ウッカリ ニハ チュウイ シテネ
扉の向こう側…そこには、リンゴの木と…リンゴの絵があった。
それ以外には何もない。
ただの木。
イヴは唇の所にいた。
「はら へった くいもの よこせ」
小さく口をモゴモゴさせると…
「その くいもの よこせ」
…匂いで感知したのか?
イヴは木のリンゴをあげた。
シャグシャグ…コリカリ…。
「うまい これ」
少しだけ嬉しそうだ。
「おまえ きにいった こことおす」
イヴ「良いの…?」
「おれの くちのなか くぐっていけ」
イヴ「…間違って食べないでね。」
イヴは、口を通って違う廊下へと出た。
その廊下は…ギロチンの絵が何枚も飾られていた。
進む度に、ドンドンあがって行く。
上がって…上がって…上がって…上がって……。
最後の絵には刃が書かれていなくて…。
――ジャララララ……ガシャン!!!
本物のギロチンが落ちてきた。
イヴはギリギリでかわして……階段を降りていった。
廊下を歩くと、何かが横切って行ったのが見えた。
だが、イヴがその辺りに来た時には既にいなかった。
『息吹』と言う絵を見つけたが…良く分からない。
イヴは、扉をくぐって行った。
三つ並んだ作品があった。
左から順番に…『うん』、『??模様』、『あ』と言うらしい。
…何模様だろう??
その右奥には『心の傷』、『赤い服の女』があった。
そして他の場所へ行こうとした瞬間…
「…待って……その薔薇……私に頂戴ぃぃぃぃ!!」
赤い服の女が追いかけてきた!
イヴは何とかかわしながら、鍵を拾った。
そして、扉の中へと入った。
扉の向こうには…本棚が沢山あった。
調べようとすると、扉が激しくノックされた…入って来れないのかな?
取りあえず、近くにあった本を一冊抜き出した。
『うごくえほん 作/絵 XXXX
“うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』
突然、お話が始まった。
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「お誕生日 おめでとう!」
「ありがとう!」
「今日は あなたのために ガレッド・デ・ロワを 作ったの!」
「なにそれ?」
「このパイの中にコインが入っていて…」
指差したパイは極々普通に見える。
「食べたパイの中にコインがあったら…」
小さいジェスチャー付きで教えてくれた。
「その人は幸せになれるのよ!」
「おもしろそう!」
「でしょ?」
ピンクの子が、包丁を取り出した。
「じゃあ 切り分けるよー」
「さぁ 好きなの選んで!」
パイは綺麗に四等分されている。
「いただきまーす!!」
「もぐもぐ…」
「あっ…!」
食べている途中で、水色の子が声を上げた。
「どうしたの?」
「なにか 固いモノ… 飲み込んじゃった!」
「あはは うっかりさーん!」
「きっと コインだ!」
「どうしよう…」
「コイン小さいから 大丈夫よ」
そう言いつつ、ピンクの子が皿を持ちあげた。
「じゃあ 片付けてくるね!」
「ママ どうしたの?」
「書斎のカギを 知らない?」
「しょさいのカギ? それならいつも そこのテーブルに…」
母親が避けた先にあったテーブル…そこにはカギは無かった。
代わりに、金色のコインが一つだけ…。
「……あれ? コインだ…… このコイン たしか…」
ピンクの子は思い出した。
「パイの中に いれたハズなのに… もしかして……」
「どこ行ったのかしら… お父さんに 怒られちゃうわ」
「どうしよう……」
僅かに力が抜け、皿が傾いた。
当然、その上に置かれていた包丁も落ちて…
――カタン…。
小さな音が響いた。
「わたしってば うっかりしてたわ」
――何かを切り裂く音が聞こえた。
「カギ みつけたよ!」
ピンクの子の、可愛らしい囁き声。
「今ドア 開けるね!」
血みどろの子は、幕に引っ込んで行った…。
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――カチャリ。
カギの開く様な音がした。
近くのドアのドアノブを回すと…開いた。
イヴは、そこへ進んで行った。
?? side
ドアは、開かなかった。
??「おかしいな?……あれ…さっきまで…ここ…青く無かったっけ?」
彼が見下ろしている地面が、赤く染まっていた。