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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

好きと言えたら良かったのに

作者: moco
掲載日:2026/06/07

どうしてだろう。

私のこの感情を表現する方法がない。行き場のない気持ちが溢れてしまう。

だけど、そんな想いを彼女に向けることも辛いだけ。だからこの想いを伝えることはどれだけ先にもない。一生、この想いに蓋をする。



「ねぇ、先輩。今日一緒に行きませんか?」

手にグラスを持つ動作をしながら、あの子が私を誘ってくる。ああ、いつものように飲みに行こうと誘っているんだと気づく。

あの子になんて答えられるか。

「今日??明日も仕事があるじゃない。それに、先週行ったばかりよ?流石に続けすぎじゃないかしら。」

「えーー、、、。でも先輩、私、もう耐えられないんです。。。」

悲壮感の漂う表情(かお)をしながら、私に訴えかけるあの子。だけど、何がそんなに耐えられないのか?

今月は納期もないから急ぐ仕事もそうそうない。だから、余裕を持って進められている状況のはず。。。

「急に耐えられないって、どうしたの?もしかして、私が気づいていないだけで何か仕事を抱え込ませていたのかしら??」

公私混同と言われても、あの子が曇った顔をすることが私は耐えられなくて、話を聞く前から全力で前のめりになって聞き出していた。

「いえ、耐えられないのは仕事じゃなくて。今もゆっくりさせてもらってますし、先輩も優しいから、何も抱え込むこともないです。」

「そう、それは良かったわ。それなら。何が耐えられないの??」

「あーーーー、、、。」

少し目をキョロキョロと泳がせながら言いにくそうにするあの子。そんなに言いにくいことを言わせるのかと思うと、こちらから聞いてはいけなかったかと心配になった。

だけど、最初に‘耐えられない’と進言してくれたのだ。何かあるのだろう。

この子の先輩として、円滑な業務の遂行のためには、ちゃんと話を聞く必要だってあるのだ。

決して、私欲のために言うのではない。

「そんなに言いにくいのなら、今言わなくても良いわよ?後でちゃんと聞くから、一度整理しなさい。それに、相談があるのなら、時間を取るから、今晩一緒に飲みに行きましょう?」そう、言っていた。


いつの間にか、あの子の誘いを断っていたのに、自分からまた誘っている。本当に、いつもこの子の行動に翻弄されて自分の思うままに動いてはいられない。

この子にその気がなくとも、まるで手のひらの上で踊らされているような感覚だった。



「へっ?良いんですか??先輩。用事とか、予定とか、何かあったんじゃなかったんですか?そこまでしてご一緒しなくて良いですよ?」

目を白黒させながら私に再確認する彼女。むしろ、自分から誘っておいて、今になって私の予定を心配するとは、自分都合にみえて、そうでもない。気を遣える優しい子。絆された私は、彼女の言動も行動も、全て肯定的に見えているのかもしれない。

それでも。

そんなところも、気まぐれな猫のように思えるから。全部、好き、なのだろう。

友のように近しく、私へ接することもあるけど、先輩後輩と線引きはしているから、公私混同はしない。人に予定があればちゃんと一歩引く。一見普通のことに感じるけど、仲良くなればなるほど、境界が曖昧になっていく。

この子の良いところは、それをドライにもちゃんと分けていることだ。どれだけ軽口を叩いても、その境界は超えてこない。

だから、この子の全部に惑わされる。全ての行動が、大仰で、目に映る。

天然の策略家。そんな思いに駆られてしまう。


「良いわよ。予定があるわけでないし、貴女が頻繁に行っても気にならないなら。それに、最初に誘ってきたのはそっちでしょう?それに肯定しただけよ。」

「本当ですか??いいんですね?やったーー、、」

パッと、花が綻ぶような笑顔をしてくれる。愛らしい喜び方にこちらも嬉しくなる。

それに、勤務時間ということもあるだろう。小さくガッツポーズをしている姿も、見ていて癒しだ。

だけど、そんなことは置いておいて。。。

どうしたものか。本人は悩みがあって誘ってくれているというのに、仕事を終えたその後が、私も楽しみになってしまった。

それを表情(かお)にも見せず澄ましながらパソコンに向かうのは何と難しいことか。だけどニヤけるなんて、彼女に好きだと言っているようなものだし、端からみてもいい歳した大人が恥ずかしい。だから、周りに見られないよう、顔を少し下げた。





