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Delete  作者: Ruria
第三章
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職員室

 今いる所から階段まで近いので、そこまで音を立てないよう、早歩きで向かう。そして、降りれば一階に辿り着く。ここでの安全圏と言ったら、今の所一階の保健室が一番だろう。しかし、その間にあいつにバレたら厄介になる。


 私は頭の中で、冷静に考えながら、階段付近に着く。


「ここから、静かに降りるよ」

「了解」


 小声でヒソヒソと言い合うと、互いに喋らないよう、手に持っていたべっこう飴を麗にも分け、すぐに口の中へと入れる。舐めてみると、懐かしい様な甘い味がした。

 そして、しゃがんで手すりに掴まりながら、そっと一段、足を踏み入れた。この姿勢で降りるのはきついけど、無駄な音を立てずに済む。そう前向きに考え、慎重に降りていく。


 そして、やっとのことで無事、一階に着いた。


 ずっとしゃがみながら降り、尚かつ階段も地味に長かったせいか、足と腰がジンジンと痛む。彼も何だか痛そうに立ち上がって、腰を擦っていたが、笑顔は相変わらず絶やさない。本当に不思議な人だ。


「ふぅ」


 一つ溜息をつく。これで普段、引きこもってばっかりで運動してないことが露骨に現れてしまい、正直恥ずかしい。


「きつかったね。でも、よくある潜入のシーンみたいで楽しかったよ!」

「え? そう?」


 例えが余りにも大雑把過ぎる。私は半笑いしながらも体を元に戻しつつ、痛む腰に手を当てる。


「次は職員室か」

「そういえば、あの人から連絡来てる?」

「あっ!」


 そういえば、あれからLIKEには教室で通知が来て以降、全く入ってなかった。


「もしかしたら……」


 嫌な予感がしたけど、まずは行って安否確認をしてこない事には話が進まない。


「とりあえず、向かおう」

「そうだね。連絡くれた人、無事だといいね」

「うん」


 不安な思いを抱え、急いで職員室へと向かった。





 職員室の前に着くと、早速扉の取っ手に手をかけ、横にガラガラと引くとすんなりと開いた。鍵はかかってなかったのかな。助けの通知を送ってきた張本人に会う為、二人で探すことになったが、入って早々、妙な薄暗さと静けさが、職員室中に漂う。


 何だろう。電気は落ちて、エアコンなんてつけられる状態でもないはず。なのに、何故か寒気がする。


 そう感じていた私の視界に、あるものが飛び込んできた。


「これって、まさか」

「手……だね」


 彼が青ざめた顔で呟く。


「あそこに誰かいる!」


 私が指を差し、その先へ駆け寄ると、茶髪の少女が一人、うつ伏せになって倒れているのを発見した。


 服装は、深緑の制服でブレザーらしき上着を羽織っているが、うつ伏せの為校章が見えない。下はプリーツスカートでお洒落な感じだ。

 右手には、刃に血がついた剃刀カミソリ、左手には画面が暗いスマートフォンが握られている。もしかしたら、この人がLIKEに通知をくれた人なのかな。


「大丈夫?」


 倒れてる少女に声をかけるが、ビクともしない。


「まずい状況だね。ひとまず血を止めなきゃ」


 彼は捲って素肌が見えた左腕を見て、命が危ないと判断したようで、止血できる物を探し始めた。


 その腕には、刃物で切った様な無数の傷跡が、痛々しく残っていて、そこの一部からくっきりと鮮血が流れているようだ。傷口からして、まだ新しい。


 私は少女が生きているかどうか、確認をする為、首元を触ってみる。するとまだ体温が温かく、右手が微かに動いていた。


 生きている! 良かった!


 一安堵したと同時に、彼も止血できるものを見つけたようで、慌てて私の元へ駆け寄る。


「望! 見つけたよ!」

「ありがとう! えっと、どうしよう」


 どう止めればいいんだ?


 何故か止血の方法が思い出せない。なので、すかさず彼に助けを求める。


「大丈夫。僕に任せて」


 私からバンダナを笑顔で受け取った彼は、三角にして器用に折り畳み始めた。


「え? いいの?」


 そう訊ねると、笑顔でコクリと頷き、彼女の体制を変えて慣れた手つきで止血を始めた。


「あとは、この人を連れて、保健室に向かうだけだね」


 そう言うと、あっという間に傷口がバンダナに覆われ、一先ずホッとする。


「そう、ね」


 ボソリと呟くが、さっきから何故か、魂が抜かれたかの様に頭がボーッとする。


「望? 顔色、悪いよ」

「そんなこと、ない。私はこれでも平気だから」

「そう。でも、無理はしちゃ駄目だからね」

「はいはい」


 そう冷たくあしらうが、ここまで心配してくれるのは、内心嬉しかった。でも、照れ臭いから冷静なままを装う。


「じゃ、保健室に運んどくね」

「ありがとう。あっ!」


 ふと、何かを思い出した私は、おもむろに近くを探索し始めた。


「どうした?」

「ちょっと先、行ってて」

「え? 何で?」


 バツ印のマスクを着けた少女を抱えながら、不安そうな顔で私を見つめている。


「この辺を少し調べてみるだけ。でも大丈夫。あとで合流するし、あいつが来たとしても、やられないよう、うまく隠れるから」

「んー、分かった。じゃ、先に行ってるね」

「うん」


 彼は気乗りしてなかった様だが、少女を抱えたままの行動は難しいと思っていた様で、先に職員室を出て行った。


 そして、私はこの場に残って調べることにした。

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