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ギルコさんは欺けない  作者: 羽根 守
エピローグ
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エピローグ:シロツメクサのもう一つの花言葉

 

 ギルコは改築されたギルドへと入る。

 まっさらなカウンター、ナイフ傷ひとつない新しい壁。

 新築同然の建物に、ギルコの目が光り輝いてた。

「大事に使いなよ、ギルコさん」

 村の修理屋は荷物を持つと、ギルドから出て行った。

 

 村の修理屋と入れ違いになるように、メアリーがギルドに入ってきた。

「ただいま、ギルコ」

「おかえり」

「修理屋さんと会ったけど、何かあったの?」

「えっと、実は」

「あ、カウンターが新しくなっている。私に黙って新しいの買ったの?」

「違う違う。これはライアさんがやって」

「幾らライアさんがメスゴリラでもこんなことはしませんよ!!」

「ああ、もう。メアリーったら」

 話を効かないメアリーに、ギルコは困惑する。

「無駄口を叩くために、あなたは仕事から帰ってきたの?」

「いえ、違います」

「なら、結果を言ってちょうだい」

「わかりました」

 メアリーは小包と伝票を取り出す。

 ギルコが小包を開けると、そこには大金貨20枚入っていた。

「結果として、村長から委託された特産物は2000ゴールドで売れました」

「2000ゴールドも」

 ギルコは予想よりも高く売れたにも関わらず、笑顔にはなれない。

「それでギルコ、村長にはどれくらいの分け前を渡せばいいのでしょうか?」

「村長はもういない」

「いない?」

「そうよ。村長はいない」

 ギルコは眉をひそめて、深刻な表情を浮かべる。

 メアリーはその表情からホントのことを話しているのだと、ギルコの気持ちを察するのであった。


「メアリー、わたしが頼んだもう一つのものは?」

「残念ながらクリスト共和国のギルドには地図が書ける冒険者はいませんでした」

「やっぱりいなかったのね」

 ギルコはゆっくりとため息を吐き出し、憂いのあるカオを見せた。


 ギルコはエテンシュラから聞いた中策の詳細を思い返すと、頭を悩ませていた。


 ――この村を守るためにには、近隣諸国と裏切りの交渉術をしないといけない。

 ――少しでもスキを見せればつけ込まれる。ヒトを信頼してはいけない。


 自分一人の力では、複雑な外交問題に対応できる気がしなかった。

 これならエテンシュラの言う上策の方がまだマシだった。


 しかし、上策の交渉術をするために、必要な存在はここにはいない。

 地図を書ける冒険者は何処にもいないのだ。

 悲しげな表情を浮かべるギルコ、すると、メアリーは見計らったように、言葉を付け加えた。

「クリスト共和国には地図を書ける冒険者はいなかったのですが、その帰り、偶然、地図を書ける冒険者を見つけました」

「え?」

「帰り道、ラドル村に行く冒険者を見つけまして。冒険者は女のコを連れていましたので、野盗にでも襲われたら危険だと思い、彼らを馬車に乗せました」

 ギルコはメアリーの話を最後まで聞かず、ギルドから出て行く。

「なんでも青年の方は地図が書けるみたいで、それなら彼に地図を書いてもらおうと思い、依頼することにしました――って、あれ? ギルコ? ギルコさん?」

 メアリーは驚きつつ、周囲を見渡しギルコを探す。

 ギルコはすでにギルドにいなかった。


 ※※※


 二人の冒険者は馬車から降りる。

 久しぶりに見るラドル村の光景になぜか心が安らぐ。

 ふと深呼吸、みどりの風が身体にしみこんだ。


 ギルコは馬車の近くに立っていた二人に気づく。

 一人はルル、もう一人はリッツだ。

 リッツは手を振る。

「やあ」

 ギルコも手を振り、彼の傍へと足早に駆け寄る。

「地図を書きに戻ってきたよ」



 あとがき


 「ギルコさんは欺けない」をご愛読いただきありがとうございます。筆者の羽根守です。

 「ギルコさんは欺けない」は自分の技術を高めるために書いた小説であり、何処の小説大賞にも出さず、ひたすら書き続けてきました。最後まで完走出来たのは読者の皆様がいたからであり、最後まで無事書くことができました。ツイッターでのリツイートなどを感謝しております。


 さて、「ギルコさんは欺けない」をご愛読していただいた皆様はこの小説を読み終わって、色々と疑問に思ったことがあると思います。


 ――なぜ、こんな小説にしたのか。

 ――普通にクエストを与える展開にしなかったのか?


 様々な疑問の声があるかと思いますが、それには理由があります。


 例えば、ギルドマスターを視点にした小説を書いたら、冒険者の依頼、請負、鑑定の繰り返しで、ギルドマスター自体によって物語が動くことがまずありません。

 それに、ギルドマスターが冒険者の手助けをしたら、それって、ギルドマスター一人でやったらいい依頼だよね? と思いますし、ギルドマスターは冒険者の親としてどっしり構えて欲しいものです。

 したがって、冒険者の親であるギルドマスターを物語にどうやって動かすか、これがけっこう悩みの種でした。そこでギルドマスターを若い女の子にし、ギルドを自分の目的のために利用する人間にしたらどうだろうと考えました。ここでアザトイ女のコ、“ギルコ”というキャラが生まれました。

 また、前々から交渉をテーマにした作品を作りたいと思っていたこともあり、今回、それを取り入れたわけです。小説を書く練習として書くのであれば、ヒトとヒトとの心理戦を書き上がる、つまり、交渉戦を丁寧に描き切ることが大切だと思い、それを書くことを目標にして、「ギルコさんは欺けない」を執筆したわけです。

 「ギルコさんは欺けない」というタイトルは、閃き的なタイトルで、物語の基板を作り上げたものでもあります。基本、私はタイトルから物語の世界観を考える派なので、このタイトルがなければ物語の展開を思いつくことも書くこともできません。個人的にはこのタイトルがあったおかげで、最後まで面白く書くことができたと思っています。

 

 さて、「ギルコさんは欺けない」は、これからもストーリーが続きますが、ひとまず、ここで一つのピリオドを置くことにしました。個人的にはこのまま書く続けてもいいのですが、私自身ネット小説を書いているのは、小説家になるための勉強のための習作として書いていました。ミステリーやホラーなどジャンルにあった雰囲気や文章力をつけるために、日夜、モノを書いています。今回、長編中世ファンタジーを書いたらこうやって書いていくんだなという経験することができ、貴重な体験ができました。「ギルコさんは欺けない」がホントの小説になれば、その先の展開を書きたいと思っていますが、果たしてこの小説は読者が求めている小説かと言われると、ハイとは言いにくいところがあります。多くのヒトに読まれる小説を書くために、日夜努力しなければなりません。

 

 次回作については、もうすでに書き上げてpixivの方に上げています。もし、私の作品を読みたいと思う方が居れば、pixivで「魔法少女サクナドファミリア」と検索してください。そこに私の作品が眠っています。時間のある方はぜひぜひ一読して見てください。


 それでは、また、次の作品でお会いしましょう。

 

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