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マッド博士を愛した人工知能  作者: 戸田 佑也
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Chapter2-1 チヨ

 目が覚めると時計の針は午前10時を過ぎたところだった。

 日曜とはいえ、少し寝すぎてしまった。眠い目をこすりながら顔を洗ってからPCを開き、ヘッドギアを装着してSIKIにログインする。


 Naruruとの約束の通り、鹿鳴剣に関する情報を探ろう。

 とはいえ、広大なSIKIのセカイをすべて人力でくまなく探すというのは難しい、というか物理的に不可能だ。

 そこでまずは情報収集サポートAIアプリケーションを立ち上げた。僕の目に映るSIKIのセカイに白いワンピースに身を包んだ2頭身の少女型キャラクターが現れる。頭にはなぜか猫耳を付けている。ネコの擬人化キャラなんだろうか。


―お呼びでしょうかマスター!というか私を立ち上げるの久しぶりじゃありません?もっと頼ってくれていいんですよ!このチヨを!


 いきなりうるさい。だからこいつを立ち上げるのはちょっと苦手なんだよな。

 ただ、そんなことを言えば機嫌を損ねて仕事をしなくなる。誰だサポートAIにこんなめんどうなパーソナリティを設計したヤツは。

 

―いや、ごめんね。最近はあまり用がなくてね。


―用がなかったら私のこと、立ち上げてくれないんですね…チヨはただの道具なんだ…


 そういって2頭身の少女はうなだれた。

 めんどくさ。

 

―そういうことじゃないよ。ただ、チヨにお願いするのに相応しい仕事がなくてね。ほらキミほどのAIに雑用をさせるわけにもいかないし。

 ただ、今回はなかなか僕だけじゃちょっとどうにもならなくてね。ぜひチヨに助けてほしいんだ。


―!!

 ふふふ、仕方ないですね!ダメダメなマスターをチヨが助けてあげましょう!おまかせください!

 

 ほとんど心を込めずにタイプしたのだけれど、あっさり上機嫌になった。

 ちょろいAIだ。


―じゃあ、早速だけど本題に入ろう。

 今回お願いしたいのは"けものサムライ"という格闘シミュレーションゲームについてなんだ。


―マスターがチヨをほったらかしにして夢中になっている格闘ゲームですね!あんなのなにがおもしろいんですか?


 あれ?まだ機嫌なおってない?まあいいや。

 

―そう、それ。その中で"鹿鳴剣"って武器アイテムがある。公式じゃなくてサードパーティが開発・配布してるアイテムなんだけど。

 Naruruってプレイヤーの話はしたことあったよね?彼女がこの鹿鳴剣をチートアイテムじゃないか、って言っててね。その他にも怪しい点があるから、ちょっと調べたくて。


―Naruruさん、覚えてますよ!私のライバルですね!マスターを巡る恋の!


―いや、そのログはたぶん正しくない。再起動した方がいいかな?

 

―やめてください!

 わかりました。その鹿鳴剣について知りたいわけですね。具体的にどんな情報が必要ですか?

 

 お、ようやく仕事モードになったのかな?

 

―そうだね…オープンになっている範囲でいいからSIKIの対話ログを漁って、鹿鳴剣に関する噂を集めてみてくれるかな。ファクトチェックは後でいいから。それと鹿鳴剣の開発元の会社について、企業概要をまとめておいてほしい。


―AI使いが荒いですね!了解です!

 対話ログについては鍵のかかった対話ログについてはこじ開けて覗き見なくてもいいんですか?


―人聞きの悪いことを言うな。いや、とりあえずいいよ。まだそこまでしないといけない事態なのかわからないし。


―わかりました!そうですね、約7分39秒いただければご報告できると思います!少々おまちを!


―ありがとう。頼むよ。


 パーソナリティはアレだが、やはり「彼」がチューンナップしたAIだけあってファジイなオーダーへの対応力、情報処理速度はずば抜けている。

 さて、AIに頼りっぱなしというのもよくないし、人間にしかできないこともある。

 さしあたっては、これも正直あまり会いたくない人ではあるけれど、あの情報屋に話を聞きに行こうか。

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