表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Delete  作者: Ruria
第5章 後編
122/180

とある少年の本心

「なっ!」


 俺は暫く、開いた口が塞がらなかった。

 麗が全くの別人になっていたというのもあるが、俺が今まで見てきた中でも1番『本人』に近かったのだ。


「俺はな、彼女の『邪魔』をする人を、排除しただけなんだ。それは例え、『父』であってもね」

「彼女って……、まさか!?」


 あの椎名望が深く関係しているのか?

 それに、そもそも望と麗にはどんな間柄があるというのだろうか。


 この時点では全く分からないし、彼の行動が読めない。


「彼女は。いや、(ホープ)は、俺の『希望』、そのものなんだ」

「希望!?」

「はい。彼女がいなかったら、今の俺はいませんでした」

「どういう、事なんだ……」


 益々分からない。

 なので俺は『罪状』を含めた今までの脳内データを、片っ端から思い出していくことにした。


 確か、彼は幼少の頃、『辛い体験』を幾度か経験している。それが、人格障害を引き起こした元凶であるのも知ってはいるが。


「実は俺、ずっと昔からこの見た目だから、みんなから変な目で見られていたんだ」

「そうだったのか……」

「はい。まるで割れ物を扱うかの様な目で見てくるのが、何よりも辛かったんだ。考えは至って普通の人なのに……」


 そういえば、アルビノはかなり低い確率で、産まれてくるんだったな。しかも、日本人で持つことも無い、銀髪と紫眼を持って産まれてくるとしたら、尚更のことだ。


「それと、俺の姿が母さんに似ていたんだ。だから、父さんは俺に対して……」

「……」


 まさか……。それで院長は、心底愛していた『亡き嫁』に似た彼に手を出した。というのか。


 これ以外にも再婚相手が原因というのも考えられるが、院長が原因の半分以上であっても良いかもしれない。

 だけど、この様な親子同士で殺り合う結末は、本人の前では言えないけど……。あんまりだ。


 俺は静寂な手術室の中で深く、大きなため息をついた。


「でも、彼女はな、こんな怪物みたいな俺の姿を見ても、『綺麗』と言うだけで、何も変な事、言ってこなかったんだ」

「そう……、なんだ」

「あぁ。あの時はかなり驚いちゃったんだ。だけどさ……」

「だけど?」


 しかし、彼は血塗れたメスを元にあった場所へ戻すと、こう、笑顔で答えてきたのだ。


「俺、すっごい嬉しかったんだ。こんな姿の俺でも『生きてて良いんだ』って思えたからさ!」

「……そうか」


 なので、俺はため息混じりに相槌を打ったが、そんな事を言われたら、流石の俺も反論できないなぁ。


 ったく。カルテ上では彼女は『精神異常の殺人鬼』と記載されていたのにな。


 それに、ここの空間上で出会った彼女の人物像が、データ上で記載された彼女の情報と、あまりにも違いすぎるのだ。


 まさか……。


「先生?」

「はっ!」

「さっきから、ずっと上の空になってましたよ」

「あ、あぁ。ごめんな。ちょっと考え事をしていてな。あは。あははは」


 俺は必死に誤魔化そうと愛想笑いをしていたら、突然、彼のコートの中からスマートフォンの着信音が鳴った。


「あ。彼女からだ」

「お?」

「すみません。先生」


 多分、相手は彼女か幸さんのどちらかだろうが、とる時の様子からして、恐らくは……。


「どうした? あ。お前か。今、扉開けるから待ってろ」


 彼はそう言って電話を切ると、そそくさと扉前まで行ってしまったのだ。


 そうか。そういう事か!


 この時俺は、恐ろしい事に気がついてしまったのだ。


 互いに『愛し合っている』という生易しいものではなく、鎖より重い『執着』の様なモノ。

 そう。2人は共に『依存』し合っている。という事に。


 それと、近くに置かれた棚には、廃人になった彼のレントゲン写真を見つけたのだが……。


「嘘。だろ……」


 俺は思わず膝から崩れ落ちてしまった。

 院長。なんて事をしているんだ!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