幼女は自由奔放です
拝啓、皆様お元気ですか。私です。
なんか段々と話のスケールが大きくなってる昨今ですが、特にプロットとかも作ってないし設定も全く考えてないので今後の展開は神のみぞ知るですね。
このままだらだらとメタ系のネタをぶち込み続けて著作権的にアウトなのを作るのも粋ではないでしょうか。問題になったらエロ成分を混ぜてノ〇ノベに移住して何とかしましょう。
日常系からバトル物に方向転換するためのこういう伏線は大事ですよ。じゃないとリ〇ーンみたいに7巻辺りでいきなり六道な骸を投入して、唐突にバトル展開を作ることになります。
そしてバトル物になったほうが面白いことが判明するわけですね。じゃあ今までの話は無かったことにしてもよくねってなると、とても悲しい気持ちになります。
さて、ここで一つ召喚獣についてご説明しますね。バカとテストとなんとやらです。
一般的に召喚獣といえば、学園ファンタジー物の場合だと一人一匹配布されたりしますよね。主人公だけなんか変なの召喚されるっていう展開も王道です。
他にも冒険系だと召喚術士とやらがパシリの如く召喚しまくりますし、そういう系の敵が主人公の見せ場シーンとかで当て馬にされると、頭数だけ出してそのまま使い捨てにされたりします。悲しいですね。
逆に主人公が召喚されるってパターンもありますよね。まあその場合はただの異世界転移物ですから関係ないですが。
ずっと疑問だったんですが、なんでああいうのって召喚される側の都合を無視するのでしょうか。だって召喚獣にとってはいつ呼ばれるか分からないんですよ?
食事中に呼ばれたり、深夜の3時くらいに呼ばれたり、う〇こしてたりオ〇ニーしてたりしててもお構いなしなんです。
しかも呼ばれたら大抵の場合は戦闘やらなんやらの重労働が待ってますからね。そんな現代社会の社畜サラリーマンみたいな労働条件だと、戦いの前にストレスで病死しちゃいますよ。
この世界線ではそんな便利なお助けキャラ感覚で召喚するものじゃありませんよ。なんせ召喚するのって結構めんどくさいですから。
まず何で召喚獣制度っていうものがあるのか説明しますね。
基本的に魔界に住んでる生き物って、他の世界の人間より遥かに魔力が高くて強いんです。そりゃつい最近までずーっと勇者その他取り巻きとドンパチやってたんですから、平穏ぬくぬくな世界に比べて生物的に進化するのは当然です。
まあ結局魔界に住んでた人間は滅んで魔物だけの世界になりましたけど。俗に言うバッドエンドです。世界に平和は訪れぬぁぁぁい後の世界とも言います。まあ破壊神様はいませんけど。
そしてしばらく平和を謳歌した後、すっかり垢の抜けた魔王様は思いました。人間が滅んで魔界が平和になったんだから、次は他の世界も平和になったらいいなぁと。
魔王様は本当、神的に良い人ですから。ピネに何度キルされても怒ったりしませんし、自分のことをチ〇カスだと悟ったりもしません。
それを聞いたお偉いさん達はじゃあ具体的にどうすんのよって話になりますよね。そこで魔王様は言いました。
めっちゃ強い魔物を送って核兵器的な抑止力にすればよくね、と。
というわけでこの制度が出来ました。実質派遣社員みたいなものですね。ちなみに給料は出ません。し・か・も・ノーギャラ、です。
そしてこれが割と成功したんです。魔界に一番近い人間の世界、いわゆる現世はそのおかげである程度は平和になりました。
大国全てが核兵器級の魔物を雇った状態ですからね。下手に戦争をしようものなら世界が灰になっちゃいます。巨神兵もびっくりです。
しかしここで問題が生じました。大国同士の世界大戦は起こらなくなったけど、小国同士の小競り合いが止まらないぞと。
それを聞いた魔王様は、じゃあ小国にも魔物を送りましょうってことにしました。んでそういう国のために、世界は無理だけど街くらいなら灰に出来る程度の魔物を派遣したんです。
そしたら今度は貴族同士や地主同士のいざこざが止まらないぞときました。平和への道のりは遠いですね。
今ちょうどこの問題を解決するべく、世界も街も無理だけどジャイアントセコイアくらいなら頑張って灰に出来る程度の魔物を送っているわけです。そう、それが私なのです。
