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マッド博士を愛した人工知能  作者: 戸田 佑也
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Chapter1-3 鹿鳴剣

―で,結局本題はなんなの?


―ったく,相変わらずゲーム以外じゃ堪え性がない奴だな。話ってのはあれさ、昨日の豚野郎が使ってた武器のことさ.


―鹿鳴剣のこと?最近使ってる人多いよね.それがどうかした?


―そう,鹿鳴剣.サードパーティが開発して無償でリリースしてる武器アイテム.お前はそもそも素手で闘うっていうド変態スタイルだから知らないかもしれんが,あれ性能設計が少しおかしくてな.

 強すぎるんだよ.公式のレギュレーションに違反してるじゃないかとも言われてる.


―え?そうなの?もう配布されてるのにそんなことある?

 まあ,言われてみれば,縛りなしで3回斬られたら死んじゃう武器アイテムとかこれまでなかったかも.

 でも,斬られないようにすればいいだけの話じゃない?


―"けもライ"は斬ったり斬られたりするゲームなんだよふつーは.お前基準で考えんな.で,あんまり強力なもんだからまだ配布が始まってから2週間しか経ってないのにもうユーザーの73%が鹿鳴剣を使ってるらしい.


―いつも思うんだけど,君,そういう情報どこで仕入れてくるの?


―ソレハヒミツナノデス.ともかく爆発的な勢いでユーザーに普及してるわけさ.私もこないだ試しに使ってみた.


―え?モーニングスターへのこだわりは?


―流行りモノは一度は使ってみる派なんだよ私は.結局モーニングスターに戻るんだけど.で、やっぱりなんかおかしくてな.


―なにが?


―無償配布なのに広告が出ない.


―そうか、そりゃ普及するわけだわ.僕読みたい本があるんだけどそろそろオチていい?


―ちょ,ちょっと待てよ.マジメな話だっての.いやお前無償配布なのに広告でないって,じゃあこのアイテムなんのために配布してんのって話だろ?


―話題づくりだろ.別に鹿鳴剣だけで食ってるってわけじゃないんだから.


―いや、確認したけど、この開発元、この鹿鳴剣しか"けもライ"のアイテムつくってないんだよ.ていうかそもそもゲーム会社じゃなくて製薬会社だった.


―は?製薬会社がゲームのアイテム開発?なんで?


―いや,それはわからんけど.でもおかしいだろ?というわけでちょっと私これ調べてみることにするわ.だからお前も手伝え.


―なぜそうなる.


―師匠の言うことがきけないと?


―もう僕の方が強い.


―手伝ってくれたら私のセクシーショットをあげよう.ミニスカサンタとかお前好きだろ?


―いらない.まったくもって全然いらない


 嘘だ。僕も健全な男子高校生だ。そしてNaruruはけっこう可愛い。会った時に思ったけどなかなか魅力的なバディだった,たぶん.

 少し悩んでから,「わかった.手伝う.その代わりに高校時代の制服を着てくれ」とタイプしようとしたとき,返信があった。


―マジメな話、鹿鳴剣はチートアイテムじゃないかと思ってる.

 私は私の愛するゲームでルールを守らない奴が大嫌いだ.情報を集めて公式に報告して、対応を迫りたい.協力してくれないだろうか,友よ.

 

 ……

 …ずるい奴だ。そんなふうに言われてしまったら断れるわけがないじゃないか。

  


―オーケイ,わかったよ.具体的に何をすればいい?


―いや,実はまだ考えてないんだけど.


―おい.


―兄弟の力が借りられるんなら鬼に金棒さ.私ひとりじゃ限界があるからな.

 とりあえずお前の方でもSIKIを歩いてまわって情報を集めてみてくれ.お前がリアルでもネットでもコミュ障な廃ゲーマーだということは知っているが,社会勉強だと思ってがんばれ.ただ,あんまり目立ってくれるなよ.


―誰が廃ゲーマーだ.


 その後、彼女が現状つかんでいる情報をいくつか共有して、チャットを閉じた。

 

 僕にとっても"けもライ"は2年以上遊んでいる愛着のあるゲームだ。

 正直なところ、Naruruの考え過ぎ、というオチじゃないかとは思うが、もし本当に大切な僕らの遊び場を荒らそうとしているなら、懲らしめてやる必要は、確かにある。

 

 いずれにせよ今夜はもう寝て、明日からSIKIのまちを歩いて情報を探ってみよう。

 結局1文字も読み進められなかった読書アプリを閉じて、僕はすぐそばのベッドに寝転がった。

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