エピソード31:パワーインフュージョン
「ハァァァァ~!!!」 「ロアァァ~~!!!」
ドラゴンズ・ライズの上空が、暴力の咆哮で震え狂っていた。煙と灰が空を覆い隠し、戦争の魔力共鳴が厚い雲を切り裂く。切り立った山脈の稜線を炎が貪欲に舐め取り、マーベルの洪水が焦土の谷間を猛威を振るって駆け抜け、石塊と瓦礫を無慈悲に引き裂いていく。戦場の中心に屹立するのは、ストーヴィル──人型竜混血の巨躯。筋肉と鱗と爪の山容が、一振りで兵士隊を殲滅しかねない絶望的な脅威を放っていた。
俺はブラッドウィングの上に浮遊し、体内の血硬化の残響と直前の猛攻エネルギーがまだ脈打っていた。ストーヴィルの瞳は知的な悪意で紅蓮に輝き、俺の疲労を的確に察知して一点集中する。心臓が周囲の紅蓮エネルギーと同期して激しく鼓動し、筋肉が悲鳴を上げ、血管が魔力で燃え上がる。各動作が労力を要するが、血の一振り一閃は精密でなければならない──一瞬の躊躇が、下方でもがく兵民の死を招くのだ。
ヴェンの声が魔力リンクで戦場全体を貫いた。「ロクジョウ! あの獣相手に持久力は永遠に持たん! 足止めだけ集中しろ、地は俺たちが守る!」
マーベルは流動する氷水の鎧を纏い、ドラゴナイト兵の間を疾風のように駆け抜ける。凍結投射体、津波、氷棘を連射し、敵陣を容赦なく切り裂いていく。「後方は任せろ、ロクジョウ! お前は決着の力を出せ!」
俺は拳を固く握り、腕に紅エネルギーの奔流を呼び起こし、ブラッドウィングを次の突撃へ全開展開させた。ストーヴィルが地響きのごとき咆哮を上げ、顎と尾から炎を爆発的に噴き上げ、前進してくる。俺は急降下し、空中で体を捻って致命の爪撃を回避した。火花と血エネルギーが鱗に激突し、衝撃波が俺を数十メートル吹き飛ばす。
「今の出力じゃ足りん」俺は息の下で独り言ち、状況を冷静に分析する。「増幅が必要だ──一時的な爆発力を引き出す何か……」
マーベルが即座に理解を示した。「なら、いくぜ」彼は天を仰ぎ、水を精密な円筒状に捻じり上げ、各々に魔力栄養を宿した輝く糖質菓子を封じ込める。イルファの厳しい訓練で、水操りと戦中補給を外科手術級の精度で両立させたのだ。
「準備しろ!」マーベルが叫び、手首を鋭く翻す。水投射体が銀青のミサイルのように俺へ飛来し、空中で凝縮して菓子を直撃で届ける。俺はそれをしっかりと受け取り、口に含むと、即座にエネルギーが全身を駆け巡った。
効果は電光石火だった。血が炉のように燃え上がり、血管が紅白に爆輝し、オーラがこれまでにない巨躯で膨張する。翼が長く鋭く伸び、各動作が致命の可能性を放射し、血硬化が自動強化され周囲に適応、血爆が濃密な貫通投射体へ進化──ストーヴィルの最厚鱗すら切り裂く。
ストーヴィルが急変した俺のオーラを察知し、再び突進。爪を伸ばし、周身に火を纏う。だが今度は回避のみじゃない──強化血エネルギーと完璧に同期した反撃だ。
俺は翼を全開に高速回転させ、多重の精密血閃弧を生成した。一閃一閃が空を切り裂き、彼の反応速度を遥かに凌駕する。ストーヴィルは完璧なタイミングの爪で防ごうとするが、俺の速度、密度、強化出力に完全に圧倒され、肩に複数閃が食い込み、防鱗を砕き、深手を刻み込む。彼が悲鳴を上げ、翼を激しく打ち安定を試みる。
下方でマーベルの洪水が新たに活性化し、河と津波を地に深く刻み込んでいく。水を盾にホルモリア兵を火爪から守り、氷浮遊台を戦略優位へ展開。「ブーストを活かせ! こっちは俺だ!」と叫ぶ。
ヴェンは土壁の上から、各障壁に強化魔術を注ぎ込み、守護ルーンで輝かせる。ストーヴィルや残存ドラゴナイトの攻撃が無害に砕け散り、谷底を絶対安全に保つ。「足止めを続けろ、ロクジョウ。谷は俺が守る」
俺は真空を引く速度でストーヴィルへ急降下した。血閃が胸を裂き、鱗と筋肉を剥ぎ取り、血爆連鎖を放ち連続爆発が彼を山壁へ後退させる。ストーヴィルが苦痛の咆哮を上げ、顎から炎爆を起こす。岩塊、瓦礫、魔力が周囲を吹き荒らし、血鱗の激突が戦場全体に衝撃波を走らせる。
