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エピソード29:5つのスケールが出現

ホルモリアの朝空は、鋼鉄のような緊張感を帯びた灰色に染まっていた。厚い雲は嵐と先の戦いの煙を孕み、重く垂れ込めている。谷底はマーベルの洪水の余波で湿り気を帯び、焦土には数時間前に撃退された蜻蛉とドラゴナイト兵の足跡が無数に刻まれていた。しかし、この静けさは偽りのものだった。ホルモリア軍の兵士たちが防壁を再建し、魔術の結界を強化する中、地平線の彼方から不気味な影が忍び寄っていた。


巨大樹に巣食う監視者──ウォッチャーの魔眼レンズ越しに、谷上空高くから雲間を抜けて巨大竜の編隊が姿を現した。これらはただのドラゴナイトではない。ドラゴンズ・ライズの精鋭、五鱗衆──ドラヴィット、ドラヴォン、ドラゴン、ドラッコ、ドララー。彼らはそれぞれが圧倒的な力を放ち、昇る陽光の下で溶けた金属のように鱗が輝き、鼻孔から炎が漏れ、知性と獰猛さに満ちた瞳が燃えていた。


「五鱗衆を……直接、心樹へ向けて展開した……」ウォッチャーが震える声で呟く。竜たちの巨体が谷を覆い隠すほどに迫り、「これで……すべてが破滅するかもしれない……」


谷中では、俺が硬化した血の装甲板に浮遊していた。赤い表面が微かに波打ち、全身からオーラが迸る。血管内の血が溶岩のようなエネルギーで脈動し、予感とアドレナリンが渦巻く。傍らでヴェンの掌に黄金ルーンが輝き、マーベルの周囲を水の宝珠が守護するように旋回していた。


「ヴェン」俺は胸の嵐を抑え、声を落ち着かせた。「心樹はお前が守れ。一切を賭けてな。マーベル、俺と来い──ドラゴンズ・ライズへ道を切り開く。俺は途中で五鱗衆を迎え撃つ」


ヴェンが頷く。「了解だ。この樹はホルモリアの基盤。決して落とさん」彼のアースゴーレムが谷底から隆起し、結晶脈が魔力強化で唸りを上げる。「周囲を固め、接近路に罠を設置した。何者も壁を越えられん」


マーベルが指を曲げ、周囲の腕に水流が螺旋を描く。「俺が直通の河道を刻む。氾濫域、氷橋、水刃──ロクジョウの足を止めんようにするぜ」


俺は拳を握り、血のエネルギーを具現化させた。背中から深紅の翼が爆発的に生え、鋭く空力的な刃状に尖る。「ブラッドウィング、展開完了。行くぞ」


上昇する俺たちを、五鱗衆が完全な姿で迎えた。彼らの隊列は肉食獣の群れのように緻密で、ドラヴィットが先頭で翼を骨まで響くリズムで打ち、ドラヴォンとドラゴンが左右を固め、ドラッコが後衛を追い、ドララーが最後尾で弱点を窺う。合体オーラは生の力を放ち、空気すら熱で震わせ、鼻息の炎が揺らめいた。


ヴェンが手を掲げ、アースゴーレムが心樹周囲に鋭い盾と塔を形成。「攻撃を集中させろ。何度叩かれようと、樹は不動だ」岩が捻じれ、ルーン結界で強化された障壁壁が屹立。土中に根を張った魔藤が竜たちへ伸長し、動きを感知して早期警戒網を構築した。


マーベルの水流が上空へ噴き上がり、洪水を跨ぐ橋を形成。渦巻く竜巻が精鋭兵を選んで浮上させ、下の敵を切り裂く。「ロクジョウの空路、確保。他は俺の流に逆らうな、飲み込まれるぞ!」


俺はブラッドウィングを広げ、五鱗衆へ加速。竜たちが一斉に咆哮し、谷に耳障りな叫びがこだまする。ドラヴィットが俺の接近を察知し、最初に急降下。顎を嚙み合わせ、爪を伸ばす。俺は即応し、翼から血閃を二重に旋回させ、鋭い弧で空中衝突。火花と鱗片が飛び、力が激突した。


ドラヴォンとドラゴンが左右から挟撃。俺は翼を捻り、精密動作で多方向血刃を放ち、攻撃を弾きつつ反撃閃を生成。ドラヴォンが灼熱の火炎錐を吐くが、俺は凝縮血障壁で迎撃──赤い表面が瞬時に輝き硬化し、熱を拡散させて胸に届かせぬ。


ヴェンのアースゴーレムが谷底を踏み鳴らし、上空へ衝撃波を放つ。残存蜻蛉とドラゴナイトを傾け、降下竜を結晶棘の罠で貫く。「集中しろ、兵ども! 精鋭はロクジョウに任せ、外敵を食い止めろ!」


マーベルのアイスゴーレムが洪水河に激突、水矛のように氷流を上空へ射出。ドラッコが低空迎撃を試みるが、氷棘に串刺しされ退却。マーベルが高笑い。「中堅は俺の担当だ! 来いよ!」


俺はその隙を突き、北翼へロケット加速。血閃が紅蓮の嵐となり、刃のように回転。各一撃が鱗、筋肉、魔力を削ぎ、五鱗衆の隊列を再調整を強いる。


後衛ドララーが火球の弾幕を放ち、致死熱の尾を引きながら迫る。俺は凝縮血盾で弾き、一部エネルギーを吸収して翼を強化、他を無害に地表へ跳ね返す。火球衝突で大地が揺れ、谷底が炎上、煙が視界を曇らせるが、俺は突き進む。


