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鎖空  作者: 高橋と喪服
3/14

プロローグ カラスの始まり

 ばぁばが、死んだ。一週間前の話だ。




 その前の晩、ばぁばは珍しく夜の散歩に出掛けなかった。今思えば、それが徴候だったのだろう。


「ねぇ、カラス」


 呼ばれて、振り向く。ばぁばは、温和な目をこちらに向けて、眠たそうな声で続ける。


「おまえ、希望ってどんなものだと思う?」


「……よく、わかんない」


 少し考えて、何も浮かばなかったので、素直にそう言うと、ばぁばはそうかいとからから笑って、更に続けた。


「あたしはね、カラス。希望ってのは、絶望って落とし穴の隣に有るものだと思うんだ」


「……どういうこと?」


「わからないかい? そうかい」


 わからないかい、ともう一度言って、ばぁばはまたからからと笑った。


「ねぇ、どういうこと?」


 ばぁばに近付いていき、その暖かみのある茶色い瞳を見つめる。いつもなら、こうすれば仕方ないねぇ、と言いながら答えをくれていたから。


 でも今度は何も言わなかった。


 ばぁばは黙ったまま、私と見つめあい、一際優しく笑ったかと思うと、急に私を抱き寄せた。


「ゎぷ……。ばぁば、苦しいよ」


 嬉しさを隠しながら、私はばぁばにそう言った。離さないで欲しいなと思いながら。


「……ぅ、く……」


「ばぁば?」


 ばぁばの体が、震えていた。


 どうしたのかと呼びかけるも返事はない。ただ強く、抱き締められるだけだった。


――――そのまま、私とばぁばは寝てしまった。ただ私が起きても、ばぁばが起きる事は、なかった。

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