112話 遠い記憶の宴 Ⅴ 2
「……ちょっと、いいかな」
グレンは、声をかけられて、振り向いた。
そこには、小柄なジャージ姿の女の子。ルナより小柄で、やせっぽちな。一瞬子どもかと思ったが、理知的な表情は、子どものそれではない。
「あ、あんた」
「そ。さっき受付で会ったね。サルディオーネだよ」
「そんな格好してたか?」
「だって、カレーで汚されちゃったからね。着てきた服は」
「おう、嬢ちゃんもここ来て飲めや」
ラガーの店長がビニールシートを叩くと、アンジェリカはかすかに笑って言った。
「あとでね。ちょっと、グレンさんを借りるよ」
理知的な表情が和らぐと、人懐こい顔になる。グレンは笑顔が可愛いな、と思ったが、口に出さず立ち上がった。
アンジェリカがまっすぐリズンのほうへ歩いていくので、グレンもだまってそのあとを追った。
丘を上がり、リズンの店舗の前の道路へつくと、もうすっかり薄暗くなっていた。
陽が沈んで寒くなったらやめる、と言っていたのに、まだだれも席を立つ様子は見せない。
それどころか、いつ持ち出してきたのか、反射ストーブが置かれて、ブランケットがいくつか用意されていた。バーベキューの炭火だけでも暖かかったが、ストーブがあるとまた違った。大きな懐中電灯がいくつかつるされて、人の輪を明るく照らす。
まだ薄暗がりだが、まもなく真っ暗になるだろう。
「グレンさん、あたしは、アンジェリカと言います。サルーディーバの妹だ」
唐突にアンジェリカが言ったので、グレンは目を見開いた。
「あなたがガルダ砂漠で負傷して、アズラエルに運ばれてきたとき、あたしも姉さんと一緒にいた。あたしだけじゃない。いま革命で戦っている、メルーヴァ・S・デヌーヴや、ツァオという男もいた」
「そ――、」
グレンは、思いもかけない邂逅に、頭を掻いた。彼女がL03の高名な占い師であることは、さっきの物々しい警護で分かっていたが、まさかサルーディーバの妹とは。
「そうだったのか……」
やがて、驚きが去ると、彼は穏やかに笑って頭を下げた。
「……あのときは、ありがとう。俺は、そのおかげで今ここにいる」
「そのわりには嬉しそうに見えないね」
アンジェリカは苦笑いした。
「助かって嬉しそうには見えない。現にあなたは、次の戦争に駆り出されたとき、ほんとうは死ぬつもりだったんだろう?」
「知っていたのか?」
「今も、あなたは死んでも死ななくてもどっちでもいいと、なかば命を投げている」
「やれやれ。L03の占い師には、みんなお見通しってわけか」
アンジェリカは、なにか言いたげにグレンを見つめたが、考えていることとはまったく別のことを、口にした。
「……あのときのことは、どうか、もう気にしないでください。あたしたちは、姉さんの予言に従って、できることをしただけです。もともと、ガルダ砂漠の戦争の惨事の原因は、L03の長老会が正確な予言をL18に伝えなかったからだ。あたしたちは力のない若い集まりだったけど、できることはしたかった。償いにもならなかったけれど……、」
グレンは答えなかった。怒っているのではない。
だまって、ふたりで、バーベキューパーティーが開かれている公園のほうを眺めた。ふたりともしばらく口を利かずに、そちらを眺めたままだった。
「――どっちにしろ、あの戦争のために、あなたたちもあたしたちも、大切なものをたくさん、なくした……」
「そうだな」
「……あなたが、姉さんを、サルーディーバを恨んでいなくて、よかった」
「どうして俺が、サルーディーバを恨む?」
グレンが、穏やかに言った。
「俺は命を助けてもらった。それに、あんたの姉さんのサルーディーバさんは、ガルダ砂漠の、あの戦争を止めようとして、長老会とやらに逆らったから、長い間、閉じ込められてたんだろ?」
「……そうです」