「今だ!」俺は血鞭、閃、凝縮爆を完璧同期で総攻撃を解き放つ。マーベルの糖魔力注入を生破壊力へ昇華させ、各撃が甲冑を断ち、翼を貫き、筋肉を精密打つ。ストーヴィルがよろめき、急激な出力スパイクに面食らう。
塔上のドラゴが信じられぬ顔で目撃する。「不可能だ! 人間が……我らの想定限界を超えるとは!」
ヴェンが戦況転換を察知し、ホルモリア軍へ号令を飛ばす。「陣を維持! 障壁強化! 谷でドラゴナイトを封じ込め、ロクジョウが混血を排除する!」彼の壁は火やエネルギー攻撃に無敵、魔力集中さえ保てば不落の要塞だ。
マーベルは水鎧で氷剣を振るい、飛翔ドラゴナイトを斬り、空中援護を展開。「支援部隊は俺だ、大物はお前さん!」
俺は深く息を吸い、ブラッドウィングを一枚の巨大鎌状構造へ凝縮させる。翼が攻防一体となり、ストーヴィルへ突進。精密斬りで翼を貫き、螺旋落下へ追いやる。打撃部に炎噴射、岩砕け、戦場が震動する。破壊は桁外れ──山肌が割れ、溶岩河が冷却分裂、魔力逆流で森が燃え崩れる。
ストーヴィルが抵抗の咆哮を上げ、巨尾を弧に振り俺を空中粉砕せんとす。俺は即応し、翼を回転させて衝撃を吸収。硬化血が力を拡散、無傷のまま血エネルギーを集中爆へ転じ、胸へ直撃させて彼を後退させる。
ドラゴの配下部隊が側面を試みるが、マーベルの水氷流が迎撃し、壁へ叩きつけたり空中凍結させる。ヴェンは地形から自律ゴーレムを形成、各々がストーヴィル封じ込めの守護者として機能し、俺に決定的打撃の集中を許す。
混血の耐久を悟り、俺はさらに踏み込む──新技。血管が紅白に爆輝し、オーラを全方向へ膨張、翼が放射状に紅蓮を放つ。体が意識を超える速さで動き、反射が超人域へ強化される。血閃、投射、鞭が同時精密計算・実行され、俺を紅死の生き嵐へ変貌させる。
ストーヴィルが抗う──翼ボロボロ、爪折れ、尾損傷──だが倒れまい。俺は隙を見抜く──火息の僅かな遅れ、不均等翼打。全てを一点へ集中、最終巨刃を生成。ドラゴンズ・ライズの最大城壁より幅広の紅血大剣だ。翼を輝かせ、ストーヴィルの胴を綺麗に両断する。
打撃が命中し、悲鳴が空を裂く。炎爆、鱗砕、衝撃で戦場全体が震颤。河分裂、山割れ、衝撃波が空を裂く。ストーヴィルが地に激墜、瓦礫と攻撃エネルギーに押さえつけられ、動き鈍化、力衰え──俺の血エネルギーが安定固定し、無力化を完遂する。
これを目撃したドラゴが青ざめ、初めて恐怖の色を瞳に宿す。「どうして……人間がこのような力を?」「いや……ありえん……」
俺は倒れた混血の上空に浮遊し、翼で空を切り、オーラを猛々しく輝かせる。「配下は終わりだ。お前の王国が次だ。降伏か、同じ末路か」
ヴェンが谷周囲の守壁を強化、各石とルーンが上強化呪文で輝き、火爪エネルギーすら寄せ付けぬ。集中持続さえあれば不壊の絶対防衛。
マーベルの水鎧が雲間陽光にきらめく。「俺の側はクリア。先の洪水、まだ効いてるぜ。王国への道、開通だ」
俺は息を吐き、翼を僅かに収縮して体勢を整える。エネルギーは膨大、生気と破壊力で満ち溢れ、マーベルの糖注入が一時オーバードライブを触媒、身体魔出力を前代未聞の水準へ押し上げた。これでドラゴと残存勢力に直正面から挑める。
下方戦場は決闘の爪痕を晒す。ドラゴナイト軍は散乱、無力化か気絶多数。ホルモリア兵が防衛線から歓声、力の顕示に勇気づけられる。ヴェンの壁は堅牢、マーベルの水鎧兵が路確保、増援阻止、地形安定を続ける。
俺は空に浮遊、ブラッドウィングを唸らせ、戦場を見渡す。ストーヴィルは下野、敗北──だが生かす選択。暴走継続を防ぎ、生存が明確警告。残ドラゴナイトは再考を強いられ、俺がドラゴ指揮所へ進撃準備を整える。
「決着の時だ」俺は独り言ち、翼を全開、オーラを紅太陽のごとく噴き上げる。「血の帝国は倒れん。ホルモリアは倒れん。そしてドラゴ……お前は脅かした命一つ一つに代償を払う」
これを以て、俺は前進する。砕け散った戦場を後に、ブラッドウィングで風を切り裂き、ドラゴとの対決へ。ドラゴナイト突撃の第一段階を、決定的結末へ導くために。




