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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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グラウンドの影

俺を狙う影がいるのがわかる。それを下からスイロウ先生や先輩達が必死に撃ち落としている。


「っ、はぁ、はぁ……」


割と高い螺旋階段の頂上まで辿り着くと周りを見渡す。

どこを見ても影、影。人型の影である。


(どこだ……どこかにあるはずだ……!)


周囲を注視する。ラクザではこんな無制限に湧いてくる事はなかった。だからカラクリか何かがあるのだと信じている。

右を見て、左を見て。身体も回転させながら探し続ける。


「まだかクロウッ!そろそろ降りねえといよいよもってこっちも限界だぞ!」


ショウの焦った声が聞こえる。それもそうだろう。彼の魔力と顕現の力でこの螺旋階段を維持するのはそんなに長くは出来ない。戦っていた今までなら、尚更。

ふと、考えが閃く。何故異界からの侵攻とは言えこんなに無制限に敵が出せるのか。


(門に何かあるのか……?)


ワラワラと下が押される中、門に向かって岩の槍を打ち出してみる。

すると門に当たった瞬間にそれが消え、代わりに微かな悲鳴が聞こえた。

これで確定的ではないが、掴んだ情報がある。苦しそうなショウの為に螺旋階段を駆け下りると、叫ぶ。


「門に魔力に供給しているやつがいる!だから奴らは無制限には湧くけれど言葉は発さない!」


それを聞いて皆がハッとしたように気づく。


「確かに……意思があったかもしれないが声は出してねえ」

「ふむ。して、その魔力を供給している大元はわかるかね!?」


ショウの納得と、先生の質問が飛んでくる。が、情けないことに先生の質問には答えられない。


「すみません。微かな悲鳴が聞こえただけで……場所までは……」

「くっ……そうか、それでも大元がいるということがわかっただけ前進だな」


先生が影を撃ちながら言う。しかし徐々に押されている。何か救援でも無ければ……。そう思った時。


「な、なんだ……?」


先輩の誰かが呟いた。スイロウ先生も、先輩方も、先輩の先生も、自分も、ショウも一瞬呆然とした。

目の前を囲むようにして追い詰めてきた影の尽くが、上空から降ってきた光の騎士に踏み潰され、蹂躙されたのだから。



(あぶなっ!急いで良かった……)


レテは安堵していた。自分が間に合ったことに。

囲われているのを見て咄嗟に光の騎士を顕現させて降らせた。一先ずは空いたスペースに陽炎のまま入る。……ショウとクロウの横だが。


「間に合って良かったよ」


クロウに向かって小声で言うと、クロウがお化けでも見たように驚く。


「うわぁっ!?レテ、おま、お前どこから……!」


その声にスイロウ先生が反応する。


「レテ君!?共に訓練など……おぉ!本当だ!いるではないか!ではこの騎士は君が?」


若干の猶予が出来た時間に問いかけられる。こくりと頷くと、また目の前を見る。

それを見た上級生の人が唖然としている。助っ人が来たと喜ぶ人もいれば、いくら神童だからってこの状況はキツいと言う人もいる。しかし未だ気は抜けない。


「でもまだまだ来るみたいですね。どれだけいるんですかこれ……」

「それについてなんだが、レテ」


クロウから情報があるようだ。再び騎士を前面に押し立てて話を聞く機会を作る。


「この影は話さない代わりに魔力供給を受けてどこかから門に来ているみたいなんだ。だから魔力供給をしている大元さえ叩くことが出来れば……」

「なるほどね。で、その肝心の影の場所は……」

「……分からない」


だよね、と思いながら影をまた倒す。


「少し時間を稼いでください!」

「またかよ!?」


ショウが文句を言ったところを見ると、遠くから見えた螺旋階段を作ったのも彼だろう。魔力がカツカツかもしれないが踏ん張ってほしい。


「ふむ。その考えは?」


別学年の先生が問いかけてくる。それに向き合うと、はっきりと言う。


「自分がグラウンド全体を魔力で感知します。そうすれば魔力供給しているという影の場所が魔力に反応して引っかかるはずです」

「……神童。その名は伊達では無いということか。では任せたぞ!」


その一言と共にほかの皆が影を抑え始め、自分は目を閉じて光の魔力による探知を始める。


(どこだ……どこにいる……)


北も南も、全方角全てを魔力で探知するも異質な魔力が見つからない。


(……ん?そういえばクロウはどうやって魔力供給している影が分かったんだ?)


ふと考えてクロウに聞いてみる。


「クロウ、何で魔力供給している影が居るって分かった?」

「え?ああ、門に土魔法で攻撃したら微かに悲鳴が聞こえてきて……それだけなんだが」


それを聞いて感知のやり方を変える。光ではなく、土の魔力を探すように。門を重点的に見るようにする。


「……なるほど、分かった!」


感謝を述べながらもう一度探知する。


(クロウが攻撃した門は……これか!確かに土魔法の跡が残っている……そしてそれが繋がった先は……北の観客席の真下!?影の中に潜んでいるってことか!)


魔力探知を切り、思いっきり叫ぶ。


「敵の大元がわかりました!敵は影の中に身体を隠しています!場所はここから北の影の真下!そこに光魔法を当てられれば……!」


それに反応したスイロウ先生が頷く。


「ではもう北に突撃するしかあるまい!一点突破だ!」

「そうしましょう。……精霊召喚は、使えそうかい?」


その言葉に先輩の先生が頷く。よく見るとこの前精霊召喚を見せてくれた先輩もいる。


「はい。なんとか……」

「では北に一点突破で行く!……三、二、一……今!」


カウントダウンが終わった瞬間に一斉に威力の高い魔法が北方向の影を薙ぎ払い、自分とスイロウ先生が北へ向かう。途中湧いた影は精霊と騎士が抑えている。


「っ!ここです!」

「うむ!レテ君、任せた!」


グラウンドの真下までたどり着くと、思い切り地面に光の玉をぶつける。


「ガアアァァァ!?」


すると影に隠れていた影が姿を現す。その悲鳴の隙にスイロウ先生が魔法で水の剣を作って切り裂く。


「大元は断ち切った!後は掃討するだけだ!」

「「オオォーッ!」」


スイロウ先生の叫びとともに皆が残った影を処理していく。

数分後。グラウンドには敵は一体残らず掃討されていた。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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