「先輩、私終わりましたけど、どうですか??」

「ええ、私も今終わったから、片付けるわ。少し待ってくれるかしら??」

「はい、大丈夫ですよ。」

ニコニコと、笑顔を振り撒き私を待ってくれている。それだけで、私も顔が崩れそうになる。だけどそんなことはおくびにも出さずに書類を閉まって机を綺麗に整える。

「あれ?これから2人飲みに行くの??良いなー。私まだ終わらないー。」ぐでっと体を机に押し付けながら同僚がぼやいている。だけど、ホッとした自分がいる。これで終わっていたら、一緒に行かないか、誘う必要があったかもしれないのだから。

「ええ、この子とお話しようと思って。今度は貴女も一緒に行きましょう?」

「え、いいのー??じゃあ次の時は私も誘ってー」「お。それなら、俺も誘ってくれ。」別から気づいた男性社員からも声が掛かってきた。

「はい、せっかくですので、次回は皆さんとご一緒させてください。」あの子が笑顔で声を掛けている。少し、モヤモヤしてしまう。私と2人きりばかりだと、良いものでもないだろうから、他にも誘うのは良いことだけど。。。

私が彼女との時間に、特別なものがないことを、まざまざと見せつけられているみたいだ。

それが、何だか寂しいのだ。

「それじゃ、次の機会にまた。お先に帰らせてもらうわね。」「あ、私もお願いします。それでは、お疲れ様でした。」ペコリ、頭を下げる姿も可愛い。なんて見てしまう自分が恨めしい。

「おう、お疲れ様。」「はーい、お疲れ様でしたー」




ガヤガヤ……ガヤ…

「どこのお店にしますか??」

「どこでも良いわ。貴女が食べたいものを選んで良いわよ。」駅前の繁華街まで出てきて、どこに入るか相談する。私は食べたいものというものがないから、彼女に全て任せてしまおうとする。

「もうー。先輩、いつもそればっかりですね。私だって、先輩が食べたいもの、選んで欲しいんですよ?」

プクッと脹れ面が少女のようで、まるで学生のデートみたい。なんて、夢想する。

「ごめんなさい。あまり食べたいものとかないのよ。だから、貴女が食べたいもの、選んでいいのよ?」

「むー。。。。じゃぁ、気分的にガッと飲みたいので、個室のある居酒屋、選びましょう??」

そう、首を傾げ私に確認する彼女。そんなに飲みたいなんて、何かあったのだろうか?心配になるが、彼女がそれを望むなら、私はそれに従うだけ。

「ええ、いいわよ。あそこの店、入りましょうか?」

「はい、大丈夫ですよ。先輩、行きましょう??」



グッグッグッグ。。。

喉を鳴らしながら一気に飲み干す彼女。大分、ガツンとくる光景だが、何故急にこんなに自棄っぱちのような、行動をしているのだろう?仕事も辛くないというが、やはり、何かプライベートでもあったのだろうか??いや、私が詮索していいことなのだろうか??

そんな詮無きことをグルグルと回転させている。だけど、まだ少し、他愛もない時間を過ごしたいと思ってしまう。だから、本題は棚に上げてしまった、、、

「貴女、美味しそうに飲むわね。前もそんなにいい飲みっぷりだった??」

「えー、、、、どうでしょう?最近、他の担当とか後輩と飲むこともあったから、変わったんですかね?」

なんて、言ってきて、しまった。墓穴を掘ってしまったと、自分に呆れてしまっていた。

だけど彼女は気づかないから。私は、彼女の話にのるフリをして話題を変えた。

「そう。貴女と飲むのはあまりないものね。だから気づいてなかったのかしら?むしろ、一緒にランチを行く方が多いものね。」

「そうですね。先輩、ランチはよく誘ってくれますけど、夜はあんまりないですもんね。。。」あぁ、しまった。これも、失敗だったか。なんて、思ったけど、そういうことでもなかったみたいで。

