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エピソード32:空中戦

ドラゴンズ・ライズの上空は、生き物のような戦場と化していた。


火の尾が空を焦がし、氷の矢が迸り、魔術の閃光が蒼穹を切り裂く。煙が切り立った崖や山脈をねじり攀じ、風が灰と残り火、かすかな血の金属臭を運んでくる。谷の上空高く、夕陽に鱗を妖しく輝かせたドラゴナイトたちが緻密な編隊で滑空し、翼が捕食者の如き精密さで空を裂いていた。飛行獣や魔滑空翼、長距離砲を装備したホルモリア兵たちは、竜兵の速度と獰猛さに抗おうとした──が、開けた空では生の力が明らかにドラゴナイトに軍配を上げていた。


氷で強化された水の鎧に包まれたマーベルが、他を上回る高空を疾駆する。氷剣が剃刀のごとき精度で空を切り裂き、火炎息、爪閃、雷撃を流麗に躱す。「ロクジョウ! 予想以上の速さだ!」彼が叫び、霧と氷棘の尾を引きながら飛ぶ。手首を捻り、迫るドラゴナイトの火球を弾き返し、接近敵の群れへ転送する──爆炎が下方の山脊を吹き飛ばし、岩塊と瓦礫が戦場の混沌に降り注いだ。


その下方、ヴェンは土魔術で固めた稜線に立つ。先ほど召喚した巨ゴーレムたちが大地を安定させ、谷の広域破壊を防いでいた。ヴェンは極限の集中を強いられ、掌にルーンを輝かせ、地人形を次々に土中から呼び起こす。数十体が鍵となる防衛点に屹立し、ヴェンの意志を自律的に反映して戦況に応じ、投射体を迎撃し、低空急降下のドラゴナイトを阻む。


「長くは持たん……」ヴェンが息の下で呟く。額に汗が光る──熱ではなく、同時多発的なエネルギー操作の極限負荷ゆえだ。呪文ごとにルーンが激しく閃き、張力の糸が切れんばかりに弾ける音が響く。突風が彼を僅かに揺らし、一膝をつく。人形たちは防衛を継続するが、オーラが明らかな衰えを見せ始める。


巨大樹の天蓋に潜む監視者エウフィンが、ヴェンの動揺を目撃し息を呑んだ。「あの魔力水準、長続きせん!」彼は望遠鏡を握りしめ、囁く声に焦りが滲む。戦場を必死に捜索する──前代未聞の空中戦規模で、一瞬の隙がホルモリア防衛を粉砕しかねないのだ。


一方、マーベルは空を縦横無尽に駆け巡り、掃掠機動を繰り返す。各通過で複数ドラゴナイトを撃墜し、谷へ螺旋落下させたり、氷水撃で甲冑を砕き散らす。「ヴェンの側面は俺がカバー!」彼は地人形への挟撃を狙うドラゴナイト群を縫い、水鎧で火爪を吸収し、氷剣を攻防に使い分け、凍霧の尾で近隣の飛行を徹底的に乱す。


俺は近くに浮遊し、ブラッドウィングを広げ、上空から戦場を見据える。マーベルの洪水が谷を河湖化し、低空機動を阻害するが、真の難題は中空戦──ドラゴナイトの速さ、敏捷、連携が集団で致命的な脅威を生む。


ヴェンが新たなドラゴナイト波に呻き声を上げる。強化壁へ攻撃が殺到した。「人形から遠ざけろ!」彼が叫び、地棘と障壁を召喚して迎撃する。だが消耗が限界に近づき──呼吸が浅く、汗が頬を伝う。エウフィンの声が俺の脳裏に鋭く響く。「ロクジョウ! ヴェンが限界だ! 完全崩壊前に策を変えろ!」


俺は頷き、焦点を切り替える。ヴェン防衛の揺らぎが空中勢力均衡を竜側へ傾けかねん。マーベルへ合図を送る。「集中撃へ移行! 個殺より編隊破壊を優先! ヴェンをカバーしつつ、俺が彼の位置へ援軍を送る!」


マーベルが空中で体を捻り、水波で迫るドラゴナイト飛行線を斬り裂く。氷剣が霜の能量で輝き、鱗翼を断ち、数体を散らす。「了解! ヴェンエリア強化!」彼が叫び、大水奔流を地上へ叩きつける──ヴェンが即座に氷壁と人形台へ変換した。


谷底が轟き、ヴェンの地人形が衝撃を次々に吸収する。各体が不気味な精度で動き、攻撃を阻み棘・岩・地形操作で反撃を加える。だがオーラが危険に明滅し、消耗の証を晒す。俺は血エネルギーを集中させ、鋭槍と斬刃の血構築体を送り込む。構築体は半知性武器のごとく敵軌道を追尾し、中空編隊を乱す。


