表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルコさんは欺けない  作者: 羽根 守
02 地図作りの冒険者
PR
11/57

交渉 02-04 ギルコさん対中二病魔法剣士 “ マハラド・カシード ”


 オルエイザ大陸では通貨が二つ流通している。金貨と銀貨の二つである。

 1枚の金貨は100枚の銀貨に相当する。これがこの世界の為替ルールである。


 オルエイザ大陸で通貨が生まれた時、多くの国が変動為替ルートを取り入れていた。

 しかし、通貨がある程度広まると、二つの通貨が主流に使われるようになった。

 金貨を使用する国々と銀貨が使用する国々、世界はその二つに分けられた。

 その中でも主流に使っていた金貨の国がクリスト国であり、銀貨の国はエトセラ国であった。

 クリスト国とエトセラ国は交流があり、貿易関係を結んでいた。

 金貨の国と銀貨の国、二つの国は貿易がうまく行くように、変動為替ルートの条約を交わした。為替を調節することで、二つの国は利益を生み出していた。


 しかし、クリスト国がエトセラ国からの移民を受け入れた際、事態は大きく変わってしまった。

 エトセラ国からやってきた移民は銀貨を持っていた。

 移民が持ってきた銀貨を多く流通されたことで、銀貨の価値が低下し、代わりに金貨の価値が高騰してしまった。

 これによってクリスト国の間で大きな経済格差が生まれ、元々住んでいたクリスト族の貴族層、クリスト国へとやってきた移民の貧困層と呼ばれることになった。

 貧困層がこれ以上増加すれば、クリスト国内で治安を悪化させる原因となる。

 クリスト国は治安の引き締めを行うために、固定為替ルートを導入することにした。


 1ゴールド=100シルバー


 1枚の金貨は100枚の銀貨に相当するという固定為替ルートが世界のルールとなった。

  