ヴェンの声が混沌を貫く。「ロクジョウ、心樹へ近づけるな!」ゴーレムが上空からのドラゴナイトを地腕で粉砕。「壁は持つが、同時対応は限界だ!」


俺は振り返る。心樹は根深く結界活発だが、五鱗衆の隙は致命的。集中し、体血をさらに引き出し、数十の自律血閃を形成。旋回・斬撃・迎撃し、翼を自由に機動させる。


竜たちの苛立ちの咆哮。精鋭連携が乱れ、各一撃が複数ホルモリアンを薙ぐほどの威力で谷を揺るがす。


マーベルの氷造形が南翼蜻蛉を絡め取る。「北路確保! だが戦術変更──陽動に備えろ!」


ドラヴィットが再突進、崖際へ俺を追い詰めようとする。俺は翼を横広げ高速回転、紅の竜巻刃を生成。衝突でドラヴィットを弾き、岩肌に傷跡を残す。「速いな、だが足りん」と彼が唸り、爪で空を裂いて体勢回復。


ドラゴンとドラヴォンが上空で同期急降下。俺は軌道予測、多重血閃弧で迎撃。金属音が響き火花散らし、突進を崩壊させて後方へ螺旋。


ヴェンのゴーレムが森翼から跳躍、ドラヴォンに激突し上空へ押し上げ、俺の迎撃圏へ。ゴーレム、洪水、血閃の連携が、五鱗衆の想定外の死角を生む。


マーベルの水が上空蒸気幕を形成、敵視界を遮る。「視認喪失! 利用しろ!」俺は霧を斬り抜け、血閃で空中攻撃を遮断。


だが三者の総力でも、竜たちは執拗。ドラッコの火球が障壁を焼き、ドラゴンの爪が地を裂き、ドララーの尾撃が兵を吹き飛ばす。各々へ精密機動、反撃、エネルギー管理を強いられる。


俺は悟った──新技で勝負を決するまで続く。オーラが爆発、血管が紅輝し、次の能力へ集中。翼腕にエネルギーが集束。素早い動作で、これまでにない長大鋭い血弧を切り、複数敵を絡め取る血鞭へ変貌させた。


ドラヴィットの勢いを空中で血鞭が翼に巻き付き、硬化して動きを封じる。ドラゴンとドラヴォンが援護減速を強いられる。


マーベルの洪水が乱流を生み、落下竜を生存調整へ追い込む。ヴェンが障壁を重ね強化。「封じ込めろ」と叫ぶ。「ロクジョウ、今が開幕だ」


俺は前進、翼全開に紅雷の尾を引き、ドラゴンへ先制。血閃が防御を貫き、鱗削ぎ動き鈍化。ドラヴォン・ドラヴィットが隊列維持に苦しみ、マーベルとヴェンに戦場支配の余裕を与える。


ドラッコとドララーが連携撃を試みる。俺は焦点分割、精密血閃を各々へ。紅弧が翼尾火を斬り、一匹ずつ退却を強いる。


「集中射撃!」俺が命じ、血管が脈動。「一匹ずつ。隊列を崩壊させろ!」


五鱗衆は連携失敗を悟り、分散独立機動へ。俺は追う、翼が空を紅弧で裂く。ドラヴィットの苦痛咆哮、ドラゴンの火球が血盾で霧散、ドラヴォンの退却を脚絡め鞭が空中回転させる。


ヴェンの声が戦場を駆ける。「壁固め完了。残蜻蛉迎撃。地上軍規律進軍、集中維持!」


マーベルの水造形が後方へ奔流、逃蜻蛉を追いつつ増援遮断。「勢いだ! 押し返せ!」


俺の血エネルギーが沸騰点へ、各脈動を制御。巨大血閃を三日月形に放ち、ドラヴォンとドラゴンを同時崖衝突へ。陣容崩壊、ドラッコとドララーだけが孤立撃を試みる。


ヴェンがゴーレム位置を固め、最終突撃迎撃準備。マーベルのアイスゴーレムが氷柱を乱立させ、残竜の回避を予測不能に乱す。


俺は上空浮遊、翼を能量で輝かせ。「崩れた……散った……今、圧力と孤立を」各血閃、鞭、弧を非殺傷無力化へ精密狙い。


精鋭五鱗衆も、今や連携崩壊、士気動揺。三者の協調、創意、意志の前に。ホルモリア軍の歓声が谷を震わせ、潮流逆転──竜空の覇権は絶対ならず。


俺は翼を整え、戦場を見据える。「圧力維持、封じ込め、命令厳守。この戦いはまだ続くが、優位を掴んだ。次段階へ──五鱗衆の捕縛と抑留準備だ」


ヴェンが頷き、疲労を顔に浮かべ。「同意。外郭をさらに固める。次撃は容赦ない」


マーベルの水流が同意の波紋。「追撃路を開くぜ。ブラッドウィング、発進! 再結集前に孤立完遂だ」


もはや精鋭の名は虚飾、五鱗衆は三魔導士、ゴーレム、ホルモリア軍の統制防衛に抗う。谷下は血水土魔の混沌──戦いの苛烈と規模の証。


上空、再び嵐雲が転がり、風が戦火血の臭いを運ぶ。戦いは始まったばかり、ドラゴナイト支配に初の亀裂。ホルモリア空の五鱗衆治世は、深刻な脅威下に。


その中心で、俺──ロクジョウは翼広げ、血を生河のごとく流し、ドラゴンズ・ライズへ戦を挑む準備を整えていた。



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