ふたつの巨大な石像の姿だった。


(何が起こってるんだ?)


 紅葉庵からおじいさんがあわてた様子で出てきて、目を白黒させて大路の真ん中に佇んでいたセルゲイを、店内に引っ張って行った。


「あんた、よその区画の人だね! とんでもないときに観光に来たもんだね。まず、ちょっとのあいだ、ここにおりなさい」


 ナキジンは、セルゲイに椅子をすすめた。

 セルゲイは、宮司のイシュマールと面識はあるが、大路のひととは面識がない。互いに、そうだった。


 見れば、この商店街の従業員とおぼしき人々や、L03の衣装や着物を着たひとたちが、息をひそめて店の奥に落ち着いていた。ガラス張りの店内からは、セルゲイにも階段の様子が少し見えた。


(ペリドットさんから、アズラエルたちを助けに行けと連絡があったんだけど――まさか、この騒ぎの原因か?)


 セルゲイも、ペリドットからの連絡を受けて、もらいたてのシャイン・カードでここに来たのだった。

 生来のおおざっぱゆえか、説明している時間が今回はなかったのか、「助けろ、急げ」とだけ言われて、セルゲイは病院から飛び出してきた。


「あの――いったい、何が?」


 セルゲイが、もふもふの白ひげに覆われた、派手な衣装の店主にそう聞くと、紅葉庵の看板娘――ヨボヨボのおばあさんが、しわがれた声で言った。


「今日は、もうまともな観光はあきらめたほうがええよ。神さんが、階段をあがっとるで」

「――え?」


「どうも。わしな、カンタロウ。入り口んとこの駄菓子屋のヌシ」

 カンタロウと名乗った、別のじいさんが、大声でしゃべりはじめた。

「よその人は知らんやろうけど、あの真砂名神社の階段は不思議な階段で、前世の罪を浄化してくれる階段なんや」


「……」

 セルゲイも、すでにその説明はアントニオから受けている。自身も、這う這うの体で、あの階段を上がった。


「わしはナキジン。ここの店主じゃ!」


 ナキジンは、ちゃんと自己紹介をしてから、説明を始めた。


「ふつうの人はね、そんなに困ったことにはなりゃしない。多少のぼるのが辛くても、足が重くても、そりゃ、運動不足でごまかされる程度の範囲じゃ。だいたいの人間は、そんな重苦しい前世を持っとらん。だがね、かなり古い魂だったり、どっかの王だの、騎士だの、神官だのの前世を持っている人間は、あの階段をのぼるのが難しい場合があるんだよ」


「はあ……」


「人をたくさん殺した罪人だったりしてもだな、魂が背負った罪は大きい。でもたいがい、上がれるもんじゃ。上がれないやつもたまにいるけどね。階段の手前で逃げ出しちまったり、途中で倒れて、わしらに救出されるやつも、たまーにおる。今回のはとくべつじゃ」


「特別……?」


「体格のいい若い兄ちゃんがふたり、上ってるんだがね。わしらは、この地区の観光案内人も兼ねとるし、見知らぬ人間が階段をあがろうとしたときは、ここらの商店街のモンは、だれかれが必ず様子をみとる。上がれんようになったら助けんといかんから。あの兄ちゃん二人は、まえも一回、あがっとる。だが今回は、とんでもないモンが出てきおった」


 ナキジンという店主は、だんだん興奮してきた。隅に引っ込んでいた人たちも、集まってきて口々にしゃべり出した。


「ありゃァ、前世に神さんを持っとる!」

「……」

「神さんじゃ、神さん! アストロスの神さんじゃ!」

「だってあれは、アストロスの遺跡にある石像よ! あたし、アストロス行ったとき、見たもの!」

「あんまり大きな魂じゃもんで、ほかの神さんの手助けがないと、上がれんのじゃ」

「真昼の神様、はじめて肉眼で見ました、私! ――美しかった――」

「神さんの魂はあっても、もっとるのは人間じゃからな。――いや、神さんの魂じゃから、アレを背負って上がれるんか?」

「金いろの龍! 見ましたか!? ものすごかったですよね!!」


 彼らは、めのまえにいる人のよさそうな好青年も、「神さん」だとは知らずに好き勝手にしゃべっていた――よりにもよって、一番恐ろしく、ミシェルには後ほど、「ラスボス」と呼ばれ、畏怖(いふ)される存在ではあっても、「神さん」と親しげに話しかけられる風貌ではない、夜の神相手に――。


