保健室2
*
「着いた!」
私は保健室の前に着くと、何やら中で話し声が聞こえたので、少し扉に耳を傾ける。
――それ! 僕が持ってた物と同じ!
――てことは、貴方も破片者ってことね。
なるほど。LIKEの差出人は破片者ってことか。今度は何の感情だろう。
期待すると同時に、さっきから止まらない寒気に違和感を覚え、両手で腕を擦る。そして、少し温まってから右手でガラガラと扉を開けると、麗が笑顔で出迎えてくれた。
「望! おかえり!」
「あー。麗。少し遅くなっちゃった。それと……」
私はそう呟きながら扉を閉めると、茶髪の少女に視線を向け、笑顔でこう話す。
「貴女も、無事で良かった」
「いや、ウチは……」
彼女は戸惑いながら答える。
「えっと、ところで、名前は?」
「……愛。とりま、よろしく」
「うん。私は望。こちらこそ、よろしくね」
軽く自己紹介をした後、愛はジーっと私を見つめてこう訊ねてきた。
「望? もしかして、椎名望さん?」
「そう、だけど……」
突然名を言われ、私は戸惑う。しかし、愛さんが破片者だと言う事は、先程の盗み聞きで情報を得たので、話は早く理解した。
「これ、渡さなきゃ。って思って」
「あー。それね」
そう差し出してきたのは、あのゲーム機のソフト。しかし、麗が前に渡してきた色とは、全く違う色だった。
青色で光るソフトか……。何故か珍しく感じた。でも、どっかで見たことがある。どこで見たんだろう。
しかし、肝心のタイトルは麗の時と同じく、忘れてしまった。
「これ、何の感情か分かる?」
ふと、気になりだしたので訊ねると、愛はボソリと言う。
「……中身は分からないけど、挿したあとに望さんが立ち直れるかどうか。と支配人は言っていた」
「そっか」
あー。聞かなければよかった。でも、挿し込まなければ先に進めない。なので、私は一つ深呼吸をして息を整え、意を決してパーカーのポケットから、例のゲーム機を取り出し、青色のソフトを挿しこんだ。
「うっ!」
その途端、突如、泣きそうになる程、頭に強烈な痛みが走り、右手で頭を抱えながらその場に蹲る。
「いっ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
「望!」
「望さん!」
呪文のように『痛い』を口にする私を見て、驚いて近くまで駆け寄り、必死になって声をかけていた。
「望! 大丈夫!?」
「大丈夫ですか!」
「うぅ……頭が……!」
訴えようとした途端、突然視界が歪み、意識が遠くなって力が抜けていく。
*
そして、青年の胸元にバタリと倒れ込んだ。少女の左手に握られたゲーム機の液晶画面には、緊迫した空気をぶち壊すかの様に、文字が映し出されていた。
――ノゾミサマハ
カナシミノカンジョウヲ
エラレマシタ――