召喚獣とは世界平和のための戦略兵器なのです。一般人が気軽に使い捨てていい存在ではないのですよ。
召喚自体も一苦労ですけどね。まず世界と世界を移動するわけですから、それはもう大掛かりな仕掛けと莫大な魔力が必要になります。
地球から月に行くくらい大変なんです。アポロ11号は偉大ってポルノグラフィティも歌ってますし、移動する技術を確立出来ただけで奇跡なんです。
まあ気軽に冥界とか天界とかに行けるんだったらゴッドオブウォーの世界になっちゃいますので。これはこういうものなんです。
で、そのためには出発用の射出魔法と到着用の捕球魔法が必要になります。
射出魔法は狙った所にピンポイントで投げれるほど精度良くないですので、捕球魔法がないと高確率でかべのなかにいる状態になっちゃいます。良くて一般小学生の遠投レベルですからね。
だから多少の暴投でも問題なく処理してくれるプロが必要なわけです。まあ球が途中で止まったり真っ二つになったりしたら捕球しようがないですけど。
さて、これを踏まえて今回のケースを考察してみましょう。
私はプロローグで射出担当者の「あっやべっ」という声を聞きました。あれってもしかしてキャッチ出来ないレベルの大暴投をやらかしたってことでしょうか。
んで明後日の方向に投げ飛ばされた私は、たまたま同じようなことをしてた全然関係ない世界の捕球魔法に引っかかってしまったってことでしょうね。
だって明らかに私が今居る世界って事前情報と違うんですもの。文字も読めませんし、100年に1度の神獣って聞いたこともありません。
勇者がいるなんて知るわけないですし、いたらいたで魔界的にはぶち殺さないといけない存在ですので、召喚獣制度の存続自体が微妙なことになります。
この地図もどっかの地域を拡大して書いてるから見覚えが無いとばかり思っていましたが、どうもこれが世界の全体図みたいですね。てことは、なんとか帝国ってめっちゃデカいですね。
てことはですよ、これはつまり、とどのつまりはです。
なんだ、ただの異世界転移物ですか。
「あ、お姉ちゃん帰ってきた」
そう言って幼女は、涙を袖で拭いながら部屋を後にしました。
私はその背中を見送りつつ、改めて地図を眺めながら考えに耽ります。
あの幼女にはチート成分がありますからね。最終的にラスボスっぽい存在になりそうなので要チェックです。
仮にそうなっても私は絶対にFIGHTを押したりしませんよ。私がFIGHTを押すのはASGORE戦だけで十分です。
あ、日も落ちかけて薄暗くなってきたので照明魔法でも使いましょうか。照明魔法なら誰にでも出来ますから、これを幼女に見られても絡まれる心配がないので安心です。
大きさはテニスボールくらいに設定して、明度は適度に調整して、持続時間は3時間くらいと。
・・・・・・出来ました。部屋の天井にふよふよ浮いてるシャボン玉みたいなのが照明魔法です。
夜型の人間に必須の初級魔法ですね。気合い入れて作ってないのでショボい光ですが、本気を出せばカーズの輝彩滑刀くらいの光量を出しつつ一晩中維持することも出来ますよ。
明るくなった所で作業再開です。まず現在位置からなんとか帝国までの地形を確認します。
問題が大きくなっては困りますからね。いざという時は自力で帝国まで行って保護してもらいましょう。
まず直線で結んだ最短距離はダメですね。途中には長くて広大な山脈にドラゴンっぽい絵が沢山描かれているので大体察します。とても快適な旅など出来そうにありません。
迂回するにしても北側は無理ですね。解説らしき文字も地図記号もほとんど無いし、この辺り一帯が森みたいです。街があるどころか人が住んでるかどうかすら怪しいです。
一応ちょこちょことデフォルメされた恐竜みたいなのが描かれているので、未探索ってわけではなさそうですが。
この辺りはきっとイャン〇ックやリオ〇ウスが闊歩する世界観になっているんでしょうね。帝国に着くころにはハンターランクがカンストしてそうです。
とすると消去法で南に迂回するしかないですね。こっち側は・・・。
「わすれものしてた」
