新しい仲間
主人公のモデルの人は、リアルでは、セレーネーさんと再びこころを通わすことに成功していません。
せめて小説の中くらいは幸せになってもらうことにし、途中経過は省いて、今回いきなり、セレーネーさんといっしょに冒険の旅に出ることにさせていただきます。
セレーネーが学院の文芸誌に自伝をのせた。
相当なつらさをしょってきた人だと知った。
いまの自分の力では、セレーネーが必要とする支えとなる力量がぜんぜんない。
第六話でも述べた、速やかに冒険者としての自分を立て直したい。
そうしたら、セレーネーが必要とする項目の一つか二つくらいは担えるようになる。
自分にその準備ができたとして、セレーネーが頼ってくれるかどうかは、また別の問題であるが。
とにかく自分を整えることに全力を挙げるしかない。
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それから五年がすぎた。
冒険者たちの間では、「牧夫メロスの脅威」がささやかれていた。
「牧夫メロス」とはいったいだれなのか?
実在の人物なのか?
なにかの作戦のコードネームなのか?
確度の低いウワサだけはいく種類もながれてくるが、詳細は全く闇の中だ。
ヒツジ飼いも、「メロス」という名の持ち主も、このマグナ・グレキア諸国ではきわめてありふれた存在だ。「ヒツジ飼いであるメロス氏」も、各国ごとに、それぞれ十数人はいるだろう。
このウワサがひろまり初めてから、各国は「ヒツジ飼いであるメロス氏」たちに一斉に事情聴取をおこなった。デュオニス王のお膝元であるシラクスでは、読者もよくご承知の、石工セリヌンティウスの親友のあのメロスも取り調べを受けたが、なんの情報もでてこなかった。。
黒の陣営に属するものたちは、名君デュオニスを脅かすなんらかの陰謀だと考え、備えを固め始めた。
白の陣営のものたちは、邪悪な独裁者による弾圧jを指すと考え,さらに自分たちの行動を秘匿した。
白の陣営と黒の陣営の暗闘がはじまった。(続きます)