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名前はルース
ローブの男の名前は、その日のうちに分かった。
なぜなら、リーナが帰ろうとした時に男が迎えに来たからだ。
男は笑顔でやって来て、リーナを送って行くと言った。
そんな彼に、ミリアが声をかけた。
「ところで、あなたの名前は?」
「……ルースといいます」
「告白する前に、名前くらい名乗るものでしょ」
「……すみません」
見るからにしょんぼりしているルースが可哀想になって、リーナは庇うように言った。
「私が訊かなかったのが悪かったのよ」
「それはもちろん、あんたも悪いわよ」
「そうよね。ごめんね、ルースさん」
「いいえっ! リーナさんは悪くありません!」
ルースはブンブンと首を振った。
その動作はなんだか愛嬌があった。
「じゃあ、帰りましょうか」
「はい!」
ルースはぎこちなくリーナの手を取った。
手を繋いで帰る二人を生温かい目で見送って、初々しいなぁと、ミリアは一人呟くのだった。