2/180
〜無〜
「ぅう……」
怠そうに体を起こし、辺りをよく見る。
見覚えの無い壁と床。全てがタイル状で、開けたばかりの目には眩しい程の真っ白さだ。
どうやら、放り込まれた状態で倒れていたようで、暫くの間、痛みが体中に響く。
「ここは……どこ?」
ボソリと呟くと、手をグーパーしたり、体を軽く動かしたりして、痛みが取れたのを確認する。
ただ、その衝撃で一部の記憶を失ってしまったみたい。
名前や性別、年齢等のあらゆる記憶が無い。微かに残るのは、ゲームで培ってきた知識だけ。
何も無いけど、こういう類の空間には、どっかに出口と称した扉や鏡などの入り口があるはず。
そう思い、ゆっくりと立ち上がり、壁を隅から隅まで、手で押しながら出口を探す。
すると、見事に背景に溶け込むように、ドアらしきものを見つけた。銀色のドアノブもあり、幸い鍵穴も無い為、回したら簡単に開けられそうだ。
「これで、出れるかな?」
――ガチャ……ギギギギギッ
口籠りながら、ドアノブに手を回して殺風景な部屋を後にした。