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Delete  作者: Ruria
椎名 望【回想】
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名前


 私は生まれた時、両親共に大喜びをしたらしい。

 そして、名前をつける際、『みんなから希望を与えられる様な人間になって欲しい』と願って、『望』の字が使われたのだが……。


「のぞみ。もいいけど、他の子と違う呼び方にしたいよね」


 と言う、マタニティハイで有頂天になっていた両親のクソな理由で、(のぞみ)という字なのに、ほおぷ。と名付けられてしまった。


 今思うに、それが全ての元凶だ。

 ネットではこのことを、呼び方だけ、『キラキラネーム』だとか『DQNネーム』だとか言っているが、正にそれだと思う。


 私の歩んだこの16年は、名前に振り回された人生だった。

 どこに行くにも、平仮名で『ほおぷ』と名前が書かれた文字が、特級呪物に見えたりして怯えていた。


 一番の決定打になったのは、幼稚園の時に言われた言葉だ。


「おたくのお子さんの名前、『変な名前』だよね」と。


 お母さんはというと、全く人の話を聞かずに、「うちの子は凄いのよ」と一方的にママ友に言っていた。

 だけど、話が終わった後かな。そのママ友がボソッと、私の名前に悪口を言っていたのを聞いてしまったんだよね。


 あれから、私の名前に対する愛着心みたいなものが、全く無くなってしまったんだ。


 それは、小学生になっても、変わらずで。

 悪口は、幼稚園よりも更に酷くなっていたんだ。


 でも、最初は「ほーちゃん」だとか、親しみを込めて、あだ名を付けて呼んでくれる子もいたから、学校、いいな。と少しながら思っていた。


 だけど、ある日を境に、徐々に避けられているのを感じたんだ。


 何も、悪いこと、していないのに……。



 ある朝のことだ。教師が出席確認をとる際、


「椎名……えっと、のぞみでいいんだっけ?」


 と言ってくることが多くて参った事があった。

 あの時、「そうです」と言えれば、どれほど良かったことか。

 だけど、嘘をつくのが苦手だった私は


「違います……ほ、ほぉ……ぷ。です」


 と、バカ正直に言ってしまった。


 そう言うと、何故かクラスメイト達はゲラゲラと笑っては『変な名前だよなぁ!』と言ってきたんだ。


 この時、もう死のうかと思っていたけど、一人の少女が、みんなにこう言ったのだ。


「え? どこが? 素敵な名前だと思わない?」


 すると、クラスメイトは、その少女に対して、何にも言えなくなっていたのだ。

 それから、その少女は何かと私に絡んでくることが多くなったんだよね。


 懐かしいなぁ。


 確か、彼女は完璧な小学生。と言った感じだった。

 どこをどうとっても、運動も勉強も、常にトップクラスの子で、そんな子は、最初にできた、私の友達……。でもあった。


 名前は『城崎 綾』と言っていたかな。


 綾は私と違って、みんなの輪の中にいるような中心人物だった。

 目は二重でくりくりとしていて、髪もショートで短いけど、天真爛漫な女の子だったのを思い出す。

 確か、どこかの大きな病院の院長の娘だとか言われていて、みんなとは服装も全く違っていたのを思い出した。


 私らがファストショップで買うような、普通の服を買うのに対して、彼女は有名ブランドの服を着飾っていた。だけど、容姿も可愛かったから、一気にみんなの人気者になったんだよね。


 そりゃぁ、後々アイドルにでもなるような容姿になる訳だから、今思うと納得か。


 それに対して、私はとてつもないほどの、静かで、周囲と囲んで話すより、1人で本を読むのが好きな少女だった。


 だから、よく学園系の漫画にありがちな、根暗少女とカーストトップの美少女。という構図が生まれてしまった訳だ。


「ほーちゃん!」

「なに?」

「ごめん! 教科書忘れちゃったぁ! みーせて!」

「はぁ……。いいよ」

「ありがとぉ! ほーちゃん、すっごくやさしくていいなぁ!」


 こんな感じのやり取りをしていただけなのに、何故か綾の取り巻きが、嫉妬の憎悪に満ちた顔で私を睨んできていたのを思い出す。


 そうだ。何かと思い出した事があった。

 あぁ。長年、虐められた原因なんだけど、実は私、綾の裏の顔を知ってしまったんだ。

 だから、こうして取り巻きのサンドバックの様に生きる人生を、歩むことになってしまったんだけど、後悔はしていない。


 自分のやっていたことは、正しい事だったのに……。

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