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マグナ・グレキア諸国と学院

今回は、おもに物語の舞台の説明です。

 私は「賢者」。いま、マグナ・グレキア諸国の中心都市シラクスの町のはずれにある「学院」に居候している。


賢者ったって、自分で自分を賢いと思っているわけではない。そういう「職業(クラス)」があるんだよ。ほら、自分や他のパーティ(PT)メンバーに、はげましのスキルをかけてやるクラス。


他のクラスには、剣や斧、メイスをぶんぶん振り回して肉弾戦を行う「戦士」、5種の属性の魔法を駆使して遠距離攻撃する「魔法使い」歌や楽器演奏で味方のHP(体力・ヒットポイント)やMP(精神ポイント)を恢復したり、人形や肖像画をつくって味方に白魔術、敵に黒魔術をかける「アルティスト」などがいる。「賢者」のスキルは、APやMPの総額を増やしたり、他のPTメンバーがつかえるスキルの種類を一時的にふやしたりできる。ありがちのマンネリな設定だから、これ以上、詳しい解説はいらないだろ?


「学院」というのは、マグナ・グレキアの諸国が共同で設立した学校で、マグナ・グレキア全土からあつまった勇敢な若者たちに「冒険者」としての訓練をほどこし、優れた戦士に育てあげることを目的としている。冒険者たちは、「クラス」を選び、仲間とパーティ(PT)を組んで数々の「クエスト」を消化しながら経験値を挙げていく。学院生は、クエストの実行にあたり、入門当初は学院から手厚いサポートをうけ、レベルがアップしていくにつれ、次第に自立して行動できるようになっていく。

 

マグナ・グレキアというのは、シケリア島と、対岸のカラブリアに分布するヘラス人の三十いくつかの都市国家(ポリス)をまとめて呼ぶときの名前で、イタリア半島の原住民のエトルリア人が名づけた呼び名だ。


シラクスは、シケリアの東岸に位置するそんな都市国家の一つで、ヘラスのことばではホントは「シュラクサイ」というのが正しいんだけど、この文章を読んでくれる奇特な諸君の多くは太宰治の小説によって「シラクス」の名前のほうになじみがあるだろうから、以下この名前をつかう(ただし、シケリアは、おなじように「シチリア」の呼び名のほうが有名なんだが、この呼び名はアメリカやイタリアのマフィアの首領(ドン)たちの故郷(ふるさと)というイメージが強すぎるので、こっちはつかわないことにする)。

 

シラクスはデュオニス王が位についてから、急速に勢力を拡大した。彼は知略と武勇にすぐれた王で、まずマグナグレキアの諸国を服属させたのち、シケリア島のフェニキア人と、イタリア半島のエトルリア人の征服にとりかかり、大帝国を築きつつある。ヘラス本国の諸国家を制圧したアレクサンドロス大王がマグナ・グレキアに送り込んだマケドニアの大艦隊を撃破したのも彼の功績だ。しかしながらデュオニスは、マケドニア軍を撃退したころから、急に猜疑心をふかめ、王族や側近を次々と粛清しはじめた。


 読者諸氏も、太宰の小説でみたよな?

 デュオニスがシラクス市内で戒厳令を布告し、疑わしい者たちを手当たり次第に弾圧し始めたことを。

 まず、妹婿。そして嫡男の王太子。妹。妹の子供たち。王妃。忠臣のアキレス・・・。そして有罪・無罪の人々を次々と逮捕・処刑し、武力と恐怖によってシラクス市を暗黒の支配下においた。


 デュオニス王を打倒しようという、心きよらかな人々の活動は、困難をきわめた。

 邪悪な恐怖の独裁者が誕生したことについて、学院は、かならずしも敏感ではなかった。

 その原因は、まず、学院内でシラクス出身者が占める割合がすくないこと。

 すでに述べたとおり、学院はマグナ・グレキア諸国の共同設置で、理事会も教授会も、院生たちも、シラクスの出身者はむしろ少数にしかすぎない。シラクス王デュオニスが自国の側近や市民にたいして開始した恐怖政治を、まだ他人ごとのように眺める空気がある。

 つぎに、デュオニス王による征服活動への評価。シラクス市によるマグナグレキア諸国の征服について、征服された諸国の人々は、かならずしも「デュオニスの侵略はけしからん!自由と独立の回復を目指して戦おう!」とはなっていない。シラクスに従属することになった各国では、政治家や宗教界、商業・産業界など角界のそれぞれで、デュオニスの引き立てによって旧来の支配階層に取ってかわることができた者たちが多数いる。マグナ・グレキア世界を統一した英雄として、むしろ彼を賛美する人々さえ、かなりの数をしめているのだ。


 学院はデュオニスの本拠地であるシラクスにあるので、理事会も教授たちも院生たちも、内心がどうであれ、全員が、公式にはデュオニスに万歳をとなえ、徳の高い聖人、信仰の篤い厚徳の人とたたえることを余儀なくされている。だから、冒険者になろうと学院の門を叩いた若者は、まず、ひとりのこらず「デュオニス万歳」をさけぶ教授や先輩院生たちにむかえられることになる。


正義をもとめる冒険者は、まず最初に、いきなり命がけで、だれが「正義派(反デュオニス派)」で誰が「デュオニスの(イヌ)(親デュオニス派)」であるかを慎重に見定めていく必要があるのだ。

第2回のタイトルを改題しました。

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