「でも、先輩とご飯に行くと大抵私が選ぶから、お酒の趣味だけじゃなくて、先輩の好きな食べもの、今だによくわからないんですよね。」

むしろ争点が変わったみたいで安心した。

「そ、そう??仕事場の近くって、飲食店多いじゃない??どこに行けばいいか、迷うもの。それに、貴女が食べたい物食べる方がいいでしょう??育ち盛りなのだから。」そう、歳の差を揶揄うように言うと。

「もー、、、私先輩と3歳くらいの誤差ですよ??そんなに変わりませんよ??」

「大きいじゃない。小学生と中学生の差はあるんだから、、」なんて、笑って言い返す。

「んー!先輩!!屁理屈ですよ!」膨れた顔が可愛くて、愛しいなんて思うけど、こんな軽口が言えるのは、何時までなんだろうと、カウントダウンを考えてしまう。なんて、黄昏ていたからだろうか。

「先輩、何を考えてますか??」ジト目で彼女が、私を不審がっている。

「大したことではないわよ。貴女の膨れ面が面白いなんて、思ってないわよ?」なんて、誤魔化して。

「先輩はすぐ誤魔化すんですからー……!」ハハハッて、2人で笑いあって、最近ハマっていることとか、面白かったものとか、他愛もない話をして穏やかな時間を作っていった。




「それで、急にどうしたの??貴女がこんなに飲みたいなんて、あまりないじゃない?」

先程も思ったが、ご飯の誘いは受けることはあるが、飲みに行こうと誘ってくることは、あまりない。結果的に、飲むことはあっても、飲むことを目的に、誘ってくることはないのだ。

「あー。。。っと。。。」キョロキョロと周りを見渡しながら、言いにくそうにしている彼女。場を和ませたと思ったが、それでもまだ、そんなに言いにくいことなのだろうか?

だけど、彼女が耐えられないことがあるのなら、彼女の負担を軽くしたくて、問題を、話を聞きたいと想ってしまう。

彼女の辛さは、私も耐えられないことだから。

「えっ、と、、、そんなに、大した話でもないんですよ??ただ、ちょっと、最近気を張り詰めすぎたといか、頑張りすぎたというか、、、何というか、、、今って、先輩とのチーム作業はないですよね??」

「え、えぇ、そうね。貴女も一人前になって後輩も出来たのだから、むしろ今は貴女が指導する立場になっているでしょう?だから、心配することもないから、任せっきりになっていたのかもしれないわね、、、ごめんなさい。結果的に貴女に負担を強いてたみたいね……?それが耐えられなかったのよね??」

まさか、こんなことに気づきもしなかった自分に眉間に皺を寄せながら、あの子に謝罪をしたけれど。あの子ったら。

「あ、違います!確かに、責任も増えて、後輩も出来て、仕事も1人で判断することも増えたけど、むしろやり甲斐があるというか。。。頼られてるって、張り切ってしまうというか、、、仕事は充実してるというか、、、いえ。だから、なんですかね??」

少し眉尻を下げた彼女が、一思いに伝えてくる。

「本当に、仕事で悩みはないんです。先輩たちに任せてもらっているっていうやり甲斐もあるし、後輩が育っているっていう、達成感もあるし。。。だけど、昔みたいに、先輩と、()()()()()()()()みたいな仕事がなくなって、先輩が、どんどん離れている気がして。少し、いえ、大きく自分の道しるべが遠のいてしまったような、穴があって、、、、仕事、というよりも、これからの人間関係への漠然とした不安に耐えられない、といったところですかね??」

「えっ。そ、それって、、、、い、今も、私と一緒に働いている、でしょう?それが、遠いの??」

もしかして、この子は、私とともにいられないことが、寂しいのだろうか?なんて、勝手に解釈して夢想してしまう、、、

「あっ!!いや!ちが!!」

すごく焦ったようなあの子の言葉に、少し傷つきながらも、わたしは。

「そ、そうよね。人間関係が変わると、不安にもなるわよね。今後がどうなるかなんて、今の段階では何も分からないんだから、、、それでも、貴女が耐えられないというなら、私は貴女を肯定するから、何時でも頼っていいのよ?」