 ※※※ 


 牧場にいるルルを羊飼いに任せ、リッツはギルドへと向かう。

 リッツは手元にあるいたずら書きされた地図を見ながら、長いため息をついていた。


 ――本来なら300ゴールドで売れるはずのものだったのに。


 自分が地図を管理しないために、こういう事態を招いたと反省していた。


 ――50ゴールドで売れたらな。


 そんなことを思いながらギルコの待つ「クローバーエース」へと戻ってきた。


 ギルドには先客がいた。

 民族衣装のクルターを身に付ける若い青年、ギルドの中心で剣をかざした。

「我の名前はマハラド・カシード! 炎の剣を扱う剣士なり」

 マハラドと名乗った男は宝飾のまとう剣を天高く持ち上げる。

「この剣は伝説の剣! 炎の剣! 炎の魔力が剣のカタチとなったもの! この剣に斬られたものはヤケドじゃすまない。全身が火だるまとなり、死の雄叫びをあげる!」

 男は能書きを口にし、その剣を振るう。

 火はホタルのように散り、花火のように輝く。

「ハッ! ハッ! ハッ!」

 男は炎の剣を振るい、デモンストレーションを続ける。

 見えない敵と戦っているパントマイムショー、ただ動きが単調であるために、見ているうちに飽きる。

「ハッ! ハッ!」

 されど、彼は構わず、剣を振る。

 剣から溢れる蛍火がさらさらと風に流されて、そして消えた。


「なに、やってるんだ? あれ」

 リッツはカウンターで眠たそうにしているギルコに話しかける。

「あの剣を売って欲しいって、言ってます」

「やたら飾り気のあるあれをか?」

「それです」

「でも、あれって――」

 リッツがギルコと話していると、マハラドが割り込んでくる。

「ギルコさん!! 誰と話しているんですか!?」

「ゴメンゴメン」

 リッツとギルコが話している姿を見て、マハラドは自分に興味がないと思い込んだ。

「ギルコさん、モノを投げてください。そいつを斬って、燃やし尽くしてあげます」

 マハラドは剣をかざして、ギルコを挑発する。

「わかりました」

 ギルコはマハラドを適当にあしらいながら、カウンターにあった紙を手にした。


「えっと、あなた」

 ギルコはリッツに声をかける。

「ボクのこと?」

「そうそう。今、適当な紙がないので、この紙を使ってもよろしいでしょうか」

 ギルコは彼が持ってきた白紙の地図を見せる。

「いいけど、その代わり他の地図を用意してくれよ」

「ありがとうございます」

 ギルコはペコリと会釈した。

「――それじゃあ、投げますよ」

 ギルコはマハラドに白紙の地図を投げつけた。

「オオオオオオォォ!!」

 マハラドは雄叫びを上げながら、白紙の地図を切り刻む。

 すると、白紙の地図が急激に燃え上がり、みるみるうちにすすへと変わっていた。

「おお、すごいすごい」

 リッツは感嘆し、軽く拍手した。

「この火をまとう宝剣は我が一族の家宝であった。先祖代々から受け継がれた剣を売るのは心もとない」

「それなら売らなきゃいいのに」

 リッツは小さく言った。

「しかし、これからの冒険はかなり厳しいものとなろう。未開拓地方アドセラを冒険するにはパーティーが必要となり、お金も必要となる。残念ながら私は1ゴールドも持っていない。重々悩んだ末に、我はこの剣を売却することの決めた」

「要は剣を売ることですね」

 ギルコは間髪いれず、指摘する。

「いや違う! この剣はけして売るのではない! ただ預けるのだ!」

「預けるのなら預かり所にでも行ってください」

「預けるにはもったいない! 誰かに使ってほしい! 私は剣を使ってもらう新たなマスターを見極めることができるギルドマスターギルコさんに頼んでいるのだよ」

「ウチは質屋じゃありません」

「我が心の友を売るのだ。それを重々承知でいてくれよ」

 ギルコはマハラドから宝飾のまとう剣を手にした。


 先ほど燃やした紙が刃先についているのか、黒いすすが目立つ。

 宝石がまとっているというのに、輝きがとても鈍い。


「30000ゴールドの価値があろうと言われている炎の剣! 貴族が口から手を伸ばしてまで欲しがる貴重な品がこのギルドにやってきた!!」

 見世物小屋の司会者のように、ギルコを煽る。

「さあさあさあ! 炎の剣の値段はいかほどか!!」

 マハラドは急かすように大声で詰め寄る。


 ギルコは剣をざっと見ると、値段を言った。

「10シルバー」

 

