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結局、ジークベルトにはエリスが状況を説明した。
ジークベルトは神妙な顔をして黙り込んでいる。
「ここに陛下からお手紙がある」
エリスが取り出したのは、赤の封蝋で封をされた上質な手紙。
なぜ、陛下から手紙?!
テーブルの上にさし出された手紙を、ペーパーナイフを差し込んで封蝋をはずす。丁寧に開け目を通す。一行目から間違いが見つかった。
「我が国の守護天使、大層な名前がついてます。これ私の手紙であってます?間違ってませんか?」
絶対間違ってるよ。守護天使??
「あってるから読み進め」
エリスが先を読むように促す。コレットは渋々読み進める。
陛下って人のことを持ち上げるタイプ?腰の低い人?それとも調子に乗ったところ後ろから蹴倒すタイプですか?
偉い人の考えることって常人には理解できないわーと思いながら読み進め、要約した状況を話した。
「ざっくりすると、このような状況になり大変残念。体をゆっくり休めて復帰を待つので第二王子の婚約者候補は継続。って書いてます?」
顔を上げて話すと、二人にも読むよう手紙を差し出し視線で促す。二人とも目を通す。
「おかしくないですか?小さくなったから能力は下がってるので婚約者候補から落とすってなるのが普通じゃないですか?」
コレットは頭をかかえだす。
そう、おかしいのだ。魔法の能力下がったらすぐに婚約者候補からおちるでしょ。
だって私の魔法以外に能力なんて誇れるものなんて特にないよ。貴族っていってもとびぬけて高い身分ではない、まあ高いくらい。ジークベルトの方が大分高い。ジークベルトの妹が代わりに候補になりません?
私が頭の中でなんでと疑問を浮かべていたら、肩をポンと叩かれた。
ん?
顔を上げるとがエリス様が目の前に立っていた。
沈痛な面持ちで。
なんでそんな顔?
「…なんでしょう?」
私が困惑した気持ちを混ぜて疑問を投げかけると、エリス様は私の肩に手を置いたまま、口を開いた。
「能力が下がっても、第二王子の恋はあきらめなくていいんだ…」
「はい?」
恋?だれがだれに恋?
「好きなんだろう?第二王子のこと」
「あの?」
「コレットが望まないと第二王子との婚約なんて話出ないからな…」
「へ?」
エリス様ははわかっていると言わんばかりに深くうんうんとうなづいた。
なに私はわかってるという雰囲気だしてるんだよ。勝手に勘違いしないでくださいよ。
「自分の能力が下がったからといって第二王子の力になれないと思わなくていい…魔法以外にお前のいいところはある」
なにを言いだすんだ、エリス様は。
エリス様は励ますようにバシバシと肩を叩き出した。
痛いっ痛いっ!馬鹿力です。
「お前は変なところで遠慮しいだからな。なに、私の方から辞退にならないよう少しだけ働きかけといたのもあるかもな」
な、な、なにしちょってくれるんですか?!小心者で純粋に第二王子の婚約者になりたくないだけです!!
「エリス様、誤解です!」
エリスはコレットの両肩をがっしり掴みコレットに語りかけた。
「恥ずかしがらなくていい!!私にはわかってる。みなまで言うな。弟子の恋に口出すべきでないかと思ったが、察する能力が私は高いからな。秘めた恋だったよな、諦めたくないよな!諦めるな!まだお前は第二王子の婚約者だ!」
エリスが感極まってに涙ぐみコレットを奮い立たせるために鼓舞する。
「諦めずこの危機をなんとか乗り越えよう!」
エリスは浮かんだ涙を隠すように、背中を向けて目元をぬぐった。
…………。全然察してない?!誤解だし?!いや、なんのエールだ。辞退したいんだって!! しかしエリスさまは思い込みが激しい、誤解です!
エリス様キレイだし仕事もバリバリできて何で男の人と縁がないのか不思議だったけど、察する力がひどかったんだな。アプローチされているのに男の人を気づかず振ってたんだな。
アーメン、エリス様にちゃんと察する能力を授けたまえ…。
結局、エリスさまの誤解は解くことはできなかったしこのまま王都にいたら今度こそ命を取られる可能性が高いので、エリス様の別荘の家に身を隠すことになった。
別荘といっても辺境の地だ。ものすごく安かったので薬草採取のために購入したらしい。あまりに辺境の田舎すぎて暇がなくまだ行ったことないらしい。
その家ほんとうにあります?
エリス様、空物件売られてるんじゃないですか?
大体の位置はわかるからと転移で飛ばしてくれた。
強引である。
姿が見えたら存在がバレるから部屋にものをとりに行くことなく飛ばされた。
あとで家に部屋のものを全て送ると言っていたが、本当ですか??
王都から辺境にって普通に左遷じゃない?
たしかに出世はしたくないけど左遷も嫌です。
一応生まれも育ちも王都。
辺境でやっていけるか不安です。