そう、自分から言い訳をして、あの子の味方だと見栄を張ってしまう。確かに味方にはなれるだろうが、()()()がきたら、見ていられなくなるだろう。この子との関係が崩れた時、私は私でいられなくなって、上手くできるかはわからない。。。味方であっても、側にいられるわけではないのだから。

「先輩。。。ありがとうございます。私、先輩がどんどん遠い存在になった気がして、側にいられなくなる気がして、少し焦ったのかもしれません。だから、先輩ともっと、話したかったのかもしれません。」

なんて、可愛いことを言ってくれる。こんな、嬉しいことはないではないか。

あぁ、どうしてくれよう??ここで言ってしまうのは、この子との時間をぶち壊す所業である。分かっていても、愛しいと、好きと言う感情が、溢れてしまう、、、なんて彼女は罪なのか。私の感情をかき乱す天才なのか??

それでも、()()のままであってほしい。関係を壊してしまいたくない。この子が、この子の次に動き出すまで。どうか、そのままの関係でありたいから、、なんて、都合の良いことを思っている。

【好きよ】なんて、ここで言えないことがもどかしい。。。

「そう、思ってくれていたなんて、光栄だわ。貴女が私を信頼してくれているのが分かるわ。だから、私も貴女を信じている。それで仕事も安心して任せられる。私は、貴女のその頑張りに報いたいと思っているの。だから、今後も何か困るというなら、頼ってほしいわ。私は、貴女を何時でも助けるわ?」なんて、気障なことを言っていた。本当に、助けられるかなんてわからないのに、私はなんてズルいことを言っているのだろう??そう、自問して。

「……ありがとうございます。先輩が、いつでも私のことを助けてくれるって、経験則で知っていても、今言葉にして聞くことができて、改めて嬉しいです。。これからも、仕事頑張って、続けますね?そしたら先輩も、私を頼れるようになりますもんね??」なんて、無垢なことをいうのか?この子は私をどうしたいのか?そう思うくらいは許してほしい。なんて、心の中に留めていれば良かった。

「なんて、可愛いことをいうのよ?私も、貴女のために、、、あ、貴方の頼れる先輩であるために、努力もするから、困ったことは、いつでも頼って?クレームだって、引き受けるわよ??」危ない、あの子のためになんて、贔屓みたいなセリフ、言いかけてしまった、少し修正しておちゃらけてみたけど、大丈夫だったろうか??なんて考えていたら。

「先輩、ありがとうございます!私も頼られる後輩を目指しますから、おあいこですね!」気づいてないのか、あの子が可愛く笑いながら、まとめていた。

「えぇ、そうね。これからも、よろしくね?」

「はい!!私も、お願いします!!」

あぁ、キラキラの笑顔が眩しい。可愛い、好きだ、大好きだ。ずっと、その笑顔を独り占めしたい。

そんな暗い感情が押し寄せるけど、この気持ちは、あの子にとっての重荷にしかならないから、ずっと、蓋をしてしまう。。。。




先輩、いつもいつも、私に嬉しい言葉を、欲しい言葉をかけてくれる。そんな先輩が、大好きで、大好きだけど、この愛しいという気持ちに全く気づいてもらえない。だから、辛くなってついた言葉は、「耐えられない。」

何に耐えられないのか、どう、耐えられないのか、先輩を心配させてしまった。。。飲みにまで誘ってもらって、少しの嘘を混ぜた相談に乗ってもらって、、、いつでも味方だって、嬉しい言葉はいっぱい、いっぱい、聞けたけど、本当に欲しい言葉は貰えない、、、

それはそうだ。私から直接言っていないのだから……

だから、自業自得。私の本当に欲しい言葉は、先輩からは一生もらえないんだろう。

だって、私の欲しい言葉は、言えないほどに、重すぎるから。「愛している。ずっと側にいたい。一生が欲しい。自分だけのモノにしたい。」こんな、重い気持ち、絶対、先輩に知られたら引かれちゃう。手放しで愛してもらえない感情なのだ。だから、私は私の気持ちに気づかないふりをする。。。


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