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ギルコさんは欺けない  作者: 羽根 守
04 隠された魔術師
34/57

思案 04-11 大前提のなにか


 夜、リッツはルルと一緒にお風呂に入っていた。

「こうしてお風呂に入るするのも久し振りだね」

「いい加減、一人で入れよ。こっちが恥ずかしい」

 リッツはルルと視線を合わないように、天井を見る。


 ――結局、マハラドは見つからなかった。

 ――ギルコにとって、マハラドは、ルード殺人事件の重要参考人だろう。


 ふと、リッツの頭にある考えがよぎる。


 ――もしかすると、マハラドが犯人なのか?


 リッツは彼を犯人の頭数に入れていなかったが、ここに来て犯人だと考える。


 ――マハラドは魔法剣士、魔術はうまく使えないが、魔法は使えるといえば使うことができる。

 ――しかし、そんな彼がルードを殺せるほどの火炎魔法を使うことができるのだろうか。


 リッツはマハラドが犯人だと絞ろうとする。

 しかし、犯人だと狙いを付ければ付けるほど、疑問が増えていく。

 ――動機は何だ? どんな動機だ?

 ――ルードを殺せるほどの火炎魔法を使えるか。

 ――そもそも、ギルコはホントにマハラドを犯人だと思っているのか?


 膨れあがる疑問、リッツの頭はスッキリしない。


 バァア!


 頭からドバっと熱湯を掛けられる。

「何、考えているの!」

 ルルは浴槽から上がり、木の洗面器でリッツの頭に熱湯を浴びせた。

「事件のことだよ」

「事件って? あの長髪のヒトを殺した犯人?」

「そうそう、そのルードが殺した犯人は誰かを探しているんだ」

「ふーん」

 ルルはジャブンと浴槽にダイブする。

「ニィニィは誰が犯人だと思っているの?」

「目星がつかないな」

「わたしも誰が犯人かわからない!」

「自信持って言うなよ」

「第一、あの盗賊さん、殺して何の価値があるの?」

「この村を襲う前に倒したら、この村は守れるだろう?」

「だから、その前提がおかしいの。リーダーを殺したら、仲間は怒るでしょう?」

「そうだな、怒るな」

「そんな怒りっぽい盗賊さんに怒らせるマネをするヒトっているの?」

「そんなヤツは……」

 リッツの呼吸が一呼吸遅れる。

「まさか、ルル、盗賊の怒りを利用しているヤツが犯人だというのか?」

「かもしれない。なのかもしれない」

「かもかも言わないで、ハッキリしたことを言ってくれよ」

「ニィニィ、最近構ってくれないからイヤ」

「この事件終わったら、構うから」

 ルルはニカッと笑い、リッツの胸に身を預ける。

「じゃあ、言うね!」

 リッツはルルの言葉に耳を傾けた。

「この事件は前提がおかしい殺人事件。その前提を崩さないと、犯人は見つからない」

「ルルはその前提を知っているのか?」

「わからない。なんていうか、前提に無理があるの」

「魔法で殺したことが?」

「それは確定要素」

「犯行時間は、実はズレていた?」

「それも確定要素」

「じゃあ、なんだ? 誰かがウソを付いているのか?」

「多分、それ」

「多分って!」

「大前提の何かがおかしい。その大前提の何かさえ気づければ、後は簡単。ただ、今のところ、その証拠は見つかっていないけど」

「ルル」

「なに?」

「探偵みたいな思わせぶりはやめなさい」

「わかっちゃった? 探偵ごっこしてるの」

「ああ。焼死体を見つけた時、馬の上に居たくせに」

「だって、怖いもん。見たくないもん」

「そういうときだけ、こどもになるな」

「もし、ニィニィが殺しただと思ったらイヤだから」

「……ああ、はいはい」

「ニィニィはそんなことしないよね」

「しないしないよ」

「ヒトを殺すのならもっとうまくやるよね」

「さあ、それはどうかな」

「ニィニィ!」

「冗談はここまで、身体を洗ったらもう上がるぞ」

「はーい」

 二人は冗談を言い合いながら、一時の休息を楽しんでいた。


 ※※※ 


 リッツとルルはお風呂から上がった。

 2階の自室へと戻ろうとする前に、ギルドの受付口にいたギルコに挨拶する。

「先にお風呂もらいました」

「もらいました」

「これからわたしもお風呂に入ります」

 ギルコはそういうとギルドの後片付けを進めていく。

 ギルコが掲示板を拭こうとすると、そこにあったマハラド捜索の依頼状を目にした。

「そういえば、ギルコさん。どうしてマハラドの捜索なんか……」

「実は――」

「まさかマハラドがルードを殺した?」

「いえ、どちらかと言うと身の安全の確保」

「身の安全の確保?」

「ええ、きっと彼は命を狙われているわ」

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