ルースの作戦
「……どういうこと?」
人型に戻ったルースに、リーナは問い掛けた。
静かな口調が、彼女が怒っていることを物語っている。
ルースは上目遣いでおそるおそる言った。
「怒ってる?」
「当たり前でしょう!」
リーナの怒気に、ルースは身を縮こまらせた。
「……あの木箱の文字、あなたが書いたの?」
「……うん」
「それで、自分で木箱の中に入って、私に拾われようとしたの?」
「……うん」
……やっと、ランスの飼い主の謎が解けた。
「何でそんなことしたの?」
「リーナさんに拾ってもらいたかったから」
「だから! 何で、拾ってもらおうなんて思ったの!」
「……」
ルースは泣きそうな目でリーナを見た。
それを見て、リーナは自分が苛めているみたいじゃないかと思った。
「……とりあえず、怒らないから、最初から全部話しなさい」
リーナがそう言うと、しょんぼりしていたルースは一転して嬉しそうな顔になった。
「ホント!? 怒らない?」
「とりあえずは、よ」
「ちゃんと話すから、怒らないで」
「……分かったから、さっさと話しなさい」
まったく、年下の少年とでも話しているようだとリーナは思った。
これでもルースは、リーナよりもずっと年上だというのだから驚きだ。
ルースの話を纏めると、店で働くリーナに一目惚れしたのだが、どうやって仲良くなったらいいのか分からなくて、考えた末に思い付いたのが、あの『竜になって拾ってもらおう作戦』だったのだと言う。
(このおバカ……)
リーナは頭を抱えた。