 10シルバー=0.1ゴールド


「え?」

 マハラドは阿呆あほうの子のように聞き返す。

「10シルバー。10銀貨。10枚の銀貨」

 1ゴールドの一分の価値しかないことに、マハラドは愕然がくぜんとした。


 地面で伏せていたマハラドはバッと立ち上がった。

「そうか。あまりにも高価すぎて値段を付けられないと言うんだな!」

「すごく前向きポジティブ思考」

 リッツは腕組みをしながら感心する。

「悪いことを言った、すまない」

 マハラドはキリッと立ち、こうべを垂らす。

「30000ゴールドとは言わない。10000ゴールドを用意してくれ」

「10シルバー。10シルバー」

「ギルコさん!! それはあまりにも横暴だろう!! この剣は火の魔力をまとったまたとない宝剣なのだぞ!」

「確かにスゴくカスタマイズされた剣だと思います」

「カスタマイズじゃない。熟練の職人が精錬して作り上げた業物の逸品だ」

「素人の職人さんが笑いながら作った珍品の間違いじゃありませんか?」

「ギルコさん!! 我の持ってきたモノにケチを付ける気か?」

「ケチも何も付ける気はありません」

 ギルコが宝石を軽く触れる。

 すると、宝石はパラパラと落ちていた。


 あられのように、ひょうのように、色ついた塊がヒューと落ちる。

 カウンターに跳ねる宝石、くるくる回る。

 見る見るうちに、外装が剥げて、彩りが消える。

 宝石はガラスか、転がるだけですぐに傷を帯びる。

 踊ることをやめた宝石はいつしか輝きを失ってしまった。


「見てよ、ココを」

 宝石を失った剣の部位にゆびをさす。

「見てよ、この赤錆を」

 宝石にあった場所から腐食の進んだ赤錆が出てきた。

「ガラス細工をまとっただけのくたびれた剣、これって、ただの鉄の剣でしょう?」

 鉄の剣、それがこの剣の正体であった。


 マハラドは頭を抱えた。

「ウソだろう!! 我の剣がニセ物なんて!!」

 彼はこの世の終わりを見たようなカオをしていた。

「こんなものが我一族が守り通した宝なのかぁ!?」

 地面に両膝を立てながら、痛々しく声を荒げた。

「……マハラドさん」

 リッツはマハラドの近くに行こうとする。

 ところが、小さな手が彼を止める。

「やめてくれませんか?」

 ギルコの手はリッツの腕を掴む。

「相手の思うつぼです」


 ギルコの視線がマハラドへ向けられる。

「マハラドさん。そういう演技するのやめてくれません?」

「ギルコさん? 幾らなんでもその言い方は――」

 リッツはギルコに諭すが、リッツの腕を掴む手に力がこもる。

「言わないといけないの。ギルドマスターが言わないといけない」

 丁寧な物言いから普段の口調へと変わっていく。

 リッツはよほど怒っているのだなと思い、口出しするのをやめた。


 ギルコはリッツの手を離し、くたびれた鉄の剣を手にした。

「どうして、この剣を売ろうとしたの?」

「知らなかったんだ! 知らなかったんだ! 許してくれ! 許してくれ!」

 マハラドは地主に借金の延滞を懇願する農民のように、頭を下げる。

「知らなかったんだ――じゃない! 知っていたでしょう!」

「ヒィィィ!!」

「今まで使っていた剣を高く売ろうと、ガラス細工を宝飾させた剣を、魔法の剣ってウソをついたんでしょう!!」

「違う違う違うんだ! ギルコさんにウソなんてついていない」

「それはないわ。あなたはウソをついた」

 ウソと糾弾されたマハラドはギルコの目をそらす。

「どうやって火を使った? 剣に火をつけた?」

「それは――」

 ギルコの質問に、マハラドは言葉が出てこない。

 いや、何を言えばいいのかわかっているが、それを言えば、自分がウソをついたことを証明してしまう。

 そのため、マハラドは沈黙するしかないのだ。

