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ギルコさんは欺けない  作者: 羽根 守
03 ナマイキギルドの潰し方
22/57

交渉 03-10 黒き闇に火が揺れる


 ギルドを囲む火のゆらぎ、暗闇を静かに照らす。

 火を持つは屈強な男ども、彼らは黒き山林の盗賊団である。


 ギルコ達はギルドに戻ると、たいまつを持った盗賊たちが待っていた。


 盗賊たちは苛ついているのか、たいまつを振ってパラパラと火種を散らしている。

 その様子をギルドから離れた場所で村人達が見ている。

 彼らのたいまつがギルドに向かって放り投げるのはないかと今か今かと心配していた。


 一触即発、盗賊たちは静かな怒りを手にしている。

 しかし、リッツはその様子に違和感を覚えた。


 ――どうして? 襲わない? この村を


 盗賊たちが礼儀良く待機し、この村を襲おうとはしない。 

 これだけの盗賊がいれば、この村を一瞬にして焼き野原にすることだって可能だ。


 ――なのに、彼らは何かを待っている。なぜだ?

 

 リッツの中で何とも言えない不信感が募っていた。


 ※※※


 ギルドの入り口には村長が立っていた。

 その隣にはルルが眠そうな表情で立っていた。

「ギルコさん」

 村長はギルコの下へ駆け寄る。

「いったいこれはなんですか? 村長」

「実はな、ギルコさん。盗賊たちがいきなりやってきてな。ギルコを出せギルコを出せと言っておってな。ギルコはまだ帰っていないと、ワシがこうして説得を続けているのじゃが」

「説得?」

「そうじゃ」

 ギルコは違和感に気づく。


 ――盗賊団が来るのって、今日だったの?

 ――エテンシュラの話から明日だと思っていたのに。


 ギルコは頭を働かせていると、盗賊団数人がギルコの下へとやってきた。


 ギルコはギルドへとやってきた数人の盗賊団を観察する。


 ――髪を片方の目を隠すようにしているキザなヤツら。

 ――隻眼でも気取っているの?


 そんなことを思っていると、盗賊団の中央にいた男がギルコに話しかけた。

「あんたがギルコか」

「ええ」

「始めましてかな。俺の名はユウロ。黒き山林の副団長をやっている」

 ユウロは髪をあげて、素顔を見せる。


 あらゆる所にピアスを付けた、いかつい顔。

 そんなカオにあるオッドアイがなんとも言えず、不釣り合い。

 宝石を義眼代わりに付けているから、そんなことを思うのだろう。


 ギルコは目の前にいる人物、不愉快を感じつつも、丁寧な礼をする。

「ギルコ。ラドル村のギルドマスターを任されている。こうして黒き山林のメンバーと話すのは始めてね」

「いつも追い返しているからな、貴様は」

「あなた達の悪評は耳にしているからね。ラドル村の仕事を受けさせるつもりはない」

「そんなのどうでもいい。農作業なんてお断りだ」

「それで、今日はそのいらつきを発散するために、部下を大勢連れてやってきて、ギルドでも襲うの?」

「そうだ。――と、言いたい所なんだが」

「言いたい所?」

「おかしらが帰ってこないんだ」

「おかしら? ルード?」

「そうだ」

 ユウロは右頬をゆがめ、苛立ちをあらわにする。

「おかしらは酒場にいる女に別れを言うために出かけると言ってから、もう夜になってしまった。それで、部下に酒場の様子を見てこいと言ったが、おかしらは何処にもいなかった」

「何処にもいなかった?」

「あのヒトが約束を破ることはねえ。きっとこの村で何かあったんだ」

「それで盗賊団を連れて、ギルドまでやってきたと」

「そうだ。――知っているか?」

「その前に聞きたいことあるのだけど」

「聞きたいこと?」

「わたしがルードを人質にしていると言うの?」

 二人の間に心臓が潰されそうな空気が流れる。

「その理由は?」

「わたしがあなたたち黒き山林と交渉するため」

「なるほど。おかしらの言うとおり、ギルコさんはあざといな」

「ねえ、そうなの? あなたたちはわたしがルードを人質にしているって」

「そうだ、そのつもりで山から降りてきたんだが――」

「幾らなんでもそこまでことはしないわ」

「ギルコさんならやるかもしれないと釘を刺された。もし、俺が人質に盗られたら、ギルドにいるはずだと言われた」

「そう」

 ギルコは視線を下にし、手に持っていた眼帯を握りしめる。


 ――もし、これを彼らに見せたら? わたしはどうなるの?


 ギルコはギルドを見渡す。

 自分を助けてくれる取っておきのアイテムを探す。

 ギルドのカウンターからひょっこりと剣の柄が出てきた。


 ――相手はわたしがすべてを知っていると思っている。

 ――怒りの矛先は村ではなく、わたしへと狙うはずだ。


 ギルコはカウンターから自分の足下まで目を送る。


 ――カウンターまでの距離は10メートル。

 ――あそこまで走り抜けることはできるはず!


 生ツバを飲み込み、深く頷く。


 ――たった数秒、たった3秒。命を取られる時間じゃない!


