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新たな色人

「でねでね、研究所にテレビはあったんだけど、基本見るの禁止で、でもたまにハカセの見てないときにこっそり見てたけど~」

「そこで人間の生活とか言葉を学んだんだ」


学校の帰り道。ミドリの事件があってから一週間ほど経過したが、特に音沙汰なく過ごしていた。学校の登下校やバイトの行き帰りはアオかキイロがついてきてくれる。

アジトは新しい場所を見つけたようだが、前の反省を生かしてあかりは敢えて場所は聞かなかった。

最初はずっと監視されているようで億劫だったが、その生活にも慣れて、アオともキイロとも普通に会話するようになっていた。


「でもいつまでこんな状態続くんだろ・・・・」

「うう・・・・ごめんなさい~」

あかりが空へ放った独り言に、キイロは申し訳なさそうにうなだれた。


「いや、キイロくんが謝ることじゃないよ!むしろ、キイロ君たちも被害者なんだし・・・」

「そうなんだけど~」

「でも、あと残ってる色人は二人だよね?黒と茶色の人と・・・」


二人の特徴はアオとキイロに教えてもらっているが、それらしき人物があかりの前に現れたことはない。


「そう~。でも二人があかりちゃんを狙うかはわからないし、そもそもちゃんと生きてるかどうかもわからないんだよね~」

「・・・そう思ったら、よくキイロくんとアオくん、シロさんはよく再会できたね」

「シロを見つけられたのはたまたまラッキーだったけど、森から逃げるときに僕はずっとアオに張り付いてたから~」

「・・・何でそんなにアオくんが好きなの?」


「え~好きっていうか~憧れっていうか~」

キイロは顔を赤らめ、もじもじしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『う~・・・・!それッ!』

黄色の塗料を大きな鎌のような形に変形させ、目の前の大木に放り投げた。が、しかし木に当たる前に形を崩し、白い塗料となってしまった。


『・・・変形まで5秒。時間かかりすぎだ』

ハカセはタイムウォッチを見て溜息をついた。


『アナタはいつもとろいデスネ。いつもあなたの測定に時間かかるから迷惑していマス』

『ご、ごめんなさい~』

『謝る暇ならもう少し・・・痛っ』


キイロに嫌味を言っていたミドリだが、急に後頭部に何かが当たり、顔をしかめた。

『何ダ・・・?』

ミドリが後頭部を触ると、青の塗料が付着していた。振り返ると、木の枝の上で寝そべっているアオがいた。


『悪い。当たった』

『アオ、貴様・・・』

ミドリはアオを睨みつけた。


『おい、何やってる!研究所戻るぞ、ついてこい!』

『は、は~い・・・』


研究所へ戻るハカセの背中を見つめながら、キイロは溜息をついた。


『・・・ハカセは実験が終わったら人間に戻してくれるって言ってたけど、僕は人間としてやっていけるのかな~』

『知るか』

自虐気味に笑うキイロに、アオは冷静に返した。


『だよねえ~ははは~』

『・・・・・他の色人より出来が悪くても、あくまで色人としての話だから、人間になったら、どうなるかわかんねーだろ』

『えっ?』

『人間だったら、もしかしたらお前が一番凄い人間てことになるかもしんねーし。だから、ここでの評価が全てじゃないと思う』

『アオ・・・・・』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・て感じで、励まして?くれたんだよね~」

「・・・・・・・」


キイロとはある程度打ち解けて話せるようになったが、アオはまだ少し苦手だった。もちろん悪い人ではないとわかっているし、彼なりの優しさがあるのも理解できる。


「とにかく、僕、アオがいないと何もできないからさ~。アオの言ってることは全部正しいと信じてついていく~!」

「・・・・そう。・・・じゃあ、私、バイトだから」

「うん、終わるころに迎えに行くね~」


あかりのバイト先は駅前のファミリーレストランだ。従業員用の裏口から入り、更衣室へ到着すると、丁度あかりと入れ替えのパートの女性が帰り支度していた。

「おはようございます」

「おはよ~藤吉ちゃん♪」


制服に着替え始めたあかりに、パートの女性がニヤニヤしながら近づいてきた。

「藤吉ちゃん、彼氏できた~?」

「え、いませんよ?何で急に、」

「それ、彼氏からのプレゼントじゃないの~?」


パートの女性はあかりの首元を指さした。そこには小さなパールのネックレスが光っていた。


「これはそんなんじゃ・・・・」

「またまた~!あ、午前のゴミ出し忘れてた!」

「あ、私やっておきますよ?佐藤さん、もう上がりでしょ?」

「ありがと~藤吉ちゃん!彼氏によろしく~」

「だから違っ・・・・」

「はいはーい♪」


ご機嫌でからかってきたパートの女性はロッカーから荷物を取り出し、更衣室から出て行った。あかりは制服のブラウスのボタンを首元まで留めて、更衣室を後にした。


「あ、ゴミ出さなきゃ・・・」


ランチの分のゴミは、更衣室とキッチンの間の裏通路にまとめて置かれていた。ゴミ捨て場は駐車場の角にある。


「んしょっと・・・・」

あかりはゴミを抱えて、ゴミ捨て場に向かい、所定の場所にゴミを置いた。


「あ、タイムカード切ってからやれば良かった・・・・」

タイムカードはキッチンの中にある。ついつい、タイムカードを押す前に仕事を始めてしまっていた。

「まあ、いっか。まだ出勤時間間に合うし・・・・・・寒っ」


もう十月に突入する、少し肌寒い季節になってきた。街路樹の葉も赤くなってきている。


(今年の夏も、ほとんどバイトしてたなー・・・・)


〝彼氏できた~?〟


ふと、さきほどのパートの女性の言葉が胸をよぎった。


「そんなん全然ご無沙汰だな~・・・」


(最近なんてあんな子供たちとしか会ってないし・・・・!?)


「・・・・・!?」


急に胸に痛みが走り、あかりは胸をおさえてうずくまった。


(何・・・?急に・・・?!)


「ハア・・・ハア・・・」


息を切らしながら、あかりは目の前にあった大木に捕まった。


(え・・・・?木・・・?)


目の前にあったのはゴミ捨て場のはずだ。


自分の後ろに、誰か、立っている。


あかりが振り向くと大柄な男が立っていた。


「あなたは・・・・」


白いタンクトップに黒のパンツ。かなりの筋肉質。いかつい顔立ちにスキンヘッド。一本だけ編み込みされた茶髪が輪のように頭に巻かれていた。


「茶色の・・・色人」



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