1-1 ホウレンソウ
着きましたよ、魔法塔ダレン。
そこは魔法使いのスペシャリストだけが入ることをゆるされる建物。
おごそかで見るものを圧倒させる外観。圧倒させる要因はその大きさ、壁面にある精密で緻密な装飾にある。大聖堂のような外観で尖塔とアーチで飾られたゴシック建築として最大規模の大きさ。あまりの大きさ高さにより、建物正面を捉えるにかなり後ろまで下がらないと全貌をみることができない。建物の周りにほどこされた繊細で緻密な装飾。西側の表玄関にある魔法使いたちの彫刻は歴代の代表たちだ。
内部は、色鮮やかなステンドグラスと常に展開されている虹が出迎えてくれる。
微細な魔法陣が常に働いており気温は一定で防犯は完璧だ。敵意、殺意出した瞬間四方八方から拘束の魔法陣も展開される。
池や練習場や美術品、魔道具をおく宝物庫や図書館もある。美術品は貴族たちや王族からの寄付が主だ。魔導具は魔法使いたちがダンジョンにもぐった際とってきたため大変高価なものが多い。
ついでに薬草を育てる温室に調合室もある。
小市民で子どもの私には入ったことのないが、設備がほかにもたくさんあるらしい。
王都なのに広大な敷地面積を持ち、ダレン所属の魔法使いになることは権力地位を手に入れると言われている。
服装は規定はないが魔法使いらしく華美ではないがそれなりの品質の服を着るように言われている。
服装が決められないものは所属した際に配布されるマントを着て中の服装をみえなくする。
マントは重厚でずっしりとした見た目に反し軽い。重量軽減の魔法陣がかけられている。色は白、黒、灰、エンジ、緑等と多彩な色展開がある。また物理的魔法的衝撃を和らげる魔法陣もかけられているらしい。くわしいことは細かい魔法陣がいくつもかけられておりマント1枚で庶民の10年分の生活費はかかっていると噂は流れている。
手元足元のすそのふちにはゴールドの刺繍が施されておりエレガントであり上品な印象である。
さすがです、魔法塔おかかえの仕立て屋。
あぁ、なんかもういろいろありえない。貴族令嬢なのに根っからの小市民と庶民思考でここにくるだけで毎日圧倒されて疲れる。なんでこんなに小市民で庶民思考なんだろ、私。
そして魔法塔ダレンには派閥がある。貴族派閥と庶民派閥だ。貴族派閥の頂点でまとめあげるのが「ハーツ」という組織だ。ダレンの魔法塔の地位などとは別の組織だ。
ハーツは、家柄、魔法の実力、魔法の含有量、知識の深さ、将来性などの条件で選別された特権階級たちの集団だ。プライドの高い貴族たちだからこそまとめあげる組織が必要だからだ。
あまりないことだが、例えば団長がその下の部下のに命令したが、従わない場合がある。団長が庶民で部下が貴族の場合だ。その際ハーツが間に入る。ハーツは地位とは関係ないが、貴族同士のため貴族のメンツも保たれ仲裁をして揉め事もおさまる。
ハーツ所属が上の立場ばかりのメンバーで構成されているわけではない。将来性をみこしてメンバーに入るので下の立場のものもいる。上に相談するより相談しやすいしこじれにくい。
ダレンの中で一目置かれる存在だ。
選ばれし者にしか入る事が許されない、貴族の魔法使いの憧れでもある。
そして私、コレットもハーツのメンバーだ。家柄、魔法センスより選ばれた。
ハーツのメンバーは、紋章のブローチをつけている。魔石と宝石使って作られており輝いていてきれいである。たぶんこれも相当高い。
紋章の意匠は青地の楯の中央に上向きの剣。 その両脇にはフラ・ダ・リが置かれ、剣先には王冠が描かれている。フラ・ダ・リは 葉の細く長い形状が剣に似ていることから「剣を象徴する花」と言われている。ハーツの働きにより王と国が守られると言うことを表現しているらしい。
…なんかもう、いろいろ怖いね。紋章の意匠だけでも権力があることを伺わせるよね。あぁ、怖い。
そんなこんなで、小市民の割には上手く混ざって快適に過ごしている。
いや、そこそこなんて言ったら贅沢か。とても快適に過ごしている。 いや、過ごしてた。そんな関わったらガクガクブルブルの自分呪いをかけるなんて怖い。私以上に周りが黙っていないかもしれない。
あれ?もしかして私の小市民が見破れた?あいつ実は大したことないぞー、どうせやり返しとかあいつはできないぞとか。虎の威を借る狐だぞ。とか。
あっ、いけない。涙が…。