「ああ、これは俺がアズラエルから聞いたんじゃなくて、アズラエルから聞いた医者が俺に話してくれた。又聞きだ。間違っていたらすまん」
「いいえ。間違っていません」
それからまたしばらく、ふたりは沈黙した。
あたりはすっかり暗くなる。道路の電燈はリズン側にあって、二人が立っている場所は、灯りが届かない位置だ。もう、互いの表情は、目を凝らさなければ分からないほどになっていた。
「あなたが、大晦日の夜に姉さんに会いに来てくれたことも知っている。おいしいケーキを、ありがとう」
「……え? あれ、サルーディーバさんに届けてもらったのか?」
アンジェリカは、少し黙し、それから言った。
「あなたがケーキを預けた人が、届けてくれたんです」
「そうか……」グレンは、ふたたび頭を掻いた。「わざわざ届けてくれたのか」
「姉は、あなたに感謝していました」
「いや、感謝しているのは俺なんだけどな……、」
「あなたは――、」
アンジェリカが、ためらいがちに言った。
「あなたは、姉に――サルーディーバに会いたいですか?」
「え?」
グレンはアンジェリカを見たが、彼女はこちらを見ていなかった。おまけにこの暗がりと、身長差がありすぎるのとで、顔色を伺うこともできない。
「いや――だって、会えないんだろ? 俺があんたの担当役員に電話したときだって、タクシー運転手に聞いたときだって、断られたし……、」
「……そうですね。バカなことを言いました」
グレンはてっきり、アンジェリカが会わせてやろうと言ってくれるのかと思ったが、そうではないらしい。アンジェリカはあっさりそれを認めると、
「もどりましょう、グレンさん」
「あ? ……ああ」
「今日は姉の命で来たのです。あなたに――それだけ伝えようと。ケーキを、ありがとうと」
それは嘘だ。サルーディーバはそんなことひとことも言っていない。
「こんなことをいうのは大変失礼ですが、……どうか、もう姉に会おうとはなさらないでください」
アンジェリカが本当に申し訳なさそうに言うので、グレンは反省した。
「もしかして、俺が会いに行ったことで、なにか問題が」
「いいえ。そうではないです。でも、今L03はご存じのとおり革命で混乱しています。姉は、次期サルーディーバでありながら、長老会に逆らったがために、八年の蟄居を経験し、この宇宙船にもなかば追い出されるように乗りました。姉はいろいろな出来事のために、とても疲れています。なるべくなら、身辺をおだやかに保ちたいのです」
そういわれてグレンは悟った。なるべく静かに暮らしていたいところに、意外な訪問者があったら、それは驚くだろうし、ストレスにもなるだろう。
女であれば、見知らぬ男の訪問者などなおさら……。
「分かった。考えが浅くて、申し訳なかった」
「いいえ。これはあたしの考えです。姉が言ったことではありません。……ケーキを、本当に、ありがとう」
アンジェリカはそれだけ言い、あとはグレンの顔を見ずに駆け出して行った。
走ったせいでなく、「姉の命で来た」などとうそをついたことに心臓をバクバクさせながら、公園へもどった。
姉が愛したグレンという男が、どんな男か見てみたかっただけだ。
さんざん迷ったあげく、今日、バーベキューパーティーに行くことをアンジェリカに決心させたのは、グレンの存在だ。
見てみれば分かると思ったのか。
姉が、どうしてあそこまで好きになってしまったのか。
顔立ちは、整っている方だろう。
でも、あの姉が容姿だけでひとを好きになるはずなどない。
ただの軍人だ。アンジェリカが、今まで腐るほど見てきたほかの軍人となんら変わらない――。
それとも。
恋を知らない自分が、見極めようと思う方が間違っているのだろうか。
