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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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武術学院で過ごす一日

特異能力の出来事があってから数日。何やかんや皆そこまで自分達が持っている特異能力が怖いとは思わないみたいで、そこは良かったと思っている。


そして休みの日が来た。今日はシアが早々にオバチャンの手伝いをしてくる、と言って一日厨房の中にいるらしい。それをオバチャンが許してくれるかは別だが。

それはそうとして、自分も折角だから武術学院の方の図書室にでもお邪魔しようと思う。フードとして軍に顔がバレた今、そっちに訓練しに行くのはとても気まずい。

ごろんと布団から起き上がると時計を見る。十時。全然大丈夫だ。

降りると、せっせと動くシアとニアが見えた。シアは聞いていたが、ニアまでお手伝いとは。二人とも楽しそうに何かを手伝っている。それを横目に見ながら、自分は寮の扉の方へと歩いていった。

武術学院の読み物は魔術学院とはまた違って、身体の鍛え方や動かし方。武器別による基礎的な訓練法などがあった。まずは身体の鍛え方の本を読んでいると、横から声をかけられる。


「レテ」

「ん?……ナイダ。君もここに読みに来たの?」


短く伝えてくる彼女はこくりと頷く。見ればその手には何冊かの本が積み重なっている。


「隣、いい?」

「いいよ。ちょっと待ってね、そっちにある本を……よっと。はい、どうぞ」


自分が興味のある本をぽんぽん選んで持ってきてしまったので横にも本が置いてあったのだ。それを上に重ねると、横の席を譲った。


「意外。レテがこんなに本の虫だとは思わなかった」

「魔術だけ使えても、いざとなった時身体を動かせないとね。それにこっちの本はあんまり読んだことがないからついつい……ね」


彼女が座ると、お互い黙々と本を読み始める。どうやら彼女も中々に知識を求めるタチらしい。

集中して本を読んでいると、何やら横からじっと視線を感じる。

横を見ると、本を全て読み終わったナイダがこちらを見ている。何か用事でもあるのだろうか。


「どうしたの?ナイダ」

「そろそろお昼ご飯の時間。私は行くけど、レテも良かったら一緒に食べると良い。知識の吸収には栄養が必要」


そう言われて図書室の時計を見る。針は一時を示していて、確かにお昼ご飯の時間であった。


「ありがとう。気づかなかったよ」

「どういたしまして。それで、どうする?」

「一緒に食べさせてもらうよ」


そう言うと今読んでいた本を閉じると、本を元の場所に戻していく。ナイダも本を片したようだ。


「それじゃあ行こう」

「うん、行こうか」


武術学院のお昼は、当然といえば当然だが魔術学院と似ている。ただし身体を動かす人が多いからか、味つけが濃かったり、肉が少し多めなど様々な違いがある。


「頂きます」

「頂きます」


ナイダが手を合わせて言うのに合わせて自分も言う。

モグモグと食べる。うん。美味しい。ソースの味付けが魔術学院のよりも濃いのは新鮮だ。他の人は何か話しながら食べているが、自分達はひたすら黙々と食べている。ナイダがあまり話したがらない性分でもあるのだろう。


「ふぅ、ご馳走様でした」

「早い。……もう少し待って」

「ああ、急いでないから大丈夫だよ」


自分の方がついつい珍しさに早食いしてしまったようだ。ナイダも結構な早さで食べているが。


「ご馳走様でした。……お皿を下げに行こう」

「うん」


なんか、武術学院でナイダと過ごす休日になっている気がする。それはそれで悪くないけれど。

お皿を下げて、図書室に戻ろうとすると彼女から待ったがかかる。


「もしレテが良ければ模擬戦がしてみたい」

「模擬戦?」


思わず聞き返す。魔術学院では模擬戦をした事がなかったのだが、もしかしたら両学院模擬戦が出来るのかもしれない。


「そう、模擬戦。模擬戦用のスペースがあるからそこで戦ってみたい」

「うん、じゃあ少し休んだら行こうか」

「ありがとう。私の我儘を聞いてくれて」


そう言って食休みがてら二人で知識を伝え合う。やはりナイダは魔術にも精通している。こちらが軽く言った言葉を自分なりに解釈して飲み込む。これが本物の天才なのだろう。


「私はそろそろ大丈夫。レテは?」

「自分も大丈夫。場所の案内お願いするよ」

「任された」


そう言うと外に出て、数分ほど歩くと訓練場らしき場所が見えてきた。

丁度お昼ご飯の終わりだけあってか、自分達が一番最初に使える感じだ。


「ラッキー。ついている」

「やっぱり人気なんだね」

「うん。かなり」


そう言うと自分は木刀を手に持つ。うん。大丈夫だ。

ナイダも木刀を手に持つと、対峙する。


「一応ルールの簡単な説明。基本的には相手が反撃できなくなったら終わり。魔法は自分の動きや武器に付与する事だけ許されている。相手に直接ぶつけることは基本的には許されていない」

「あぁ……基本的にね。了解。因みに自分で武器を作り出せる場合はどうなるんだ?」


多分高学年にもなると魔術と組み合わさって魔法がついつい飛ぶのだろう。だから基本的になのだ。


「武器を作る場合も大丈夫。ただし殺傷能力の高すぎる武器はダメ。基本的に寸止めで終わらせること」

「なるほどね。ありがとう」

「今の説明で大丈夫?」

「大丈夫。早速やろうか」


そう言うと、ナイダと離れて反対側にいった。


「お?ナイダー!」


外から声が聞こえてくる。ナイダの友達であろうか。


「貴女が模擬戦なんて珍しいから見せてもらうよ!」

「わかった。レテも大丈夫?」

「ん?ああ、大丈夫だよ」


そう答えると改めて構える。


「じゃあアタシが合図をするよ!」


そう言ってナイダの友達……だと思う人がベルを取りだした。


(ふぅ、純粋な剣技だけで戦うのなんて……初めてか?)


割と初めてな気がしなくもない。そんなことを思った。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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