 一斉にしゃべりまくられ、セルゲイはたじたじとなりながら、「そ――それで、皆さん、ここに避難しているんですか?」と聞いた。


 集団のおしゃべりが、さっきの雨のようにピタリとやんだかと思うと、またいっせいにさえずり出した。


「太陽の神さんが出てくるんじゃよ!」

 ツルッパゲのおじいさんが、杖を打ち鳴らしながら叫んだ。

「さっき、雨雲が晴れて太陽が出てきおったろ、太陽の神さんが出てくる証拠じゃ」

「太陽の神さんが、あのふたりを助けるために出てきよるのよ!」

「太陽の神さんは、猛火とともに現れる」

「あの雨雲は、夜の神様が出てくる合図かと……」

「太陽の神が出てきてしまうんは、大変なことになる。”アントニオさま”が力配分を間違うたら、ここら商店街、燃やし尽くされてしまうでの!」


「ええ!?」

 セルゲイは思わず大声を上げてしまった。


「それだけ、太陽の神と夜の神――男神の力は尋常ではないんです。出てくるだけで、この異常気象です」


 若い女性の神官が、汗を拭き拭き、言った。セルゲイがここにきたときに感じた異様な熱気は、ますます増している気がする。

 セルゲイも、ポロシャツが肌に貼りついているのに気付いた。恐ろしく、蒸し暑い。


「あの救急車は、もうあきらめるしかないわい」

「でも、もしかしたら、太陽の神様が出てきたあと、火を鎮めるために夜の神様が待機してらっしゃるかも……」


 セルゲイは、自分がここに呼ばれたわけをようやく解した。両手で顔を覆いそうになった。

(すみません……! ここに待機させてもらっています……!)


「でも私、夜の神様は恐ろしくて……」

「あらあなた、そんなこと、」

「あたくしは、夜の神様の一途なところが好きですわ。太陽の神様は女の敵ですもの」

「……わしも夜の神は恐ろしゅうて……」

「奥殿の、夜の神立像、もうすこしなんとかならんもんかなあ。あれだけ見とると、ほんに怖い神さんじゃし」

「罪人も悪党も怯えるくらいの迫力でなければ、魔よけの神は務まりませぬ」

「ウチの悪ガキどもにゃァ、悪さしよったら、夜の神さんがくるぞ! が一番の効き文句じゃあ」


 セルゲイは、思わず、あまり怖がらないでやってください、たぶん神様が傷つきます、というところだった。


 セルゲイが苦笑いしかけた瞬間――ドオンっ! となにかが爆発したような音がし、店のガラス戸がいっせいに割れた。


「うわあっ!!」

「きゃああ」


 セルゲイをはじめ皆は、店の奥に引っ込んでいたから、ガラスの破片が襲い掛かることはなかったが、もうすこし窓際にいたなら、けが人が出ていたところだ。


「――!?」


 セルゲイは外を見て、絶句した。すでに店は、猛火に囲まれている。

 さっきの爆発音は、救急車が炎上した音だったのだ。屋外から人の悲鳴が聞こえてくる。真砂名神社の階段の方も、火に囲まれて――セルゲイは青くなった。

 階段に、アズラエルとグレンがいるのでは?


「ああ、こりゃいかん!!」


 皆は、またいっせいに立ちあがって消火活動に動きはじめたが、セルゲイは、急にぐわんと大きなものが――それこそ、階段でアズラエルたちを押し潰している石像ほどの大きなものが、自分の背中に乗った気がした。


「……?」


 以前は、夜の神に身体ごと乗っ取られて、そのあいだの記憶がなかったが――今はちがうようだ。セルゲイが共存を許したからだろうか。アントニオの言ったように、セルゲイの意識もある。


「あ――あんた――」


 ナキジンが、バケツを引っ提げ、口を開けてセルゲイを見つめていた。女性神官のだれかも、ちいさく悲鳴をあげた。

 セルゲイのまえに鏡を差し出したなら、セルゲイも彼らの反応の意味が分かっただろう。


 ゴゴゴ……とふたたび黒雲が、商店街の真上を覆う。真砂名神社の天気は、まっぷたつに割れた。商店街側は黒雲に覆われ、神社と階段側は、太陽が照りつける。


 真砂名神社の奥殿に続く参道から見ていたルナたちは、この不思議な天候に、呆然と見とれるしかなかった。


 セルゲイの口から、なにやらひどく重々しい声が響いたのと同時に、さっきまでこの界隈に降り注いでいた豪雨が――滝のような豪雨が、一気に降りだした。

 雨は、みるみる火炎を消してゆく。


「た……たすかった」


 バケツや消火器を手に、腰を抜かして降り注ぐ雨をながめた店主たちだったが、はっと気づくと、セルゲイはもう店内にはいなかった。




 

「アズたちが……!」


 ルナとミシェルの悲鳴は、猛火に遮られた。階段の周囲の草木が、ごうごうと燃えている。火種がなくても、あれほどの勢いで燃え盛るものなのか――。


 階段で倒れているふたりは、ピクリとも動かない。


 商店街の方は、また雨が降って大火災は免れたが、最初の業火にやられた救急車が、爆発炎上したのを、ルナたちも見た。


 参道にいたルナたちは、階段を覆う猛火にあぶられることはなかったが、ルナは熱さにか――それとも、このけぶる様な桃の香りにか、頭がクラクラしていた。


(――来る)