アントニオは、楽しそうに輪の中で飲んでいる。アンジェリカが見ているのに気付いて、手招きしたが、アンジェリカがウソをついたことを咎めるような様子はなかった。自分は怯えすぎかもしれないと思ったが、なにせ、アントニオにはぜんぶ見破られてしまう。
アントニオがビニールシートから立って、こっちへやってきた。
「アンジェ、帰るの?」
あっさりそう言われて、アンジェリカは拍子抜けした。
「う、うん。帰ろうと思って」
「……グレンはどうだった?」
アントニオがにっこりと笑う。……いったいこのひとは、どこまで分かっているのだろう。
「まあいいさ。それより、これおみやげね。サルちゃんに持って帰って」
アントニオが肉と野菜の串を何本かと、L03の濁り酒ひと瓶、袋に入れて用意してくれていた。メリッサもすでにコートを着て、帰り支度は万全だ。
「メリッサ、……あんた、飲んでてもいいんだよ?」
「いいえ。わたくしは担当役員です。しっかりご自宅までお見送りさせていただきます」
「じゃ、サルちゃんによろしくね」
アントニオや、ビニールシートにいた皆、――ミシェルやリサや、シナモンたちにも手を振られながら、アンジェリカは丘の上に上がった。
アントニオは、アンジェリカがここにきた目的を知っているから、もう止めなかったのか。アンジェリカは、「もう姉に会おうとするな」などと余計なことを言った。それを叱られるかと思っていたのだが、なにも言われなかったことに拍子抜けもしたし、ほっともした。
「また来てね!」
「今度一緒に飲もうね!」
リサたちの声を聞きながら、メリッサは、
「ほんとうにあの方々は、アンジェリカ様が何者か分かってらっしゃらない」とぶつぶつ言うので、アンジェリカは苦笑した。
新しいリムジンはリズン前で待っていたが、さっき会場に、ルナはいなかった。
「では、アンジェリカ様、まいりましょう」
「――うん」
ルナと話をしたかったが、……しかたがない、それは、またの機会にしよう。
グレンは、まだ丘の上の道路にいた。アンジェリカに気付くと、片手を上げた。アンジェリカも軽く礼をし、タクシーに乗り込んだ。
――まさか、サルーディーバが女だったとは。
グレンは、予想外の事実に、すこし驚いていた。
たしか、サルーディーバというのは、男しかなれないはずではなかったか?
ずっと、グレンはサルーディーバを男だと思っていた。ルナも、サルーディーバを女だとは言わなかった。だが、ルナは、サルーディーバが男しかなれないのだということを知らないだろうし、おそらく、グレンも知っているのだと思って話さなかったのか。
アズラエルも、次期サルーディーバが女だと知っているのか。
自分の命を救ってくれたサルーディーバのこと、L03のことなどを、グレンはこの宇宙船に乗ってからも、かなり調べていた。いつかL03に行って、サルーディーバに礼を言いたい、と思っていたのだから、L03の情報はできうるかぎりあったほうがいい。
現職のサルーディーバも、自分を助けてくれたサルーディーバの映像も、写真も見たことはある。ネットを探れば、見られる。だが、性別に関しては記述がなかった。もともと、性差を超越した存在だということから、書かれていなかったのか。
褐色の肌の、細身の男性だとずっと思い込んでいた。中性的な容姿の、なかなかの美男だと、グレンは思っていた。
アンジェリカとは似ても似つかない美形だが、理知的な双眸が、血のつながりを感じさせるかもしれない。
サルーディーバというのは、生涯独身を通し、真砂名の神に仕える男性神職だ。L03の頂点に立つ主でもある。予言されて生誕し、生まれた時からサルーディーバとして生きるのだと、そう書いてあった。
グレンは、まるで自分と一緒だな、と皮肉に思ったものだ。
自分も一生、ドーソンの名がついて回る。
ドーソンという、一族の檻から逃れられない……。
(――女、か)
アンジェリカが姉だというのだから、そうなのだろう。
