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Delete  作者: Ruria
第二章
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寝室

 私は麗と共に、次の空間の鍵を見つける為に探索を続けていた。途中、変わった部屋を見つけたので、そこに入ってみることに。


「ここって、誰かの部屋かな」

「そうだね」


 鍵は開いていたので、すんなりと入れた。


 茶色い絨毯に小さな花柄の壁紙。隅には、白いダブルベッドが密かに置かれている。その近くには、オシャレな照明スタンドと引き出し付きの小さな机。明かりは薄暗く、光は仄かに温かみがある。


 寝室ながら、なんとお洒落な部屋だろう。羨ましい。


「ここなら眩しくないから、大丈夫そう。ん? これ……」


 彼はそう呟くと、早速、ベットとは反対側のドレッサーの上に置かれた紙を手にする。


「麗。どうしたの?」

「これ、見つけたよ」


 そう言って、私にメモのような紙を渡す。


 メモには、不可思議な暗号が書かれている。


―――――――――――――――――――――――


・剣を抜け


S B W A O

C R K D S

B W O R E


Q この?に入るアルファベットは?

   

ヒント︰車の速さを競うアニメらしいが……


A 頭文字「?」


――――――――――――――――――――――


「これ」

「何かの暗号かな?」


 麗はそのメモをよく見る。


「んー。英語については、さっぱり分かんないなぁ」


 そう呟いてメモを彼に返したが、まだ暗号を見つめていた。


「もしかして、何か分かった?」


 そっと聞いてみる。


「うん」

「そう。って、えっ!」


 すると、彼はすぐに首を縦に振ったので、驚いて目をぱちくりする。


「望、ペン持ってる?」

「あっ、これなら」


 笑顔で私からボールペンを貸すと、スラスラと✕を書いていった。


「どういう意味?」


 あまりにも早業で暗号を解いていたので、訊ねてみると、計算が苦手な私にも解りやすく、丁寧に教えてくれた。要するに、とあるワードを抜けば良かったらしい。


 そして、最後の問題は、支配人の悪戯か?


「なるほど」


 この時、私じゃ解けない時は、麗に任せようと思った。うん。今度からそうしよう。


「どうやら、ベットの裏に何かあるみたい」

「ベットの裏?」


 ふと、ベットの裏を覗き、何かを見つけたので、そこに手を突っ込んで取り出した。


「これ」

「望。それは……」


 彼は青ざめて指をさす。すると、私が手にしていたものは誰かの左手で、薬指には指輪を嵌めていた。どうやら取れないように、テープで頑丈に貼り付けてあったようだ。きつく固定された跡が残っている。

 よく見ると、腐敗は不思議としていないようで、細く、肌白く、切り口も綺麗に切れていた。しかし、血は一滴も流れていない。


 恐らくは、あの剣でスパッとやったのか。


 そう思った私は、誰かの左手を手に入れた。あとは、左手に握られていたぐしゃぐしゃになった一枚のメモ。そっと取り出し、「罪と対価する物を置け」と書かれたメモを見る。


 彼はこの件から、変な奴がいるというのを察したかのようで、辺りを見渡すと……


「これ」

「今度は何?」


 そのものを見て、思わず警戒していた。


「天秤」


 私は呟いて指差すと、顔色を変えずに切断された左手を置く。片方が空いている為、まだ傾いたままだ。


「恐らく、このメモが関係してるんだろうね」

「それは、間違いないと思う」


 彼の顔はとても青ざめていたが、なんとか答えていた。


――タッタッタッタッ


 その時廊下から再びあの音が聞こえた。


「あいつだ」

「嘘! こんな時に!」

「ベットの下に隠れるよ!」


 彼の耳元で囁くと、急いでダブルベットの下に隠れた。幸い、シーツが床まで垂れていたので、息を潜めたら大丈夫だ。そして、ベットの下で静かにしての合図を送り、息を潜める。


――ギー……ギギギギギギ


 緊迫した空気の中、私と麗は息を殺して脅威が去るのを待つ。狂者はと言うと、ナイフを片手に、標的ターゲットを探していた。


「ククッ……ハハハハハハハハ!」


 突然、笑いながらダブルベッドの上でぴょんぴょんと飛び跳ね、ナイフの鈍い音を立てながらシーツや枕カバーを滅茶苦茶にし始めた。


 ベットの下に隠れていた私達は、僅かな隙間から枕カバーの端切れや羽毛が床一面に散らかる様を見て、どのぐらい悍ましいか、軽く想像ができた。

 飛び跳ねてる時は、ベットがミシミシミシと容赦なく軋み、驚いて声が出そうになる。しかし、その後は何事もないかの様に、部屋から立ち去っていった。


 私達は狂者がいなくなったのを確認すると、恐る恐るベットの下から這い出る。


「ふぅ」


 ため息をつき、滅茶苦茶になったシーツを眺める。恐らく狂者は子供。

 ふと、彼が刺し傷だらけの枕の中をポンポンと叩いていると、中から小さな物がポロッと落ちた。


「これ」

「んー、鍵だね。それに、タグもついてる」


【Storage Room】と、タグがつけられた鍵だ。恐らく、貯蔵室の鍵だろう。ということで、貯蔵室の鍵を手に入れた。


「あと、覗いてないとこと言ったら……」


 私は指で数えながらこことここと、と言っていたが、あまりにも広い為、「多すぎて分かんない!」と言って頭を抱えてしまった。まぁ、顔は相変わらず石のように何一つ変わってないけど。


「んー。広いからまだまだありそうだね。ひとまず、片っ端から漁るしかないかな」

「でも、効率よく探索したいから、見取図みたいなものさえあればいいけど」


 そう私は呟いて、散らかったダブルベッドを隈なく探す。すると、麗が考える素振りを見せてボソリと呟いた。


「んー、ここに無かったら、リビングかな」

「あー、それは……」


 確かにもう一つ、リビングは探索の候補に挙げていた。もしかしたら裁縫道具もあるかもしれない。行ってみる価値はありそうだ。


「あと、僕と逢った浴室も、何か見落としてるとこがありそう」

「確かに」


 あの時は黒い影(麗)を狂者だと思って、隠れ場所を探すのに精一杯だった。あと、彼がいることで高身長が生かせる所もあるかもしれない。


「じゃ、次はリビングに行ってみようか」

「そうだね。まぁ、僕は望が怖がらないよう、ぴったりついてくね!」

「はいはい。わかったよ」


 苦笑いしながら相槌を打っていた。

 しかし、もう、ここまでいったら、周りから仲がいいだとか、付き合ってるの? とか言われても、おかしくないよね……。


 そう思っていた私は、彼と共に寝室を後にした。

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