 つよい花桃の香りが、ルナの鼻腔(びくう)をくすぐった。


(兄さまが、来る)





 ――軍事惑星L21、衛星プルートー。


 この衛星ひとつが、傭兵グループ「ヤマト」のアジトであることは、白龍グループの幹部と、メフラー商社の幹部しか知らない。


 めずらしく、ヤマトの首領であるアイゼンが、この本部に姿を現していた。

 

「去年から様子がおかしいのですが、今日はまた特に」


 ヤマトの本部に祀られる神、夜砂名(やさな)神社の神が荒ぶっているのだという。去年も数度、同じことがあったが、アイゼンがスペース・ステーションに降り立ったときから、豪雨に落雷に、竜巻に突風。たしかに尋常ではない気象だ。


 アイゼンの側近のひとりが、突風に飛ばされそうになりながら声を張り上げた。


「ヘリコプターは無理です! 飛べません」

「なら、歩くか」


 アイゼンがそう言った途端に風はやんだ。アイゼンに、道をあけるかのように。

 夜砂名神社まではヘリで三十分。


「おい、ヘリを出せ」

「ご正気ですか!?」


 アイゼンが、がっと男の顔をつかみあげると、男が宙に浮きあがった。顔の皮膚に爪を立てられて抉られ、男は悲鳴をあげた。


「俺が出せと言ったら、出すんだよ!」

「ひいい、お許しください、首領……!」

「しかし、この風では落ちる可能性も」


 もう一人の側近が冷静な声で言ったが、アイゼンは真っ赤な口を開けて笑った。


「そのときは、そのときだ」


 夜砂名神社の祭神は、“夜の神”。

 ヤマトが代々祀っている神である。ヤマトの首領は、夜砂名神社の神官でもあった。


 アイゼンが神社に着くと、猛烈な嵐はますます勢いを増していた。ヘリコプターが着陸できたのが不思議なくらいだ。


「アイゼン様……! よくおいで下さいました!」


 泣きそうな顔の神官が――留守を預かっている神官が、飛び出してきた。


「この程度のことで、ぎゃあぎゃあわめくな!」


 アイゼンに一喝され、神官は身を竦ませた。


「もともと夜の神は、荒ぶる神だ。妹愛しさに、文明を一度無に帰した神だぞ」


 夜の神は人間の情愛を解するゆえに、日陰者の守護神ともなる。だからこそ、俺たちみたいな悪党にも加護を与える――アイゼンは言った。


「怯えてばかりいる小者に、夜の神の加護はない」


 アイゼンの上着を、丁寧に脱がせてさしあげながら神官は、恐る恐る聞いた。


「何が起こっているのでしょう――去年も数度、こんな異変がありました。このプルートーには、砂嵐が起こることはあっても、竜巻や雷は起きません。人工の星です、なのに――」


 プルートーはその名の通り、原油や鉱石が出土される、鉱山としての役割を果たしている。地球人が人工的に酸素を生み出して、生活できるようにしているだけで、本来は空もなく、昼も夜もなく、地に立てば宇宙が見える、化学装置なしで息ができない、大気の薄い星なのだ。


 砂嵐が多少起こることはあっても、雷や竜巻が起こることは、今までなかった。それが、昨年から、そういった自然現象が起こるようになっている。


「人の手が加われば、気候変動も起きるだろう。一度、L33の科学者を呼んでチェックさせろ。――大気の状態が変わってきたんじゃなきゃ、地球行き宇宙船で何かが起こってる。俺は今回、夜の神に呼ばれてきたんだ」


 神殿に続く社の森は、すさまじい嵐が吹き荒れていた。樹木は雷が直撃して裂け、枝が飛び、美しく敷き詰められた砂利道は、あまりの暴風雨に石つぶてと化している。


「ひゃあっはっは! こりゃァいい。夜の神の神力が増している。カッケーな」


 おびえる側近と神官を尻目に、アイゼンは笑った。


「ダメです! 神殿には行けません!」


 神官はあわてて止めたが、暴風雨吹き荒れる社の参道に、アイゼンは出て行こうとする。


「てめえらがそのザマじゃァ、俺が死んだら、ヤマトから夜の神の加護がなくなるな」


 夜の神は、滅多なことで加護を与えないかわりに、己が降りるにふさわしき人間には絶大なる加護をあたえる。

 すくなくとも、この嵐ひとつに身がすくんで動けない人間には、加護は与えない。


「夜の神は、俺みてえにカッケーやつしか、守らねえ」


 アイゼンは、側近――タツキひとりを連れて、凶器が吹きすさぶ参道を悠然と進んでいった。


「この神殿を預かる神官は、交代だな。あんな肝の小せえやつじゃ、夜の神に見放される」

「承知しました」


 タツキは、無表情でうなずき、頬に当たるところだった石つぶてを利き腕で受け止めた。



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