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色人・アオ

『・・・叔父さん、いらっしゃい』


『こんばんは。夜遅くなってごめんね。もう寝てたかな?』


『・・・大丈夫。こちらこそ、わざわざ家まで来てもらって・・・』


『気にしなくていいよ。体の調子はどう?』


『やっぱ熱が下がらなくて・・・・』


『そうか。よく効く薬持ってきたから。もうそのまま寝てていいよ』


『ありがとう』


『・・・今日、お母さんは旅行だって?』


『うん。友達と温泉に行ってる。誘ってくれたけど、受験近いし、家で勉強したいから断った。熱出ちゃって結局寝てたけど(笑)』


『・・・それは〝可哀想〟に。お母さんは、明日帰ってくるのかな?』


『うん。明日のお昼に帰ってくる』


『そっか。それは良かった・・・僕と会うのは、まだ辛いだろうから・・・・』


『・・・それは、』


『注射用意できたよ。腕出して。ちょっとチクっとするからね』


『はい・・・痛っ』


『はい、終わった。あと、この錠剤も飲んで』


『え?これ薬?・・・・』


『水なしでそのまま飲める錠剤だから。即効性があって、よく効くんだ』


『は~い・・・・』


『そのまま寝てていいよ。戸締りして、鍵はポストに入れておくから』


『はーい・・・ありがとう、叔父さん・・・』


『どういたしまして』


『・・・・叔父さんとお父さん、〝中身〟は全然似てないよね』


『・・・そう?』


『うん。お父さんはすごい抜けてたもん。大学の講師なのに、教材とかしょっちゅう家に忘れてたし。前の私の誕生日プレゼントも、わざわざギリスで買ってきてくれたのに、帰りの叔父さんの車の中に忘れてったり、お母さんに買い出し頼まれて行っても、大体いつも違うもの買ってきてたし(笑)』


『・・・・そんなこともあったね』


『うん。・・・眠くなってきた・・・おやすみなさい』


『・・・・・おやすみ』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


藤吉あかりは刮目していた。


目の前で、とても信じられないことが起きていた。


それは、夏休み明けの高校からの帰り道。いつも通る裏通り。陽はあまり当たらず人気もない小道だが、家までの近道なのでいつもその道を通って帰っていた。

帰宅部のあかりは帰宅時間が早いため、今まで特に危険な目にあったことはなかった。


今日までは。


「私の邪魔をするんデスネ、アオ」

「・・・・・・」


あかりの前で睨み合う二人の男。

正確には、男性と男児。


一人は少しパーマがかった緑髪。身長は高く、百八センチくらいだろうか。大きな襟の白いシャツ、黒色のサルエルパンツの裾は黒いブーツに収められていた。鋭い目と大きな鷲鼻が特徴的で、年齢はおそらく二十代半ばだと伺える。


もう一人は青い髪色で百二十センチくらいの背丈、作業着のようなオフホワイトのつなぎ服をひざ下でめくり上げ、黒いショートブーツをはいている。首には黒いスカーフが巻かれていて、丸顔で年齢は十歳くらいだろうか。釣り目がちの大きな瞳の色は、髪の色と同じ青色だ。


帰宅中のあかりの進行先、すぐ五メートルほど前に緑の男が現れたかと思ったら、すぐに緑男の視線をさえぎるように青の少年があかりの目の前に降り立ってきた。


(なに・・この人たち・・・)


「・・・・わかりマシタ、容赦はしマセン」


独特な発音の緑の男は、自分のすぐ横にある、空地の緑色のフェンスに手をかけた。


「え・・・!?」


緑の男に握られたフェンスは意志を持ったかのようにうねりだし、大きな鋭い鞭へと形を変えた。


(なにこれ・・・・マジック?)


動揺のあまり固まってしまったあかりを尻目に、緑の男は緑の鞭を勢いよくこちらへ伸ばしてきた。


「・・・・・・!」


すると少年は間髪いれずに横にあった青色の自販機に手をかけ、自販機の側面をゴムのように引き伸ばし、巨大な盾に変形させた。


しかし、緑の鞭は自販機の盾を突き破り、少年は「伏せろ!」と叫んであかりに覆いかぶさった。そして、腰に巻いていたポーチから青色の〝何か〟を素早く取り出し、盾の裏から、緑の男に投げつけた。


「・・・・・ぐっ!」


少年の攻撃は鞭に気を取られていた緑の男の腹に命中し、男はその場に蹲った。


「・・・・・・・ええ?」

あかりは目を疑った。


うずくまる男の腹から流れ出た血液が・・・・緑色だったからだ。


「きゃ、きゃあああああ!」

「逃げるぞ」

「え!?」


混乱して叫ぶあかりと対照的に、少年は冷静にあかりに声をかけた。そしてそのままあかりの手を取って、緑の男に背を向けて走り出した。


「ちょ、ちょっと待ってよ!なにこれ!」

「アイツはあんたの命を狙ってる」

「え!?なんで!?てゆうか、あの人、死んじゃう・・・」

「アイツはこれくらいじゃ死なない。〝色〟を補給したら治る。そして回復したらまたあんたを追ってくる」

「え、え、!?」


男の方を見ると、男は自分の腹を押さえながら近くに生えていた雑草をちぎり、自分の腹に当てていた。


そして、その場に投げ出された鞭と、自販機の破片は・・・白色に変色していた。


(なにあれ・・・?どうゆうこと・・・!?)


「とりあえず逃げ切ってから話す。ついてこい」


あかりは震える足でなんとか少年について行くことにした。この少年が言っている意味が何一つわからない。

ただ、緑の男は確かに自分に凶器を向けてきた。この少年は守ってくれた。これだけは事実だ。


(何よこれ・・・何なの!!??)


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