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Delete  作者: Ruria
第三章
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職員室2


 少女を抱えた彼と別れた後、私は薄暗い中で一人、辺りを調べていた。彼女が倒れた所の付近には机があり、その上には沢山の書類が無造作に置かれていた。よく見ると、机の引き出しについているネームプレートに『野々坂』と書かれている。


 乱雑した机の上を虱潰しに漁ると、一枚の小さな紙が書類の山からすり抜け、床へと落ちた。


「何だこれ」


 それを拾い、開けてみると、何かをメモした様な言葉が記されていた。



―――――――――――――――――――――――



 一)理科室 生きる人体模型

 二)美術室 涙する絵画

 三)教室  呪われた机

 四)調理室 血まみれの包丁

 五)図書室 開かずの本

 六)トイレ 欲しがる少女


 これらが解き明かされたのち、隠された何かが開く。



―――――――――――――――――――――――



「これって」


 あー、懐かしいな。よくある学校の七不思議だが、何故、七つ目が書かれてないのだろう。まっ、一応貰っておくか。

 そう思いながら、謎のメモを手に入れ、パーカーのポケットにしまいこんだ。


「あとは……」


 そう呟き、『野々坂』『六角』『渡辺』『連藤れんどう』と、順番に先生の机近辺を探る。


 すると、校長室へ入る扉付近に、他と比べ、やたらと綺麗に整理された机を見つけた。しかし、何故かここだけ違和感を感じる。埃一つも被ってない。


 もしかして、私と狂者以外に誰かいるのか?


「また書類。でも、すごい綺麗」


 先生がよく使う部屋だから、書類が多いのはわかるが、置き方によってはその人の性格がはっきりと別れる。汚かったらだらしないし、綺麗だったらそれなりなんだろうと。


 引き出しに貼られたネームプレートを見ると、『遠藤』と書かれていた。この人は、かなり几帳面なのか、書類やプリントは、レターボックスに紙がはみ出ることなく、きっちりと入れられている。ここまで隅なく整理できるなんて、ズボラな私からしたら、とても羨ましい限りだ。


「んん?」


 ふと、机の上に白いメモが堂々と置かれているのを見つけたので、一枚手にとる。


 よく見ると、左から魚、丸い果物、刃物の絵、その下には「紅く染めよ」と赤文字で書かれていた。どこかの暗号かな。

 という訳で、二枚目の謎のメモを手に入れ、パーカーのポケットにまたしまう。


 そして、『草谷くさだに』『塚田』『田嶋たしま』『萩野』と順に回りながら調べていく。


 とりあえずある程度回ったら、あの手帳に机の配置をメモしてこの場を去ろう。

 そう思い、書き込もうとした途端、たまたま目に入った『一ノ瀬』の机の上に、気になるものが置かれていたのを見つけた。


「これ」


 直ぐ様にメモをポケットにしまい、その場で呟く。そこには、一つは透明、もう一つは緑色と青の、三つのクリアファイルが置かれていた。


 しかし、私が驚いたのはそこではない。


「何で、私の名前が……」


 ファイルに挟まれた中身には、こう書かれていた。



―――――――――――――――――――――――



    個人データ票


 名前……椎名望しいなのぞみ

 生年月日……4月17日

 年齢……16 

 現在の通学状況……登校拒否

         (要観察)

 家族構成……3人暮らし

 父(  )

 母(主婦)

 

 教科項目(能力表)

 

 国……優   美……普

 数……普   音……普

 英……劣   家……劣

 理……普   体……劣

 社……普   道……優



―――――――――――――――――――――――



 「要観察って、別に悪い事してないのに」


 確かに登校拒否をしていた。しかし、何でこんなことをされるのだろう。とても不思議でたまらなかった。


 そして、父の所は何故か空白だ。一体どういうこと?

 でも、ここで考えても埒が明かないし、長居は危険と思った私は、他のファイルにもざっと目を通してみることにした。



――――――――――――――――――――――



    個人データ票


 名前……城崎麗きざきれい

 生年月日……12月25日

 年齢……18 

 現在の通学状況……療養中

 

 家族構成……3人暮らし

 父(院長)

 母(女医)

 

 教科項目(能力表)

 

 国……優   美……普

 数……優   音……優

 英……優   家……劣

 理……優   体……劣

 社……優   道……劣



―――――――――――――――――――――――




 これ、麗の個人データ票だよね。


 能力表を見て、『優』の多さに愕然とする。しかし、それと同時に、なるほどな。と納得いった部分もあった。


 メインルームで支配人に言った、我儘に近い、無茶苦茶な要求。それと、有名な家庭教師を週に何回も寄越すという、かなりのセレブっぷりを密かに漂わせていたこと。これで、全てが繋がった。そんな気がした。


「苗字で思い出したけど、城崎きざきって……」


 ふと、ネットやテレビで有名な『城崎総合医療センター』という精神科の権威が集まる病院が、たまたま通っていた高校近辺にあったことを思い出した。かなり大きい建物だったことも思い出した。


 まぁ、苗字一緒だからって、ありえない話でもない。もしかして、その院長の息子が……。


「まさか」


 ここで考えても仕方ないか。そう我に返った私は、手元に持っていたファイルをリュックにしまう。


 あの二人、無事かな。早く保健室に戻らないと。


 ふと、心配になってきたので、ポケットから再度白いメモ帳を取り出し、先生の机の配置を記載してから職員室の扉を開ける。そして、少し顔を出して黒い影がいないことを確認すると、真っ先に保健室へと向かった。

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