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序章 おまけ召喚



「嫌な予感がする……」

 その日、折部流衣(おりべ るい)は朝からずっと悪寒のようなものを感じていた。

 背筋がぞくぞくして、どうにも嫌な気分が拭えない。

 それって風邪じゃないのかという当然の疑問に、しかし流衣は違うと言い切れた。

 昔から、これは大抵不幸の起きる前触れなのだ。例えば、交通事故の影響でバスが遅れたり、どう見ても虐めっ子のような者達に目を付けられたり、挙句の果てには事故に()いかけたり。

 出来れば予感が外れて欲しいと思いながら、通学に使っているバスから、アザミ中学校の正門脇へと降り立つ。それから妙に重い空気を引き連れつつ、正門を抜けて三年の教室がある方へと向かった。

 三年二組の教室の戸を開けると、自分の席で他のクラスメイトとだべっていた高山浩人が振り返る。スポーツ刈りをした溌剌そうな容姿をしていて、背が高い。二学期の途中である今は受験シーズンである為に部活のサッカーには参加しておらず、だから朝練もないので最近は朝から余裕がある様子だ。

「おう、流衣。お早う」

「お早う、ヒロ」

 流衣は同級生からすれば155cmと背が低く、気弱そうな外見から小動物のようだといわれ、がたいの良い同年男子達から侮られたり軽く見られがちなのだが、浩人は小学生の頃からの友達ということもあって対等に見てくれる。いわば親友だ。

 少しはにかんで挨拶すると、何故か教室の隅で黄色い悲鳴が上がった。

 ビクリとそちらを見ると、四~五人の女の子のグループがこちらをガン見している。そして何故だか頬が赤いような気もした。

「え、なに、なんかこっち見てる」

 途端に挙動不審になる流衣。

 それからすぐに、浩人が笑ったからだろうと思い至る。サッカー部のエースは伊達じゃない。浩人は子供の頃から女子達によくもてているのだ。

 周りから好かれる浩人は流衣の自慢だし、そういう親友を見ているのが流衣は好きだったので、嬉しくなる。

「良かったね、ヒロ。相変わらずすごくもててるみたいだ」

 笑顔でそう言うと、浩人と、それから浩人と話していた翔太と耕介が揃って呆れた顔になる。

「お前……、こりゃちっとも気付いてねえな」

「ヒロ相手にカワイイなんて言葉出ねえだろ」

「相変わらずの鈍感小動物め」

 三人はぼそぼそと何かを言い合っているが、あいにくと流衣は鞄から教科書類を取り出すのに忙しくて聞いていなかった。

 そこでまた悪寒を覚えて身震いする。

「どうした、流衣。風邪か?」

 目ざとく気付いた浩人が不思議そうに問い、流衣は困った顔で答える。

「ううん、違う。朝からどうも嫌な予感がするんだよね」

「気を付けろよー、お前の不幸の勘はよく当たるから」

「うん、ありがと。気をつけるよ」

 流衣はそう答えながら、心の隅で呟く。

 ――よく当たるのではなく、外れたことがないというのが正しいかな。



 放課後になっても悪寒は消えず、沈みがちな気分で帰路についた。

 いつもの馴染みのバス停でバスを降りると、毎日通い慣れた自宅までの道を歩いていく。

 夕方とはいえ明るく、人通りの多い時間なのだが、今日は人影が見当たらない。珍しいこともあるものだと思って歩いていると、ふいに肩を叩かれた。

「はい?」

 道を訊かれても答えられるかな。咄嗟(とっさ)にそんなことを考えて振り返った瞬間、どこかに放り出された。




 初めまして。書き手の草野と申します。

 この話は、気弱な少年が異世界で成長していく物語です。

 暇つぶし程度にお楽しみ頂ければ、幸いです。

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