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0. 伝説の黎明


 血統も才能も無い少年が憧れと信念を貫くために、血の滲む努力で強くなっていきます。序盤は割と長めなのでご承知ください。



 人は生まれながらに魔力の総量が決まっている。日常生活や仕事をこなす上での最低限の魔力を人は備えている。十歳ごろから詠唱をすれば魔術が発動でき、成長とともにより効率的に魔術を発動できるようになるのが一般的だ。


 かつて魔王を討ち倒し世界を救ったとされる勇者は途方もない魔力であったと歴史に刻まれている。


 クレイ家に生まれたアルトス・クレイは生まれながらに魔力を持っていなかった。彼がそれを知ったのは十歳の時だった。周囲の友達は成長とともに少しずつ魔術の兆しを見せ始めていた。


 小さな火を灯したり、風を起こしたり、水を生み出したり。アルトスは何一つ出来なかった。どれだけ魔術を詠唱しても、どれだけ魔術書を読んでも出来なかった。


 「魔力がありません......」


 魔力測定をする教会の神父が痛ましそうな表情でアルトスに告げた。この一言は決定的であった。


 魔王を討ち倒した勇者の伝説に憧れていたアルトス少年の夢は十歳の時にあっけなく終わりを迎えた。それでも、勇者への憧れを止めることはできず魔術書を読み漁った。


 アレキサンドラ学園中等部に進学してからは、周囲の友達が自分に向ける視線は哀れみか蔑みだけになった。一部の者からは当然のようにいじめを受けるようになった。特に勇者の伝説が書かれた本を読んでいると


 「魔術の使えない能無しが夢を見るな」 


 そう言われるたびに心の奥がちくりと痛んだ。もし魔術を使えるようになったら誰かを傷つけるのではなく、勇者のように人を守り助けることだけに使うんだと強く心に誓っていた。


 「いつかどんな悪にも屈さない勇者になるんだ、理不尽からみんなを守れるように!」

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