ドラゴナイト群が低空急降下で人形圧倒を狙うが、マーベルの氷棘奔流が遮断した。「今日は勘弁!」彼が叫び、空中回転で鱗を斬り裂き、攻撃者を散らす。各機動が俺の血構築体と完璧なタイミングで連動し、致命的な交叉火網を形成する。


ヴェンが歯を食いしばり、陥落した人形を補充する──ルーンが暴走寸前に脈動した。「俺は……もう──」彼が喘ぎ、完全崩落。体が地に倒れ、人形は稼働を続けるが主不在で明らかな弱体化をきたす。樹上のエウフィンが鋭い叫びを上げる。「ヴェン! 駄目だ! 安定させろ、誰か助けろ!」


俺は空中で調整し、ヴェン周囲に血盾を形成。僅かに浮上させて直撃を防ぐ。「マーベル、カバーしろ! 俺が能量転送!」叫び、血構築体を旋回させ、急降下ドラゴナイトを迎撃する。構築体が同期弧を描き、数体を貫き、他を谷へ無力転落させる。


マーベルが氷剣を捻り、凍旋風を創出して火爪を弾き飛ばす。「任せろ! 血構築継続を!」彼が叫び、高速急降下ドラゴナイトへ跳躍。素早い斬りで翼を砕き、制御不能の螺旋へ追いやる。


混沌の中でも、戦場が安定し始める。俺のブラッドウィングが流麗に多標的を撃ち抜き、ヴェンと人形を同時支援する。マーベルの氷撃が一時障壁を創り、敵の流れを制御。ヴェンが不活でも、残存人形が地を守り抜き、ドラゴナイトの前進を阻む。


ドラゴナイト指揮官が精鋭再結集を試みる。速さと連携、攻撃力が依然として恐怖だが、戦略圧力と三者の合力でその勢いを削ぎ取る。俺はマーベルへ合図、同期した空中総撃を展開──血閃と氷水流の複合攻撃が編隊を粉砕し、兵を散らし、ホルモリア援軍の再配置開口を創出する。


樹上のエウフィンが安堵の観測を伝える。「ロクジョウ……マーベル……効いてる! 適応だ!」遠くても慎重な希望の重みが感じられる。彼はドラゴナイト側面を捜し、情報伝達で予測と迎撃を可能にする。


ついに潮流が逆転する。ドラゴナイトが防動を強いられ、編隊が乱れ、翼が損傷し、兵が墜落していく。マーベルの執拗な襲撃と氷操りが空中部を不安定化し、俺の血構築と能量翼が中空撃を無効化する。ヴェンが不活でも、三者の統制が空を支配し始める。


俺は一瞬浮遊し、下方の破壊を見渡す。河が改路を刻み、山肌に傷跡が残り、森が半焼する──だがホルモリア軍は傷つきつつ生還した。ドラゴナイトは弱体化し、連合空中策に士気が動揺する。


「ヴェンは生きてる、マーベル」俺は囁き、血盾内の微かな動きを確認する。呼吸が安定し、オーラが回復の兆しを見せる。エウフィンの声が脳裏に響く。「守れ……戦いは続くが、潮流を変えた」


俺はブラッドウィングを最終同期撃へ調整。「よし」とマーベルへ叫ぶ。「集中突入準備! 精鋭部隊を狙え! 空を完全制圧だ!」


マーベルの瞳が決意で輝く。「決めるぜ!」回転し、水氷の巨奔流をドラゴナイト飛行線へ叩き込む。甲冑を斬り裂き、編隊を散らす。


三者の総攻で空中戦場がホルモリア側へ全面傾斜。ドラゴナイトが退却を開始し、隊列が崩壊、士気が粉砕される。地は争いが続くが、空の確保でホルモリア援軍と戦略点が進撃可能になる。


疲労しつつ不屈の俺は谷上空に浮遊し、翼を広げ、オーラを猛燃させる。下方の生存ホルモリア兵が歓声を上げ、空中戦の勝利を認識する。ヴェンが徐々に意識を回復、オーラは微かだが安定。マーベルが近くに浮遊し、氷鎧に亀裂が入り、水流が衰えつつも勝利の笑みを浮かべる。


「よくやった」俺は呟き、地平を睨む。「空は確保……だが地とドラゴナイト王国が残る。今、押し進める。終わらせる」


灰と残り火に染まる空が、空中戦段階の終幕を証す。ホルモリア勢は傷つきつつ存続。ドラゴナイトは乱れ、屈辱にまみれ、弱体化していた。戦いが転機を迎え、次の一手が両王国の運命を決する。



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