やけに急いだ様子で幼女が帰ってきましたね。何を忘れたというのでしょうか。
今私をいじくるのはやめてくださいね。大事なところを確認してるので。
もし私がここにいるってバレたら大変ですからね。これは君のためでもあるんですよ。
「はい、べんきょうおわり」
と言うと、幼女は私を鷲掴みにして天井に浮いていた照明を無意識魔法で破壊しました。
なぜこの子は人の話を聞かないのでしょうか。翻訳魔法はちゃんと機能してるんでしょうかね。
忘れ物って私のことでしたか。別にこうして抱っこしてもらわなくても自分で動けますので。
「マクラにお姉ちゃんを紹介してさしあげる」
ああ、お姉ちゃんとやらに私のことを自慢しに行くつもりなのでしょうね。でも褒めてくれるどころかキツイお叱りを受けることになると思いますよ。
どういう理由であれ、あまりに危険で取り返しのつかないことをしたんですから。可哀想ですけどボッシュートを喰らいそうですね。
そのまま帝国に着払いで送付されそうです。それが一番常識的で無難な対応でしょうね。
と予想している内にリビングらしき部屋に着きました。
ソファーの上で死体のようにぐったりしている方がお姉ちゃんですね。めちゃくちゃお疲れじゃないですか。
説教するほどの体力は残ってますかね。しんどいから無理なんてことになったらこの子の将来が危ういですよ。
「お姉ちゃん見て、マクラ」
いや待ちなさい幼女よ、それだとただお姉ちゃんに枕を渡しただけになりますよ。
お姉ちゃんもありがとう的な表情で受け取ろうとしてますし、姉妹揃って私にネックロックを掛けるつもりなのでしょうか。
よーし分かりました、こうなればもう出し惜しみは無しです。
お姉ちゃんにちゃんと叱ってもらうために、私のとっておきの魔法をお見せしましょう。
ラスリアノウンヴィ、ガエンナキリヴィ、サーイェラサキリヴィ・・・変身!
その瞬間、私の体は目を覆わんばかりに白く輝き始めました。
幼女とお姉ちゃんは驚いて私から手を放しましたが、同時に浮遊魔法も発動しているため落下しません。
私の体がみるみる膨んで行き、幼女に膨らまされた時と同じく、上限いっぱいの破裂寸前まで大きくなって行きます。
その様子をポカーンと口を開けて見ている二人。そうしている間にも私の体がどんどん変化していきます。
限界まで膨らんだ私は、そこから徐々にヒトデのように星形に変形して行きました。
同時に真っ白だった体毛にも着色が施されていきます。黒を基本として一部が肌色になっていき、それは段々と完成品に近い配色へとなっていきました。
星形の一辺一辺が腕や足の形に変形していきます。そして残った一辺が頭の形に。そうです、人間の形に近づいているんです。
白くて丸くてフサフサなだけが取り柄ではないのですよ。
私が召喚獣として相応しいと認められたのは魔法の強力さではありません。針の糸を通すような繊細さです。
いつ私が人間に変身出来ないと言いましたか?三角椅子には変身出来ることは言いましたが、その他の物に変身は出来ないとは言ってませんよ。
確かに人間の顔なんて私には区別出来ません。しかし、俗にいうイケメンと呼ばれる顔がどんな感じかは知ってますよ。
デッサンは得意ですからね。再現も完璧に出来るのです。さあ形も色も整いました、完成です。
私の体から輝きが消えた後、浮遊魔法を解除してふわりと地面に足を付けました。
コツリと革靴が音を立てます。手を閉じたり開いたりして感触を確かめた後、銀色に染まった髪を掻き上げながらゆっくりと目を開けます。
目の前には幼女とお姉ちゃんのマヌケ面がありました。しかし笑う気にはなれません。その反応は至極当然でしたので。
髪型を軽く整え、私の身を包んでいる執事服の襟を正します。やはりまだ表面積が足りませんね。幼女とほぼ同じ目線ですので、今の私は子ども程度の身長しかないのでしょう。
まあ気になる所はありますが、上出来ですね。変身は成功しました。
私は改めて二人に向き直り、執事っぽく丁寧に一礼した。
「初めまして、お姉ちゃん。私はマクラと申します。どうかお見知り置きを」
絶句する二人。そして営業スマイルを維持しつつドヤ顔をする私。
静寂がその場を支配した。