表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルコさんは欺けない  作者: 羽根 守
03 ナマイキギルドの潰し方
13/57

休息 03-01 ならず者が集まる酒場へ


 夕方、ギルドから去ったリッツは牧場にいたルルを誘い、今日の寝床を探していた。

「ニィニィ、なんだかゴキゲンだね」

「そうか?」

「いいことあったの?」

「別に、何もない」

 そう言いながらもリッツのカオはホクホクしていた。なにせ、100ゴールドの価値しかなかった地図がその50倍に売れたのだから、普段、あまり表情を見せないリッツにしても、笑顔が見え隠れしていた。

「それにしても、はらへった」

「宿屋を見つけたらな」

「もうだめ、動けない」

 ルルは道端で仰向けになって倒れる。

「はらへったー!」

「恥ずかしいからやめなさい」

 ルルは無言でこちらを見つめる。

「目で合図するのもやめなさい」

 リッツはルルのワガママに困っていた。

 しかしながら、リッツもまたお腹が減っていたのは事実である。

 そこでリッツは近くに飲食店があるか周囲を見渡す。

 すると、ピンクハートの看板が印象的な酒場を見つけた。

「酒場か」

 ルルは立ち上がると、そちらにゆびをさす。

「ニィニィ、ここでご飯食いたい」

「こどもにはまだ早い」

「ニィニィ」

 ルルはリッツの裾を揺らして、ハラペコを訴える。

「わかったわかった」

 リッツはルルの肩を叩く。

「ニィニィ、わかっている!」

「はいはい」

 リッツはルルを適当にあしらいながら、二人は酒場へと向かっていた。


 ※※※


 扉を開くとカウベルの音が鳴り響く。

 二人はその音に誘われるように、酒場『スクランブル・ハート』へと踏み入れた。


 アルコールの匂いが鼻腔びこうをくすぐる。

 この店にいるだけで自然と酔いが回ってきそうだ。

「うわぁ」

 ルルもお酒の匂いに鼻がやられたのか、そんなうめき声をあげた。

「だから言っただろう。素直に宿屋を見つけたら」

 ルルはプクッとカオをふくらませると、近くにあった空席に座る。

「ニィニィ!! 早く食べよう!」

「まったく」

 意地っ張りなルルを見て、リッツは嘆くのであった。


 ※※※


 リッツは店員に注文を頼むと、酒場の様子を見る。


 ――軽装の鎧を着た男ばかり、ローグか。


 ローグと冒険者の違いを見分け方は服装にある。

 冒険者は動きやすい服装をしており、鎧といったものは身につけていない。

 山賊や盗賊にあった場合、全力で逃げきれるように、軽い服装をしている。

 彼らは戦闘をするために冒険をしてるわけではないのだ。

 反対に、ローグは軽装の鎧を身につけている。

 軽装の鎧を身につけているのは、必要な戦い以外では逃げることを優先としているからだ。


 リッツはローグ達の様子を見ていると、彼らの目の前に大きな皿が運ばれてきた。

 トロトロチーズが敷かれた大きなピザだ。

 ローグ達の目の前にはその皿が置かれると、彼らはそのピザへと向けて手をのばす。

「殴るな、蹴るな、オレのを取るな!!」

「カネがねえからしょうがねえだろう!!」

「テメエらはパンくずだけ食えよ!!」

 ローグ達は自分だけがピザを手にしようと他のローグを出し抜こうとする。

 その争いは見るにたえないもので、目を背けたくなる。


 ――モノの分け方の一つも知らないから冒険者の仕事がもらえないんだよな。


 リッツはそう思いながら水を飲む。

 久方ぶりに飲む水は渇いた喉を癒してくれた。


 ※※※


 リッツが注文をした品がテーブルに並ぶ。

「うわぁ! おいしそう」

 ルルは身を乗り出して、料理を見る。

「山鳥の山賊焼き。山草のサラダ。かぼちゃのスープでございます」

 店員は持ってきた料理を紹介するが、ルルはその話を聞いていない。

「他のメニューはすぐお持ちしますのでしばらくお待ち……」

「いただきます!」

 ルルは山鳥の肉をパクリと口にする。

「おいしい!! もう一つ!!」

 ルルは骨になった山鳥を天にかざす。

「店員さん、同じ品をもう一つお願いします」

「ああ、はい」

 ルルの食欲に驚いていた店員はそそくさと立ち去っていた。

「よく食うな」

 ルルは応えない。食べるのに必死だ。

「まったく」

 リッツはかぼちゃスープをスプーンですくい、口に寄せる。

 かぼちゃの甘味とミルクのコクが舌先で溶ける。

「おいしいぞ。このかぼちゃのスープ」

「ホント!?」

 ルルは口を開けてスープを入れろとリッツに合図を送る。

 リッツは微笑みながらかぼちゃのスープをルルの口の中に入れる。

「味しない!」

 ルルは大声で言う。

「ホントにかぼちゃのスープ!?」

「わかったわかった。やるから」

 リッツは自分の席にあったかぼちゃのスープをルルに渡す。

「さすが、ニィニィ! 話がわかる!」

 ルルは皿を持ち上げ、かぼちゃのスープを飲み込む。

「おいしいね! これ」

「まったく、ホントに」

 ルルの盛んな食欲に、リッツはまいっていた。


 リッツはルルの食べっぷりに呆れていると、後ろから声が聞こえた。

「おっと、いいかい?」

 一人の男がリッツに話しかける。

 リッツはその声がする方に振り向く。

 無精ヒゲの男、遊び慣れている感じがする。

「そんなに緊張するなよ、若人わこうどよ」

 男はリッツの許可もなく、彼の隣へと座った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