ランスとソーマ
ランスが店で飼われるようになってから、商売繁盛の願いが届いたのか客足が増えた。
客のほとんどは、リーナに付いて回るランスを微笑ましそうに眺めていた。
しかし、一部の者はランスを邪魔に思っていた。
――その、ランスを邪魔に思っている代表のような人物は、今日も店にやって来た。
「やあ、リーナ」
「こんにちは。ソーマさん」
「何か珍しい物は入ったかな」
「ええ。昨日入荷した物の中に、ソーマさんの好きそうな物がありましたよ」
リーナは笑顔で常連客に対応した。
彼がリーナ目当てで店を訪れているのは周知の事実だったが、彼女自身には気付かれていなかった。
ソーマがさりげなくリーナに触れようとすると、ランスが邪魔するようにソーマの足元に纏わりついた。
「ダメよ、ランス。お客様には迷惑をかけないように言ったでしょ」
リーナが注意すると、ランスはソーマから離れて彼女のそばにやって来た。
そして、ソーマに見せつけるようにリーナにすり寄った。
それをソーマは無表情で見ていたが、心の中では苛立っているのは見てとれた。
リーナは慌てて商品を取り出してソーマに見せた。
「これは、極東の国の物です」
ソーマが興味を示すと、リーナは商品の説明を始めた。
その様子を見ながら、ランスは面白くなさそうにソーマの顔を睨んでいたのだった。