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ギルコさんは欺けない  作者: 羽根 守
04 隠された魔術師
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策略 04-02 新たな策


 エテンシュラはギルドの中を覗く。


 ――ギルコ、リッツ、……ライアまでいるのか?


 エテンシュラはナイフだらけの壁と壊れたカウンターを見つける。


 ――ライアがカウンターに隠れていたと見る。となると、この壁に刺さったナイフはギルコに対して威嚇いかくとして使われたものと見ていいだろう。

 ――で、ライアがカウンターから強襲したが、ユウロはその剣撃をかわした。痛々しい床の穴がその証拠か。

 ――ユウロはライアの強襲を避けたが、その場で動くことができず、膠着こうちゃく状態に陥っていた。そこで、ギルコが交渉をするために出てきた。そんなところだな。


 エテンシュラはそう読み、三人の表情を確認する。


 ――交渉はかなり難航したみたいだな。絶望的な表情をしてやがる。


 エテンシュラはあごに指を置きながら考えていると、ラムネが大きな声を上げた。

「ギルコ!! ライアさん!!」

 少しは考えてから動け、と、エテンシュラは、頭の中で小言を言うのであった。


 ※※※ 

 

 ラムネの声が聞こえた三人はカオを見上がる。

「ちぃーす」

 そこにはエテンシュラがいた。

「暗いカオしてるな。エテンシュラ様の登場だぞ」

「アンタと漫才しているヒマはない」

 ギルコは言う。

「話してみろよ」

 エテンシュラはギルドにあった椅子を持ち出しながら暗い空気を振り払うように言った。

「嫌いなやつに話しても、頭の整理ぐらいできるはずだ」

 エテンシュラは椅子の背もたれの正面へと座り、前のめりにもたれながらそう言うのであった。


 ※※※


 先ほどの出来事を聞いたエテンシュラとラムネはゆっくりと頷いた。

「なるほど、ルードはこの村にいるヤツの誰かが殺したと難くせつけたわけか。で、この村を襲わない取引材料として、犯人を見つけろと言われたわけね」

「概要を言えば、そんなところよ」

「で、みんなはどうして絶望しているんだ?」

「この村を守る方法が見つからない。――ギルド公認を受けているから傭兵の助けはもらえない。冒険者を募っても、コダール町まで往復三日以上はかかる」

 ライアはエテンシュラに説明する。

「おいおい、もうすでに村を守る方法ってヤツ、出ているだろう?」

「え? それって?」

 ラムネの言葉に、エテンシュラは頷く。

「ルードを殺した犯人を見つけろよ」


 エテンシュラの言葉に、一同はキョトンとする。

 まるで、場に似つかわしくない冗談を言って、冷たい目線で見られているようだ。

「皆さま、そのような、オマエは一体何を言っているんだ? というおカオはやめてくれませんでしょうか? わたくしのこころは今、たいへん苦しんでおります」

「エテ公」

「ギルコさん、忘れた頃にそのアダ名で呼ばれるのはけっこう心にグサりとくるものです」

 エテンシュラは慇懃いんぎんな態度でギルコの呼びかけにそう返した。

「あの盗賊が約束守るっていうの? 彼らが!?」

「ギルコさんは時間を稼ぐつもりで交渉したと思う。しかし、ユウロもそれをわかった上で、ギリギリの時間を指定してきた」

 ギルコは口をつぐみ、ゴクリと生つばを飲む。

「つまり、ギルコさんが交渉の狙いにしていたモノは、実のところ、得ることができなかった。――そういうことだよ」

「そんな、わたしのしてきたことは、この交渉の意味は……」

「いや、意味はある。ルードがいない今、黒き山林はギルド公認を取り消したくない。ギルド公認が消されたら、冒険者から狙われる。あらゆる方面から袋叩きにあうだろう」

「確かにそうね」

「しかし、盗賊団にもメンツがある。団長を殺したソイツの首を取ることでメンツは守られる。おそらく、ユウロはそのメンツってヤツを守るために、犯人の身柄を請求したのだろう」

 リッツはエテンシュラの言いたいことがわかると、静かに頷いた。

「――ということは」

「そういうことだ」

 エテンシュラは察しのいいリッツをほめた。


「いや、わからないって!! わたしにもわかるように説明してよ!!」

 ラムネは男二人だけでわかる会話に苛立ちを覚える。

「エテンの言いたいことはだいたいわかる。それを確認する意味でもここで話してくれないか?」

 ライアはエテンシュラにそうお願いする。

「わかったよ」

 エテンシュラは説明を始める。

「盗賊団、黒き山林は団長を殺した犯人の首を取れればそれでいい」

「村を襲ってこないの?」

 ラムネは不安を口にする。

「ギルド公認というのは大きいものだ。特に、敵を作りやすい盗賊にとって、ギルドに公認されるということは、あらゆるものから守られているということだ。盗みや略奪ができない代わりに、冒険者としての仕事はしなくちゃいけないけどな」

「そうなの?」

 ラムネはギルコに尋ねると、ギルコは頷く。

「黒き山林はそういう約束を守るヤツらだ。こっちが下手を打たなければな」

「でも、犯人が見つからなかったら?」

 ラムネは不安がる。

「最悪の場合、この村から生け贄を作ればいい」

「ニセ物だとバレたら?」

「納得させるだけの材料を揃えばいい。抜け目ないヤツらだが、それなりの犯人と証拠を揃えばいい」

「証拠の捏造ねつぞうというわけね」

 ギルコはそういうとエテンシュラは首を横に振った。

「あくまでそれは最後の手にしよう。村を救うための魔女狩りはゴメンだからな」

「ええ」

「まずは、この事態を作り出した犯人を追い詰めよう」

 リッツの意見に、一同は静かに頷いた。


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