自分が男だと思っていたあのサルーディーバは、女だったのか。
グレンは、ケーキを渡した、L03の女予言師を思い出した。あの女も写真で見たサルーディーバと同じ褐色の肌で、なかなかの美人だった。
――まさか、なあ。
グレンが、去っていくリムジンの後姿を見つめていると、背後から、聞きなれた可愛い声がした。
「グレン?」
ルナだった。いつのまにか足元にいた。小さすぎて目線に入らなかったといえば、たぶんこのうさこちゃんは怒るに違いない。
「だれか帰ったの?」
去っていくタクシーの背を、ルナも目で追いかけながら聞いた。
「ああ。アンジェリカさん」
「ええ!? 帰っちゃったの!?」
ルナはがっかりした。
来たときに軽く話したくらいで、まだぜんぜんゆっくり話していない。さっきミシェルやリサたちと話していたときに仲間に入ればよかったと、ルナは後悔した。
そのころ、ルナは、ルシヤとアズラエルとグレンとセルゲイとカレンの包囲網に囲まれて、身動きが取れなくなっていたのだ。
「なあ、ルナ」
「うん?」
「サルーディーバって、女なのか?」
「え?」
ルナは、そのつぶらな目を真ん丸にした。
「グレン――男の人だと思ってたの?」
確定した。サルーディーバは、女か。
「どんな女だ?」
「……」
ルナが、そこでやっと、言っていいものかどうか悩みだしたようだった。グレンは苦笑し、
「いや。いい。言いたくなければ。……さっきアンジェリカさんと話してな。……驚いたんだ。彼女が姉さんっていうから。まさか女だとは思わなくてな」
「アンジェとお話してたんだ」
アンジェが、サルーディーバさんはお姉さんだって言ったんだ……。ルナは、ちょっと安心した顔をすると、ぷくっと頬を膨らました。
「あたしもアンジェとお話しすることいっぱいあったんだ」
「おまえは、ほんとにいつまでたっても、ガキみてえだな」
グレンが苦笑するので、ルナはあわててほっぺたを元にもどした。
「……どうせあたしは、大人っぽくないもん」
「ン?」
拗ねたのか。
グレンはルナの頭を大きな手で撫でた。
ルナはしばらく頭をもじゃもじゃ、撫でられていたが、やがてみんなのいる方を眺め、
「バーベキューパーティーって、楽しいね」
といった。
「そうか? ……そうだな」
アンディたちとしたバーベキューも楽しかった。
ふたりで、バーベキュー会場を眺めた。しばらく、そうしていた。ルナが眺めたままなにも言わないので、グレンもだまってそうしていた。
「――で、おまえはリズンでなにしてたんだ」
「焼きそばつくるから野菜切ってたの」
「やきそば? なんだそれ」
グレンが聞いたこともない料理名に首をかしげていると、アズラエルがリズンから出てきた。手に大きなトレイを抱えて。刻んだ野菜が山盛りだ。
「おい、ヒマなら手伝え」
アズラエルがグレンに向かって言った。
「この段ボール、あっちに運んでくれ」
グレンは素直に、アズラエルの足元にある段ボールを持ち上げた。
「ルナちゃん。あと、材料これだけ?」
セルゲイまでリズンのドアから出てきた。大きなトレイの上には、フライ返しや調味料が乗っている。
「うん。それだけ」
「じゃあ行くぞ」
アズラエルがすたすたと歩き始めたが、ルナはまだ、丘の上から見える、公園内の光景をぼーっと見つめていた。
「おいルナ? どうした?」
グレンが怪訝そうにルナを振り返る。アズラエルも足を止めてルナを見た。
暗くなった公園には電燈がともり、バーベキューをやっている場所も、懐中電灯と公園の電燈で、みんなの楽しそうな光景がはっきり見えた。
ふいに、その光景が、なにかに重なって見えたのだ。
なぜだろう。
ルナは、じんわりと涙が滲んだ。
ずっと、ずっと昔。
はるかな昔。
ルナはこうして、夜に開かれる楽しそうな宴を、じっと眺めていたような気がするのだ。
