自傷少年の末路
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「はぁ……はぁ……」
俺は息を切らしながら走っていたら、いつの間にか、どこかの建物の屋上にいた。
外は快晴で、そよ風が吹いていて、何だか心地良い。だけど、こんな外の空気を吸ったのは、いつぶりだろうか。
もっと外の世界を堪能したかったが、いずれ、何者かに捕まってしまうだろう。
だって、俺は『罪人』だ。
相手がいくら性欲の塊で、ド屑だとしても、殺していいとか、バラバラにしていいだなんて、自分で勝手に決めて良いものではないからな。
「だけど……。ふっ」
あんな低俗で生きる権利なんて、どこにも無い奴は死んで当然だ。と、心の奥底で思っている俺もいる。
それに、自分の大事な人を、あんな形で殺したなら、尚更のことだ。そんな思考回路が、まるで城崎みたいで、屋上で1人、思わずほくそ笑んでしまった。
それと、俺はここに向かう時、こんなことばかり、常に脳内で考えていた。
あの時、ちゃんと愛に真実を伝えていれば……。
あの時、晶を虐めていた恵を止められたら……。
ずっと『後悔』ばかり、付きまとっているのだ。
それと、何で罪人で、監禁されているはずの俺が、ここにいるかというと、あの変な発作が起きた後、目が覚めたんだ。
そしたら、自分の周囲には、機械が所狭しに置かれていて、気味悪く感じたのさ。
だから、一刻も早く外に出たくて、近くにあった機械らしきもので、手当り次第、投げたり色々してみたんだ。
でも、結局扉は俺が目の前に立った瞬間、勝手に開いたから、呆気に取られたけどな。
なので、俺はそこから飛び出して、両サイドがコンクリートで入り組んだ壁を、無我夢中で走って走って……。
それで、黒い扉に覆われたエレベーターに着いたから、右にあった『開』ボタンを押して中に入ってみたんだ。
そしたら、ボタンには『閉』と『R』しかなかったから、仕方なく『R』を押して、『閉』ボタンで扉を閉めたんだ。
でも、ここのセキュリティ、前に行った刑務所よりも、何故か緩くて、思わず拍子抜けしてしまったけどな。
多分、こんなことを出来るのも、あのクソパッ金女しかいない。感謝するべきか否か。俺にはわからねぇが、何だか気力が無い。
「はぁ……」
何のために、こんな17年も間、無駄に生きてしまったんだろうな。
「あの時……」
俺も後追いすれば良かったのに。なんで、馬鹿みたいに、長生きしてしまったんだろうな。
「俺も......、死ねば良かったのにな」
そう独り言みたいに呟いても、本当の俺は、かなりの臆病だ。
だから、簡単には死ねなかった。死んで全部無くなってしまうのが怖くて、怖くて......。
今まで積み上げてきた『仲間』も、一瞬で消えてしまうと思うと、何だか無性に涙が込み上げてくる。
俺は小心者だ。城崎や神田みたいに、勢いよく深くバックリ切る事なんて出来ない。
だけど、俺もあいつらと似たようなことをしては楽しんでいた。
何度も『死と生の狭間』を行き来していたはずなのに。
思い出したかの様に、水色の病衣の袖口を捲ると、右腕には、無数の傷口が痛々しく見えた。そして、手の甲を見ると、バツ印の傷跡がくっきりと紅く残っている。
「城崎……」
ふと、印を見て、あいつの事を思い出してしまった俺は、一旦屋上の床に座り込んだ。
さて。追っ手が来るまでの間、少し休むか。
そして、両目を瞑ると、あの時の光景が、瞼の脳裏に浮かんできたのだ。
そう。俺の行動は、どこで間違えたのか、答え合わせをするために……。




