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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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強襲の鐘

「ま、私はこのぐらいにしとくかね」


ミカゲ先生が立ち上がると、ヒラヒラと手を振って立ち去る。


「それじゃあね!他の子も鍛錬を怠るんじゃないよ〜」


軽い感じで休憩室から去っていく。それを見ながらお菓子をまたボリボリと食べる。


「……美味しいよね。お菓子」

「うん。運動した後の塩分補給に最適」

「いやそういう事じゃなくてね?」


ツッコミを入れながらも二人して休憩室でお菓子を食べ続けていた。




「……ジェンス総長」

「やあ。ミカゲ先生」


ミカゲが休憩室を出て院長室に戻ると、ジェンス総長が本をパタンと閉じて視線を向けてくる。


「一応これでも魔術に精通はしているつもりでね。防音結界の中をこっそり聞かせてもらったよ」

「……っ!」


事前情報を一部の生徒だけにばらしたとなればクビが飛んでもおかしくない。そう思った。


「……なんの用事でしょうか」

「いやいや、勘違いしないで欲しい。私は怒っている訳では無いのだよ。むしろあの二人に先に知らせた君の覚悟を賞賛している」


首を傾げながら頭にはてなマークを浮かべる。何故賞賛されるのだろう。


「Sクラスの中でも特に狙われるであろう二人。その二人に発表前に警告をすることで注意を促す。正義感の強い二人だ。バラそうとはしないが仲間を守ろうとするだろう」

「……一体、何を仰りたいのです?」


ジェンス総長の考えが読めない。すると窓の外を見ながらジェンス総長が言う。


「二人とも近年稀に見る神童だ。無論大人や正規の軍人には今は劣るが成長すれば二人とも軽々と超えていくだろうね。その二人に私が両学院長にのみ伝えた情報を警告として伝える……。将来性を護るには時に立場を捨てる覚悟もしないといけない、とね。その覚悟に賞賛を送るよ」

「ありがとう……ございます」


外を見たままのジェンス総長に礼を言う。


「……これからも生徒を守る長であれ。かつて私たちがイシュリア王に育てられたように。ときに危険を顧みず、ね。頼んだよ」

「はっ!」


そう言って立ち去るジェンス総長を見ながらミカゲは考えていた。


(正義感だけで生徒は自分を護れない……警告する事自体に何か重要な意味があったのか……それを読んで私達に情報を渡したのか……底が見えないお人だ)


そう思いながら貯まった書類を見てゲッソリする。


「毎回思うけど学院長ってなんでこんなに面倒な書類ばかり回ってくるのかねぇ……」


やれやれ、と独り言を呟きながら椅子に座って重なっている一番上の書類を手に取った。


(そういえば、ナイダは何でレテがラクザにいたって知っていたんだい?……ナイダもいたのか?)



「レテ、今日はありがとう」


午後五時。そろそろ魔術学院に戻る時間だ。ナイダから礼を言われると、ポリポリと頭をかいてこちらこそ、と返す。


「また模擬戦……よろしく。今度こそ勝つから」

「はは……お手柔らかにね」

「レテ相手にお手柔らかにしたら跳ね返されるだけ」

「……なんか酷くない?」


ナイダの至って真剣な言い方に軽くショックを受ける。模擬戦だからといって本気の本気を出せるわけない。きちんと合わせるつもりだ。


「それじゃ、また」

「ああ。鍛錬をしよう」


そう言ってハイタッチをすると、自分は武術学院の寮を抜けて魔術学院の寮を目指した。



「ん?まだやってるのか」


寮に戻ってきて厨房を覗くと、シアとニア。それにダイナとレンターまで混ざって何かやっている。料理なのだろうが、わちゃわちゃしていて楽しそうだ。


「えーっと、塩……塩……」

「ニア〜それは砂糖〜」

「……塩はこっちだな」


邪魔をするのも悪いと思って、自室にコソコソっと戻った。

自室に戻ると、ごろんとベッドに転がる。


「ふぅ……」


ナイダと鍛錬をしたからか、身体が疲れているような気がした。

解すように寝返りを打ちながら睡魔が襲ってくるのを感じ、そのままスヤスヤと居眠りしてしまった。



「うーん!いっぱい手伝った!」

「ほっほ。朝からありがとうねぇ。それにしても皆お手伝いが好きだねぇ」


伸びをしながらオバチャンにお礼を言われると、えへへと笑う。


「ねー!シアは貯めて買うものがあるんだものね!」

「ちょ、ニア!それ以上は……!」

「分かってる!秘密だよね、ヒミツ!」


その言葉だけでダイナとレンターは何かを察したのか、頷く。


「いいんじゃないかな〜?」

「……うん。良いと思う」

「……何となくバレてそうなの、釈然としないなぁ」


プクッと口を膨らませると皆が笑う。


「さあさ!ここからはオバチャンが仕上げるから大丈夫だよ!皆ありがとうね!」

「こちらこそ!」


皆で頭を下げると、オバチャンは正規の従業員の人と仕上げに入ったので厨房から出ていく。


「いや〜疲れた……」

「シアとニアはね〜朝から手伝ってたんでしょ?そりゃね〜」

「……俺たちは昼からだったが朝からともなると相当疲れただろう」


皆で椅子に座って雑談する。他のクラスや上級生の方も話していたりしてホッコリとしていた。そんな時だった。

ゴーン……ゴーン……


「っ!何!?」

「侵攻だね、とりあえず一箇所に固まろう」


上級生が先生と協力して人を一箇所に集める。


「ま、異界には平日も休日も無いわよね」

「そうだね」


ニアの言葉に頷きつつ、終息を待つ。


(でも何か……嫌な予感がする……)

いつも読んでくださりありがとうございます!

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