プロローグ 春葵天嘉の始まり
注意。
この作品の特性上、主人公が多く、何度も視点が移動します。基本は部ごとの移動に留めますが、一部の間に何度も移動する事もありますので、ご了承ください。
俺の世界が、決して褒められたものではない事は知っていた。俺の生き方が、決して胸を張れるようなものではない事を、俺は知っていた。
罵られる様な行為は勿論、眼を背けられる様な事もやった。生き死にに関心を失くしてしまう位に、命を軽く扱ってもいた。
しかし……その事を後悔していないかと言われれば、それはきっと嘘になる。こんな生活に身を堕としてから、幾度となく自分が犠牲にしてきた人々の幻影に追われてきた。振り払う事の出来ない、悪夢に。逃れる事の出来ない、責任に。
過去を省みる事はしなかったが、常に過去に取りつかれていた。過去が、ゆらゆらと俺の周りに漂っていたのだ。
言い訳は出来ない。だが……償う事は、出来るんじゃないか?
赦される事はなくとも、償い続ける事は、出来る筈だ。
――その思案に行き当たった三日後。俺は世界で最も法が確立され、且つ世界最大の宗教『グリゲウス教』発祥の都、『聖都』へ向かう事を決意した。
罪を、償う為に。