「剣がニセ物なら、答えはカンタン」

 ギルコはマハラドに鉄の剣を差し向ける。

「あなたは魔法剣士、魔法を使う剣士だからよ」


 魔法剣士、魔法を使う剣士を意味する。 

 魔力を使う魔法使いと似た部類である。

 魔法剣士は剣術を学んだ上で、剣に魔力を込める魔法使いである。

 剣術が使える魔法使いというのが、オルエイザ大陸における魔法剣士の認識である。


「あなたは鉄の剣を媒体に、自身の魔力で火をつけた。地図が燃えたのは剣の力ではなく、あなたの魔力よ。剣先が紙に触れた時に火の魔力が発動して紙が燃えた」


 魔法剣士の力は魔法剣にある。

 自身の魔力を剣に宿すことで、魔法を発動させる。

 魔法剣には火炎剣、氷水ひょうすい剣、風嵐ふうらん剣、土塊どかい剣などがある。

 マハラドが使ったのは火炎剣、剣から火を出して剣先に触れたものを燃やす力である。

 剣で傷つけたものを傷口から燃やすことで更にダメージを与える。

 それが火炎剣――、魔法剣士、初級の技である。


「魔法剣を使う魔法剣士なら火炎剣なんてお手の物。炎の剣として売ろうとした魔法剣士は初めて見たけどね」

 マハラドは口数が少なくなる。

「それにしても珍しい。魔法が使うヒトが来るなんて、何処の国から来たの?」

「クリスト共和国」

「やっぱりね。魔法を使える人間を集めるのはいいけど、落ちこぼれとかは大切にしないからね、あそこは。あなたはそこから逃げるようにここまで来たのね」

 ギルコの言葉にマハラドは口を開く。

「……我のことがどうしてわかる?」

「どうしてって言われても」

「魔法剣士ということも! 国から逃げてきたことも!」

「そうね。カンタンに言えば、魔法を学ぶ人間はプライドが高いからかしら」

「……プライド」

「そう、特に、魔法剣士は魔法使いの落ちこぼれが再就職するような職だからね」


 事実、魔法使いは魔術のエキスパートである。

 だが、魔法使いになるには国が設けた狭き門を通らなければならない。

 その門をくぐれなかった者は、魔法使いと名乗ることができない。

 それに対して、剣士は剣術を学んだ人間であれば、すぐ剣士と名乗ることができる。

 それと同じように、魔法剣士も魔術と剣術を学んだ人間であれば、魔法剣士と名乗ることができるのである。

 魔法剣士と魔法使いは位が違う。

 国から公認されている意味で魔法使いの方が、位が高いのである。


 マハラドは落ちこぼれと言われ、怒りに満ちた表情を浮かべた。

 どうやら、マハラドは傷つきやすい繊細な性格のようだ。

「我は落ちこぼれじゃない! 我は天下の魔法剣士、マハラドだ!!」

「だから、そういう見栄みえを張ることをやめなさい。悲しいだけだから」

「否! 我は魔法剣士! マハラド・カシード!! 魔法剣を使う選ばれし剣士」

「魔法の勉強についていけなくなったヒトが剣士を選んだだけの職よ。魔術と剣術のハイブリッドなんて聞こえはいいけど、何もかも中途半端な職業」

「違う! 剣術も魔術も兼ね備えた完璧な存在!」

「剣士相手だと剣に負けて、魔法使い相手だと魔術に負ける。魔法剣だって使い手の魔力に耐え切れないから武器はすぐ老朽化する。冒険家がパーティーを入れると役に立たないし、コストがかかる」

「我は! 我は!」

「あなたは中途半端な人間だけど、家族から育てられたプライドだけは一流ね。自分は魔法剣士って言うけど、わたしからして見れば、エリート街道からはみ出たただの弱虫よ!」

 辛辣な言葉を並べられ、マハラドは地を這う虫のようにガクリと倒れる。

「大方、プライドに負けて、一旗揚げようと目指して旅したけど、冒険するのに疲れたと思う。だけど、そのまま家に帰ったら、家族から色々と言われる。あなたがこの剣を売ろうとしたのは、騙したお金を家へ持って帰ろうとしたワケね」

