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ギルコさんは欺けない  作者: 羽根 守
04 隠された魔術師
29/57

約束 04-06 魔法の後遺症

「終わったわよ」

 ギルコがギルドで寝ていた者を起こしていく。

「もう朝?」

「頭が痛いな。だから、魔法は苦手なんだよ」

 スヤスヤと寝ていたラムネとライアは小さなグチをこぼす。

「まったく、ギルコの説明好きには困る」

 彼女らと同じように眠っていたエテンシュラも、そんなことを口にした。


「魔法について大体わかったのだけど、それが魔法を使える村人と何の関係が?」

 リッツはギルコに説明を求めると、ギルコは答える。

「魔法には副作用があって、ここにいる村人達は魔法の後遺症に悩まされているヒトがいるの」

 ギルコはそういうとギルドの奥へ行く。

 リッツが首を傾げていると、ギルコは何かを持ってきた。

 ギルコが持っていたのは鉱石のような物体だった。先ほど話していた魔導石かとリッツは察した。


 テーブルの上に、青く輝く鉱石と鈍く光る紫の結晶が並ぶ。

 ギルコは青く輝くトゲトゲの鉱石を手にする。

「この青い鉱石が魔導石、今はとても貴重な鉱石よ。鉱石はだいたい砲丸の玉よりも一回り小さくて、質のいいものだととても丸いの。この魔導石はトゲトゲだから魔法と呼ばれる魔法は発動できないわ」

 ギルコは青く輝く鉱石を置くと、次は鈍く光る紫の鉱石を手にとった。

「この紫の鉱石が魔力を使い切った魔導石、魔導切れと言われている。魔力を失って使い物にならなくなった結晶ね。壊れやすい水晶体になっているから慎重に持ち運ばないといけない。不純物の魔導石なら石すらも残らないけど、純粋度の高い魔導石はこうやってカタチを残すの」

 ギルコはゆっくりと鉱石をテーブルへと戻す。紫の鉱石はコロコロと転がりそうだった。


「魔導石は見せてくれたのは助かるけど、どうしてそれが魔法の後遺症と?」

「残るの」

「残る?」

「魔導石が身体に残るの。身体に堆積たいせきする魔導切れの魔導石となってね」

「身体に残ってるって? 紫の結晶が?」

「そもそも魔法は、体内にある魔導粒子を精製させて、体外へ出して魔法を発動させている。小さな魔法なら少ない魔導粒子を魔導石に精製させる。魔法を使い切ると魔導石から魔導粒子に戻って、魔導粒子は肉体へと還元する。けど、大きな魔法を使えば、魔法を精製させるために多くの魔導粒子が出てしまう。肉体はすべての魔導粒子が還元できず、魔導切れの魔導石として肉体に蓄積される。いわゆる、“ 結晶化 ”と呼ばれる症状に陥るの」

「どうして、そんな症状に」

「膨大な魔力にするためには魔導石もそれ相応に大きくしないといけない。大きくなった魔導石は魔導粒子として戻れない。魔導切れの魔導石として体内に残ってしまう」

「魔導切れの魔導石になる前に、外へ出せばいいのに」

「魔導粒子は人間の血液みたいなもので心臓から全身を巡るように、魔導粒子も外へ魔法を出せばあるじの下へと戻ってくる。魔導粒子は使い手のイメージを現世へ運ぶ手伝いをしていると言ってもいいかな。大きな魔法を使って、使い手の身体が自分は結晶化するってことがわかっていても、魔導粒子は必ず戻ってきて、自分の身体へと眠りつこうとする」

「……まるで悪魔だ」

「だから魔法は悪魔の取引と言われているわ」

 ギルコは説明を終えると、小さなため息をつく、疲労の色を見せた。


 話が途切れたことを見計らい、リッツは自分が話したかったことを口にした。

「この村には魔法が使えるヒトがいる。火炎の魔法ぐらいなら魔法の副作用はないはず」

「かもしれないわね」

「だから村人の誰かがが犯人の可能性がある」

「でも、みんな魔法を使わないと約束している」

「約束って」

「彼らはエトセラ帝国からわたしたちを逃がすために戦ってくれた。自分のキャパシティを超える魔法を使って。……今でも結晶化に苦しんでいる村人がいる」

「そうなのか?」

 エテンシュラとラムネは頷く。

「オレからもお願いだ。この村にいる村人を近くの町へ運ぶことができないのは、パリと割れる自分の身体を恐れているからだ。慎重に運ばないと身体が崩れてしまう」と、エテンシュラ。

「納得できない」

 リッツは首を左右に振って、反論する。

「このままだと、ボクは犯人に仕立てあげられる。いや、みんなはそうしようとしているのだろう?」

 リッツの疑問に、この場にいる者は視線を伏せる。

「村のためなら、冒険者はどうでもいいのか?」

 その質問に対して、ラドル村の村人は答えなかった。


「それもそうだね」

 沈黙の空気を打ち破るように、ライアは口を開いた。

「村人が犯人だとわかったら、冒険者に罪を負わせんの?」

「ライアさん」

「ギルコさん、ギルドマスターとして約束して、村人の中に犯人だとわかった時、冒険者になすりつけるマネだけはやめて」

「わかりました。ギルドマスターとして約束します」

 ライアとギルコはそう約束を交わした。


「……ライアさん」

「ラムネ?」

 ラムネからの突然の呼びかけに、ライアは首をかしげる。

「わたしたちを助けるために、帝国から全力の魔法を使ってくれた彼らを、そっとしてください」

 ライアは静かに頷き、理解を示す。

 しかしながら、犯人を見つけ出すために、その約束は破られる可能性は大きかった。


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