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エピソード13:いつもの学校の一日

「これから毎日、こんな風に歩かなきゃいけないのか?」

ヴェン・ダイゴは校門をくぐりながら、制服の端をぐいと引っ張った。赤と白のグラデーションのストライプが朝日に映えている。


「こんな風にって、何が?」

マーベル・タキシンが彼を横目で見た。


「なんていうか……任務中みたいな感じだよ」

「なあ、マジでなんで俺たち整列してるんだ?」

「整列なんてしてないよ」

ぼくは二人の前を歩きながら答えた。

「歩いてるだけ。同じタイミングでね。それを『グループ』って言うんだよ」


ヴェンが小声で何かを呟き、マーベルは鼻を鳴らした。


ぼくたちは校舎に向かって道を進んだ。三人で横に並び、屋根の向こうには低い朝日が昇っている。

学校はいつもと同じに見えた。

高い建物。

磨かれた石。

通り過ぎる生徒たちは、何も知らずに喋ったり笑ったりしている。


けれど、空気は違っていた。

張り詰めているわけでも、騒がしいわけでもない。

ただ……研ぎ澄まされている。

まるで、世界がほんの少しだけこちらを注視しているみたいだ。


前を歩いていた一人の生徒が振り向き、ぼくたち三人を見て驚いたように二度見した。

「へぇ」

一人の女の子が、好奇心とショックが混ざったような顔でこちらを見続けている。「いつからあんな風に歩くようになったの?」


彼女の友人も、それ以上に興味津々といった様子で後ろから覗き込んだ。

「あれ、新しい編入生でしょ?」

「水魔法クラスの奴と、土魔法の……あと、あの変な子」

「あの子よ」

彼女がぼくを指差した。

「みんなが噂してる子。いつも何かを観察してるっていう……」


その言葉は聞こえていたけれど、ぼくは反応しなかった。

反応したのはヴェンだ。

彼はニヤリと笑った。

「そうだよ」

彼は彼女たちに聞こえるような大きな声で言った。「ぼくたちは『変な奴ら』だ。気をつけなよ」


女の子は驚いて瞬きをし、慌てて立ち去った。

マーベルがヴェンの方へ首をかしげる。

「なんでそんなこと言ったんだ?」

「だってみんな喋ってるからさ」

「俺たちが『威圧的』だと思われたら、もっと噂されるぞ」


ぼくは彼をちらりと見た。

「いい考えだね」


ヴェンの肩が少し上がった。

彼は、ぼくたちの周りで物事が動く感覚に慣れ始めていた。


教室に着いて中に入ると、黒板に文字を書いていた先生が手を止めて振り返った。

「ああ」

「ロクジョウ、ヴェン、マーベル。早いですね」

「はい」

ぼくは少し生意気そうな含みを持たせて言った。

「ぼくたちは……『調整中』なんです」


教室が一瞬、静まり返った。

調整中。

それがまるで説明にでもなっているかのように。

先生は頷き、また黒板に向き直った。


他の生徒たちが、ぼくたちが席に着くのをじっと見ている。

ひそひそ話をする者。

目を逸らす者。

ただ単に凝視する者。


昨夜、ぼくたちが何をしたかを知る者は一人もいない。

あの歪んだ木。

最初の骨組み。

最初の礎石。

彼らにとって、そんなことはどうでもいいことだ。

まだ、今はね。


授業中、表面上は穏やかだった。

先生は講義をし、生徒はノートを取る。

世界はいつも通りに回っている。

けれど、ぼくには違いが感じられた。


ヴェンの手はノートの上を素早く動き、ペンが紙をひっかく音がかすかに聞こえる。

マーベルの目は先生ではなく時計に集中していた。まるで誰よりも慎重に時間を測っているみたいだ。


ぼくは全員を観察した。

ペンの持ち方。

椅子の上での身の振らし方。

ぼくたちが中を見ていないと思っている時に送ってくる視線。


彼らは何かに気づき始めていた。

ぼくたちに何ができるかではない。

ぼくたちが何をしたかでもない。

ただ、ぼくたちが「異質」であるということに。

それだけで十分だ。


放課後、ぼくたちは再び廊下を歩いた。入ってきた時と同じように、三人で。

ヴェンがゆっくりとぼくに寄りかかってきた。

「みんな見てるぞ」


ぼくは微笑み、何か良からぬことでも考えているような意地悪な顔で前を見据えた。

「当然だよ」

「生徒だもん。新しい奴がいれば見るさ」

「ぼくたちはそれ以上の存在だけどね」

マーベルが素早く口を挟んだ。


ぼくは興奮で吐息を漏らした。

「そうだね」

「世界がもう変わり始めていることを知っている、最初の生徒だ」


ヴェンがバックパックを背負い直した。

「じゃあ、次は?」

「ずっと普通のフリをし続けるのか?」

「いいや」

ぼくは彼を見、それからマーベルを見た。

「ぼくたちは『普通の生徒』として振る舞うんだ」

「だけど、世界は少しずつその違いに気づき始めるよ」


ヴェンの瞳が鋭くなった。

マーベルの手がわずかに握り締められる。


一日の終わりに、三人で学校を出た。

背後で、誰かがなぜか怒りに満ちた視線を送っているのを感じた。

理由は知らないし、興味もない。

ぼくは後ろを振り返り、瞳を赤く光らせて睨み返した。

彼女は目を逸らし、慌てて廊下を去っていった。

怖がらせちゃったかな? あはは。


ぼくたちは心海さんの家にあるぼくの部屋に戻った。そこには血の翼がアクセサリーみたいに壁に掛かっている。

ぼくたち以外、誰もここに入ってこないのが幸いだ。


三人はそれぞれ翼を手に取り、マーベルが屋上までぼくたちを浮かせた。肌をなでる風が心地いい。

ぼくは誇らしげなリーダーの目で二人を振り返り、ニヤリと笑った。


ぼくたちは空へと飛び立った。

マーベルは空気中の水分で血の翼を操り、ヴェンはいつの間にか拾い集めていた土(ぼくは全然気づかなかった!)を使って同じように操っている。


「さあ、テストドライブの時間だ!」

彼らはどこへ旅していると思いますか?

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