そう、今の自分のように。
だけど、あのころ、自分はその宴の仲間には入れなかった。
みんなの前に、自分は姿を現してはいけなかった。
――楽しそうな、砂浜での宴会が毎夜神殿から見えます。月の神である妹神は、いつもそれをうらやましそうに眺めていました。「行きたいのかい?」兄神は言いました。「でも、それはいけないよ。私たちは神様なのだから」。不用意に、人びとの前に姿を現してはいけない。そう、優しく言いました。でも妹神は、寂しかったのです。一度でいいから、あの楽しそうなお祭りに参加して、自分も、あの楽しそうな歌をみんなと歌ってみたい。そう思っていました――。
兄神に止められていた。
行ってはいけない、と。
自分は、あの宴に参加することはできなかった。
だから――。
――あれは、いったい、どれほどの昔だっただろう。
あの、「はじまりの物語」は――。
「ルナちゃん?」
ルナは、はっと顔を上げた。
横にセルゲイがいて、優しくルナを見守っていた。
「どうしたの? ルナちゃん。行こう?」
「……行っても、いいの?」
なぜだか、ルナは聞いた。なんとなく聞いてみたかった。
不安げなルナにセルゲイは少し驚いた顔をしたが、「……いいよ」と穏やかに微笑んだ。
「一緒に、行こう」
セルゲイが、片手でトレイを持ち直し、ルナの小さな手を握る。
「なに言ってんだ、おまえ」
アズラエルが、ルナの頭をぽんと叩いた。
「ほら、行くぞ。……みんな待ってる」
グレンも、柔らかな笑顔でルナを促す。
「――うん!」
ルナは、セルゲイの大きな手を握り返し、ゆっくりと、丘を降りた。
みんなの大きな笑い声に歓声。ラガーの店長とデレクの勝負だ。デレクはあんなに細いのに、大きなラガーの店長をひょいひょいとひっくり返してしまう。
役員名物、恒例のショーだ。ショーといっても相撲みたいな取っ組み合いだが。
「なにやってんだ! オルティス! やっちまえ!」
ヴィアンカの応援がひときわ大きかったが、それでもやっぱりラガーの店長は、デレクに敵わなかった。
まだまだ、宴は終わらない。夜になったら終わるはずの宴は、明け方まで続いた。
人見知りだのなんだのいっていたバンビとルシヤも、いつのまにか楽しげにみんなと話していた。
明け方になって、やっとおしまいになったバーベキューは、いつのまにかブランケットにくるまれて寝てしまった女の子たちを起こさないように、アズラエルたちと男性役員たちとで片付けられた。
始めのときと違って人数が多かったので、片付けはあっという間に終わった。
最後までリズンに残ったアズラエルとグレン、セルゲイに、アントニオがコーヒーを出してくれた。淹れたてのコーヒーを飲みながら、四人は何を話すともなく、幸せそうな寝顔のルナを眺めていた。
ルナは、何度か四人の手で運ばれて動かされているが、一回たりとも起きなかった。完全に熟睡だ。
「……幸せそうな寝顔だねえ」
なんの夢を見てるのかな、とアントニオが言うと、
「バーベキューパーティーの夢だろ」とアズラエルが笑った。
ルナは夢を見ていた。
幸せな、夢。
かつて仲間に入れなかった遠い記憶の宴で、ルナは兄神と、――それから、船大工の兄と弟と、手をつないで踊っていた。
海辺で変わった楽器を打ち鳴らし、宴をしているみんなは、ミシェルやリサたち、クラウドや、ラガーの店長、ヴィアンカ、役員の人たち、エレナやジュリ、カレンやルーイ、ナタリアやアルフレッドたち、ハンシックのみんな……。
バーベキューパーティーに集った仲間たちだ。
みんないる。
アンジェリカもサルーディーバさんも。
今日は来てくれなかったキラとロイドもいた。
アントニオとカザマさんも、優しい笑顔でみんなを見ている。
――今まで見た中で、いちばん楽しくて、幸福な、夢だった。