 ギルコは覚悟し、静かに口を開いた。

「もし、ルードが殺されたとしたらどうする?」

「殺されていたら?」

 思いもよらない事態に、ユウロは慌てる。

「幾らなんでもあのヒトが殺されてるなんてこと……」

「これを見て」

 ギルコはユウロに眼帯を渡すと、ユウロは調べる。

「これは……」

 ユウロは物言わず、眼帯を握りしめる。

「やっぱり、そうだったんだ」

 ギルコはもう一度、覚悟を決める。

「その眼帯は村の入口にあった焼死体が身につけていたものよ」

 ギルコは盗賊団との衝突は避けられないと肌身で感じていた。


 ※※※


 メラメラと燃えるたいまつの火、風に吹かれてさらに燃え上がる。

「探しビトは見つかった、帰ってくれる?」

 ギルコはユウロに交渉する。

「見つかったといえるのか」

 言うまでもなく、交渉は失敗に終わる。

「これからどうする?」

「どうするって言われたら」

 ユウロは懐からナイフを取り出した。

「とりあえず、おまえを殺すことにするよ」

 もはや彼らの間に交渉など空気はなかった。


 びゅんとナイフが風を切る。刃先が空気を裂く。

 ユウロは素早くナイフを投げる。

 ナイフはギルドの柱にタッタッタと刺さる。

 ギルコはナイフを気にせず、カウンターへと向かう。


「キャアァァアア!!」

 ユウロの行動に、ラムネは大声で上げた。

「逃げろ」

 リッツはラムネと一緒にギルドから離れていく。

「ギルコは!! ギルコをたすけないと!!」

「オマエが行ってどうする? 力になるのか?」

 本来なら、リッツはギルコのそばへ向かうはずだった。

 しかし、戦いのイロハを知らない少女を助ける方を優先にした。

「ギルコさんもギルドマスターだ。なんらかの知恵を働かす! だから信じよう」

 ラムネを安全な場所に連れて行ったら、すぐにギルドへと向かう。

 そんな算段を立てながら、リッツはギルドから出て行った。


 ユウロはマントに仕込んだナイフを取り出す。

 一歩、二歩、三歩、ギルコはゴールへと近づいていく。

 しかし、ナイフはギルコの足下を狙うように刺さる。

 キズはついていない。

 威嚇いかくだ。カウンターに入ったら殺すというメッセージを送っているようだ。

 それでもギルコはナイフに気を取られず、ただ走る。

 カウンターへ前転回転しながら飛び込ぶ。

 ギルコは無事、カウンターの下へ隠れた。


「やられたな」

 ユウロはそんなことを言いつつも、喜悦にまみれた表情をしていた。

 ――カノジョはすでに袋のネズミだ。

 ――ギルドの奥へ逃げればいいものを、カウンターの下に潜り込みやがった。


 ユウロとその取り巻きはギルドの奥へと向かう。

 ――なぶってやる。こづいてやる。

 ――なんならグゥの音が出ないぐらいにいたぶってやろうか。


 ユウロは拷問レシピを頭を浮かばせると、頬を赤黒く染める。

「ワナはあるかもしれないから気をつけろよ」

 ユウロ達はギルドの中にあるワナを確認しながら、慎重に歩く 


 ――ギルコはすでにハンティング済み、カノジョはギルドという檻の中に捕まっている。

 ――なら問題はない。


 脳から溢れ出す安心感にユウロの心が支配される。

「逃げるなよ動くなよ」

 ユウロはギルコがカウンターの下にいると想像し、カウンターの上へ乗る。

「――ギルコさん!!」

 その瞬間、自分よりも大きい巨大な物体が目の前に写った。


 一瞬だった。

 巨躯きょくが放つ大剣がユウロの眼前へと振るった。

 ユウロはその大剣は自分の身体では受け取れないと察する。

 壁に足を蹴り、バックステップを踏む。

 壁を蹴った力で、後ろへと下がった。


 そいつは本能だった。

 目の前にいるヤツを相手にしてはいけないという本能がなしえた行動だった。

 攻撃を回避した後、彼は団長の言葉を思い出す。


 ――理性を疑え、本能にしたがえ。


 それがルードから教えてもらった盗賊のあり方だった。

 そのあり方が彼を窮地きゅうちを救ってくれたのだ。


 大剣は木製のカウンターを一撃で爆砕する。

 水が弾けたような破裂音がギルドに響かせる。

 粉々になった煙から先ほどの巨躯が現れる。


「まったく、盗賊ってやつはどうして勘がいいのかね」

 巨躯はのらりくらりと歩いていく。

「だけど、そういう本能でやりやえる敵ほど、アタイは得意なんだけどね」

 煙に隠された巨躯の正体が現れた。

「……バウンティー・ハンター。ライア」

 腰が砕けて仰向けになっていたユウロがカノジョの名前を呼ぶ。

「何だ知っていたのか」

 ライアと呼ばれた女は首をポキポキ鳴らして、ユウロをあざ笑う。

「そうさ。このギルドにはライアさんが待っていたんだよ」

 ライアは口角を上げると、大剣をひょいっと背負った。


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