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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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情報交換 前編

翌日の朝。起床時間よりも早く起きて、起き上がろうとするとシアと抱きしめあって身体が動かないことに気づく。


(ん?……あれ?)


なんで自分とシアが一緒に抱き合って寝ているのだろう、と寝ぼけた頭で考える。

少し経ってから顔の温度が上がるのが分かる。そうだ、昨日小っ恥ずかしい事を言って抱き合って寝たんだ、と。


「ん……ふぁ……」


どうやらシアも起きたようだ。自分に顔を埋めて欠伸をしている。吐息がとても暖かい。正直ドキドキする。


「おはよう、シア」

「ん……レテ君、おはよう」


まだ寝ぼけ眼なようだが、自分が手を離すと彼女も手を離す。そのまま自分は起き上がって下に降りる。


「今日は行く所があるから先に行くね」

「んー……気をつけてねー……」


そう言うとスヤスヤと彼女は二度寝に突入してしまった。余程昨日疲れたのだろう。

さて、相手が攻めてきた事だし情報共有といこう。洗面所で顔を洗いながらブレスレットに魔力を通した。



「……おや、師ですか。朝早くからなんの用でしょうか?学院は休みのはずですが……」


応答まで時間があったのと既にシャキッとした小さな声。恐らく朝から人の傍で仕事をしていたのだろう。本当にいつ休息を取っているのだろうと心配になるが、それよりも話したい事がある。


「ああ、休みだ。休みだからこそ、そっちに行って襲撃……特に影に関しての情報共有がしたい」

「……なるほど。私も今回得た情報があります。師にも共有しようと思っていた所なので丁度良いですね。玉座の間まで来て貰えますか」

「分かった。今からでいいか?」

「ええ、大丈夫です」


返答を得ると、万が一誰かに見られた時の為にフードの姿に変身しておく。

そして城の玉座の間へと門を開くと、その中に入った。


「失礼します」


玉座の間。イシュリア王が朝礼をかけ終わった後なのだろうか。多数の軍人がいる中来てしまった。

「何奴!?」


「イシュリア王には触れさせんぞ!」


王を護ろうとする忠義、誠に大義である。兵が一斉にこちらを取り囲み、魔術を放とうとしている。


(タイミング悪かったなぁ……アグラタム、朝礼やってるって伝えてくれよ……)


指パッチンをして魔力を放出し、魔術を構成させていた魔力を乱して霧散させると、イシュリア王の横でにこやかに苦笑するアグラタムを見つける。


(あのやろ……!)


兵はただの指パッチンで魔法を挫かれた事により警戒を強める兵を見ながらどうしたものかと考える。

とりあえず弟子は後で一発ぶん殴ると決めると、イシュリア王から号令がかかる。


「待て。その方は我の客人。傷つけることは許さぬ。だが我を護ろうとしたその心意気は嬉しく思うぞ。我はよい兵に囲まれておる」


警戒を解かれたので周りを見渡せばなんと父さんまでいるではないか。思わず父さんと呼びかけてその言葉を飲み込むと、兵に謝罪をする。


「……このようにいきなり現れ、警戒させた事。詫びよう」

「そうか、あんたさんが噂の……」


父さんが剣を納めてそう言うと皆も納得したようだ。そこにアグラタムが追い打ちをかける。


「そうだ。我らが民、流浪の民であるフードである。……済まないな。このような形でしか姿を皆に知らせることは出来ないのでな」

(知らせなかったのはわざとかよ……!)


やっぱりこの弟子は殴ろうと二度目の決心をしながら王の前に片膝を着く。


「フード、ここに参上致しました」

「ご苦労である。フードは流浪の民にして我らの目の届かぬ情報を拾う者。これより守護者と三人で会議にはいる故、これにて解散とする。本日も死ぬことなかれ!」


王の鶴の一声により、兵は各自の持ち場へと戻っていく。


「それでは参ろうか」

「えぇ、こちらの情報とそちらの情報を擦り合わせましょう……が、その前に」

「ん?その前に……どうかしたのか?」


王が首を傾げる中、無言で階段を登り、アグラタムの傍まで行く。


「……わ、私に何か着いていますか?」


明らかにそっぽを向いて白々しく言う彼を思いっきり魔力でぶん殴る。


「うぐえっ!」

「朝礼で人が集まっているなら先に言え、先に!こんなサプライズみたいな事をするな!」


殴られた頬を痛そうに摩りながらアグラタムは涙目で弁明する。


「い、いや、これは王が……」

「……私がどうかしましたか?アグラタム?」


ニッコリとイタズラ顔で微笑むイシュリア王を見て察する。なるほど、そういう事か。つまりイシュリア王の命令だった訳だ。


「……不憫だな。アグラタム」

「殴った本人に言われたくはないですよ、私は……」

「あらあら、ふふふ……」


子供の様に笑うイシュリア王を見ながらため息を着くと、会議室へと向かう。

会議室……と言っても国のトップ二人が使う部屋。何重にも結界が敷かれており、居心地も良い。


「……なるほど、この結界があれば姿を解いても問題はないな」

「お気づきになられましたか。はい。素の姿で大丈夫ですよ、師よ」


そう言われると何処からか子供用の椅子を持ってくる弟子の前でフードの姿を解く。


「……やっぱり可愛いわね、私の膝の上じゃダメかしら?」


イシュリア王に子供用の椅子と見比べながら問われるが、全力で断る。


「い、いや、やめておきます……」

「あら……残念。でも時間は限られていますし、早速情報の共有といきましょうか」


そう言うと三人全員が席に座り、真剣な空気を作り出して会議を始めた。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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