 マハラドから涙が溢れる。

「今のあなたはこの剣と一緒、メッキが剥がれた剣そのものね」

 嗚咽おえつも出てきた。

「一世一代の大勝負だと思ったけど、相手が悪かったわね」

 ギルコは床の木目を見ているマハラドの首根っこを捕まえる。

「そんなウソじゃ、ギルコさんは欺けない」

 マハラドの心はすでにボロボロであった。 


 リッツはギルコに畏怖していた。

 目の前にいる少女は今までにあったギルドマスターよりも厳しく、それでいて恐かった。

「魔術もろくに扱えないくせに、無理に火炎剣を出したことで鉄の剣が錆びたのね」

 アイテムを鑑定するその瞳――、

「後から付けられた宝飾。多分、鍛冶屋が作ったものかな。イヤらしいぐらいにくたびれているわ」

 柔軟性のあるロジックで答えを導く推理力――、

「宝石はガラス細工。クリスト共和国の屋台で売られていたものかしら」

 知識も含蓄も豊富で、向かう所敵なしか。

「ホント、もったいない。鉄の剣なら中古でも50ゴールドで売れたはずのものをたった1ゴールド、いえ、10シルバーで買い取ることになるなんて」

 ギルドマスターギルコ、冒険者にとって、もっとも交渉したくない相手であった。


 親が子供が選ぶことが出来ないように、冒険者もまたギルドマスターを選ぶことができない。

 できれば、交渉したくない。さっさと帰りたい。

 残念ながらリッツにはお金がない。冒険者がお金を手にするにはギルドに行かないといけない。

 リッツはイタズラ書きされた地図をカノジョに売らなければならないのだ。


 マハラドは鉄の剣に鑑定しているギルコを尻目に店から出ていこうとする。

「何処に行くの?」

 ギルコは床がきしむ音でマハラドが出て行くことに気づく。

「まだ鑑定は終わってないわよ」

「これ以上、何を鑑定すると言うんだ!?」

「鉄の剣が使えるかどうか」

「10シルバーって買い取るって、言ったんだ! それでいいだろう!!」

 先ほどの高慢な態度は何処へやら、心のへし折れたマハラドは口の悪い輩となる。

「良くないわよ。鍛冶屋で再度叩きなおしてもらえれば、価値がつくかもしれないし」

「もういいだろう!! 守銭奴が!」

「悪いわね、守銭奴でも人間よ」

「人間? オマエなど、そんな血が流れていない!!」

「そんなあなたはか弱い女性を騙そうとして、ニセ物の剣を売ろうとしてお金をふんだくろうとした」

 マハラドから言葉が出てこない。

「全国のギルドに言いふらそうかしら、あなたのその首は幾らになるかしら」

「もういい!」

 マハラドは大声を上げ、ギルドから出ていこうとする。

「待って」

 ギルコはカウンターの引き戸からお金を取り出す。

「10シルバーよ。持って行きなさい」

 マハラドはカウンターに置かれた10枚の銀貨を手にすると、ギルドから出て行った。


 リッツとギルコだけがギルドに取り残される。

 沈黙の空気に飲み込まれる前に、リッツはギルコに声をかけた。

「おたく、厳しいね」

「あなたも気づいた?」

「とっくの昔に」

「そう?」

「あの剣は鉄。刃先を見ればわかる」

「へぇ~」

 ギルコは興味深そうにリッツの話を聞き入れる。

「魔導具なら魔導石を入れる場所がないとおかしいし、ムダにガラス球を飾っていたからニセ物だとわかる」

「そうそう。って、どこまで知ってるの?」

「知ってて悪い?」

「いや、ギルドマスターだから知っていてもおかしくないか」

「そうだけど、私には力があるの」

「力って?」

「審美眼」

「しんびがん?」

「わたしには生まれ持った審美眼がある。この審美眼でアイテムがニセ物かどうかわかる」

「じゃあ、あの剣を見た瞬間で気づいたの?」

「うん。確証を得たのは、彼が能書きを言ったところでね」

「確かにあんな見得みえの切り方はないな」

「冒険者は、普通、価値のあるアイテムを売るのなら、黙って売るはず。魔導具なら、特にね。鑑定人がスゴく価値のあるアイテムだとわかって、ビックリしたカオを見るのが好きなはずよ」

「そうだね、冒険者はギルドマスターを驚かそうとして、したりカオをするね」

 ふと、リッツはあることに気づく。

「どうして、審美眼のことを話したの?」

「冒険者にはウソをついてほしくないから能力について予め説明している。別に、自分の持っている力について、自慢するわけじゃないわ」

「ああ」

「だけど、自慢か何かだと思って、その能力を信じないヒトが多いの。こうしてニセ物を売りつけようとしているのはそれ。おかげで、ああ言わないと、わかってくれなくて」

 ギルコが冒険者を追い詰めるほどの罵倒を言う理由がわかった気がした。

「そういえば、あなたの名前、聞いてなかったわね」

「リッツ」

「あなたは何を売ってくれるの?」

 まさか、いたずら書きの地図とは言えない。

「地図、ただの地図だよ」

 リッツはそう言いながらも地図を持つその手は若干震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