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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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武術

「なん、なんだ……?」


先輩らしき人が呟く。影が一斉にこちらを見てくる。

建物の中を荒らすわけには行かない。両手に光の剣を顕現させると、襲いかかろうとした影を身体を捻るようにして両手の剣で掃討しながら中へと入る。


「やあ、また会ったね」

「あれ、ニールさんじゃないですか」


にこやかな男の子の笑みを浮かべながら影をぶっ刺す彼に自分も影を切り伏せながら挨拶する。


「数時間ぶり」

「……耐えていたか、良かった。ナイダ」


横薙ぎで影を片付ける彼女の声を聞いて安心する。とりあえず武術学院はまだ持つことが分かった。


「手短に。私の特異能力は『武具生成』。武器が足りなくなったら言って」

「なるほどね。それは助かる。とりあえず剣をくれる?」


如何せんこの後魔術学院の方の救援にも駆けつける可能性がある。少しでも魔力は温存しておきたい。


「わかった。はい」


空中から生み出された剣を受け取ると、向かってきた影を一つ、二つと斬る。


「扱いやすいね。ありがたい。さて、これどうしたら終わるのかな」


グラウンドの時の影は大元の影がいたが、こちらはそれと比べればまだ少ない。普通に門から出てきているのだろう。閉じない限り出続ける、ある意味無限だ。


「それが分かったら苦労していないよレテ君。とりあえず僕達は出てくるこの影をひたすら倒し続けるだけだ」

「そうですね、ニール先輩。やりましょうか」


そう言って武術学院の先輩達と共に影を切り伏せていく。しかし本当に減らない。いや、減ったそばから出てくるといったところか。もうキリがない。


「いっそ門を無理やり閉じます?」

「……うん?」


自分の発言に一瞬手が止まったニール先輩のフォローにナイダが入る。ありがとう、と礼を言いながら槍を巧みに操りながら聞いてくる。


「門を無理やり閉じる。そんなことが可能なのかい?」

「正直できるか分かりませんけどね。ただジリ貧な以上試す価値はあるかと」


そんな話をしていると、外側の影が水の槍で吹き飛ぶ。


「なるほど、レテ君はそれが出来ると思っているのだね?」

「!スイロウ先生……はい。まだ試してはいませんが」


自分がまだ動けなかった頃はよく帰ろうとしたアグラタムの門を閉じて泣かれたものだ。これがアグラタムのものと同じ性質のものかは全く分からないが、やってみる価値はあるだろう。


「では試すとしよう」

「援護は任せて、中に」

「ほら。主役なんだから守られてくれ?」


スイロウ先生、ナイダ、ニール先輩が援護してくれて真ん中に入る。

目を閉じて、門に意識を集中する。


(……アグラタムの術とはやはり全くの別物だな。こちらは闇属性だけで構成されている、歪な悪意のある門だ)


そう考えながら閉じる方法が無いか必死に頭を回転させて考える。


(光を転送……ダメ。相殺しきれない。闇……は増幅しそうだな。他の属性も一通り試してはみるか。……火ダメ、水ダメ、風ダメ、土ダメ。四属性とも封鎖することが出来ないな。アグラタムの時は光と闇を分解することで出来たんだが。これ一体闇と何で構成されているんだ?)


目を開けると、はっきりと言う。


「すみません。ダメでした。やっぱり戦い続けて耐えるしかないみたいです」

「まぁ仕方ないか。門を閉じるなんてこと、アグラタム様にもできるか分からない荒業だからね」


ひたすら襲おうとする影を先輩方は交代制で入れ替わって戦い続けている。ニール先輩はまだまだ行けそうだが、ナイダが辛そうだ。


「ナイダ。武器の生成が途切れたら元も子もない。下がってくれるか?」

「……分かった。一旦下がる」


そう言って下がるための道を影をぶった切って物理的に切り開くと自分が前線に出る。代わりにナイダは中に入る。

出続ける影に自分も少し疲労してきた。思えば自分だけを襲ってきた影を撃退してからずっと戦いっぱなしである。


「……レテ君。君もやはり少し休んだ方がいい」

「スイロウ先生、ですが……!」


反論しようとしたところに、ニール先輩が諭すように言う。


「休むのだって戦いのうちだよ。さあ、中に」


真ん中にいた先輩方がその言葉に合わせて道を開いてくれる。不甲斐なさを感じながら真ん中に走り込むと、床に片手を着く。


「レテ、貴方は限界。少し休んで」

「……」


無言で万能では無い自分に無力さを感じていたその時。


「いやぁ、よく耐えてくれたね!ありがとう!こっちにも少し出ちゃって気づくのが遅れてごめんよ!」


こちらも数時間前に聞いた声が疾風の如く走り、影を葬り去る。


「ミカゲ先生……」

「いやぁ、皆よく耐えてくれたじゃないか。……おや、スイロウ先生!貴方もここにいるのかい!」

「少しばかりの援護でですね。ミカゲ先生、終わらせる方法はあるのですか?」


少しだけ生まれた余裕で問いかけを聞いていると、ミカゲ先生は首を横に振った。


「いいや。私には分からないよ。ただ……コイツらをねじ伏せ続ければいいのは分かっている」


そう言った時だった。

リーン……リーン……


「鈴の音だ……」

「撃退したんだ!」


そう言うと共に、門から最後の抵抗とばかりに大量の影が出てくる。それを最後に門が閉じた。


「よし、ちびっ子とスイロウ先生。少し退いていてくれるかい?」


そう言うとミカゲ先生は力を溜め始める。スイロウ先生が素早く水を床にぶつけて距離を取ると共に、ミカゲ先生が不敵な笑みで言い放った。


「これが私の武術だ!」


そう言うと共に、影の間を剣を持って穿いていく。

貫き終わった後。先生が剣を左右に振ると同時に左右にいた影が斬撃で刻まれていく。


「私の特異能力は『威力伝播』。離れないとちょっと医務室行きだからほら皆離れな!」


そう言って離れていく自分達を見て、ニコリと笑った。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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