保護
「こんな時にメール? 誰からだ?」
「誰なんでしょうねぇ。開いてみます?」
「あぁ」
なので、ガブリが俺の背後から見る形でメールを開けることにした。
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もうすぐで、ラファとウリを殺した裏切り者が帰ってくる。
その前に、保護対象者を連れて、ここから出るんだ!
あの裏切り者の真の目的は、『更生と見せかけて、罪人を拷問の駒にする』ためだ。
いいか。決して、あの生命体を信用するな!
信用したら……。
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「なんだこれ!?」
「しかも、差出人が……、ままま! マスターからのメールみたいっす!」
「まじか!」
しかも、海外へと飛んだマスターからのメールときた。一体全体、このイルミナで何が起きているんだ!?
俺は机の引き出しから、ハンドガンと、二個の黒いポーチを取り出し、黒いローブの下へしまうと、ふぅ。と一呼吸置く。
まぁ。このポーチの中身は、秘密だがな。
だけど、この先やっていく上で、必要不可欠となる物が入っている。
「何か、嫌な予感しかしないから、気をつけろよ。ガブリ」
「は、はい! ボクも何か護身で持ってた方が良いっすか!?」
「あぁ。マスターから貰ったアレをローブの下にでもしまっとけ」
「り、了解っす!」
俺は指示を出すと、彼は咄嗟にハンドガンをローブにしまってくれた。
「それと、これをガブリに託す」
なので、俺は彼に、あるポーチを渡した。
一つ目は黒くて布製のシンプルなポーチ。
二つ目は色は同じで、少し頑丈で破けにくい素材でできたポーチだ。
「これは……?」
「二つ目を、『Green』に渡してくれ」
「でも、保護した際に渡せば良いのでは……」
「じゃあ、渡そうとした時に、裏切り者に遭遇したらどうするんだ? マスターからの伝言も、俺達の存在さえも、全部消されるんだぞ?」
「それは、ガチで困る展開ですって!」
「まぁ。一個目は今じゃなくて、抜け出した時にでも開ければいいさ。それは、ガブリ用で用意しといたからな」
「まじっすか!? えっと、その。何でボクになんか……」
しかし、彼は困惑な表情を浮かべながら、恐る恐る、ローブの中にある胸ポケットにしまい込んでいた。
「あの裏切り者の狙いは多分、俺かもしれないんだ」
「えっ!?」
「命を狙うとしたら、一番被験者の情報を手に入れている俺に、刃を向けてくるだろうと、思ったからな」
「なんでそう言い切れるんですか? もしかしたら、ボクかもしれないのに……」
「どうだろうな。あの裏切り者は、ガブリに関してはある程度信頼はしていただろうし、恐らく、簡単には殺しはしないだろ」
「それもある意味怖いっちゃ怖いっすけど……」
「まぁな。『purple』の目を、躊躇無く刺したり、ウリが規約違反覚悟で身バレしただけで、ラファと共に殺った程だからな。気をつけて行けよ」
「は。はい!」
なので、俺はある程度の事を、彼に託すことにした。
彼ならきっと、何が正義か、何が悪なのか。いざ、ていう時に瞬時に判断できて、躊躇無く殺れるだろう。
少なくとも、俺よりは……。
「さて、改めて。『保護』しに行くぞ」
「分かりました。ボクは『Black』と『Purple』を保護しに行きますね」
「あぁ。俺は『White』と『Green』を保護しに行く」
「了解っす! もし、生きて帰れたとしたら、何がしたいっすか?」
「さぁなぁ。ガブリは何がしたいんだ?」
「うーん。ボクは穏やかな生活が遅れれば、別にいいや。て思ってます。この組織にいたら、穏やかな生活なんて、一生送れないと思いますから……」
「そっか。いい夢だな!」
「えへへ。ありがとうございますっス!」
「ったく……」
そして、俺達はマスターからの極秘任務を全うするため、自動ドアを開けて、ガブリと別れた。
「さて……」
俺は慎重に周囲を見渡しながら、『White』がいる被験室へ向かう。
道中、裏切り者に逢うだろうから、息を殺しながらも、駆け足でエレベーターへ入った。
「!!」
すると、エレベーターですれ違う形で裏切り者と遭遇してしまったが、彼女はピンク色のツインテールを靡かせながら、ニコニコと鼻歌を歌い、俺の傍を通り過ぎて行く。全く気づいて無い様だから良かったが……。
まずい!
早く乗らねぇと!
なので、俺は彼女達が眠る被験室がある地下に向かうため、『閉』ボタンを急いで押すと、速攻扉が閉まってくれた。
「よし! 次は……」
ここで『R』ボタンを押すと、屋上へ一直線になるので、俺は『閉』と『R』の間にある空白部分を、手でかざしてみる。
すると、ボタンが液晶上に浮き上がってきたので、『3』のボタンを押して被験室へと向かう。ちなみに『4』は俺らの部屋がある、居住区となる。『2』は先程いたモニタールームがある階で、『1』は閉鎖病棟から出入口に繋がる唯一の道だ。
それに、このボタンを押すには、俺らイルミナメンバーの手相認証が必要となってくる。
なので、あの時『Red』は被験者だから、パネルを起動出来ず、そのまんま『R』ボタンを押したのだろうな。
そう思いながらも、俺は被験室の扉の前へと着くと、彼女達にバレない様に、ローブから白マスクを取り出し、被ると扉の近くの認証コードに手をかざした。
――ヴィィーン。ガガガ
よし。これで『White』に上手く、事情を話して次に繋げよう。
俺は、白色の病衣に身を包んだ彼女を見るや、こう接することにした。
「オ目覚メニナリマシタカ?」




