表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
74/270

特異能力

「おお……皆威力が上がったなぁ!この七日間の間に何があったんだぁ!?」


実技訓練の時間、スイロウ先生の的を皆が遠慮なく破壊している。自分の教えた魔力を意識する方法が役に立ったようで何よりである。


「ちょっと家に家庭教師……みたいな人が来てて!」

「……丁度休暇だって言ってたから、教えてもらった」


ファレスとフォレスが説明する。確かに、捉え方によっては屋敷に家庭教師がいたようにも取れるだろう。かなり曲解に近い捉え方にはなるが。


「なるほどなぁ!Sクラスとはいえ、ここまで威力を出せる一年生は稀だなぁ!うんうん、先生は嬉しいぞぉ!」


嬉しそうな先生はどんどん的を増やしていく。それをダイナが風の広域化系統を使って一気に吹き飛ばす。


「おぉ!系統も教えてもらったのか!さぞかし腕の立つ魔術師だったんだろうなぁ!」

「俺達全員、とりあえず教えてもらいましたからね。時間がない分鬼畜メニューでしたけど!」


ショウが自信満々に答える。鬼畜メニューとは酷い言われようだが頻繁に魔力切れ寸前まで追い込んだし鬼畜と言われても仕方ないだろう。


「ふむ。今教えられる科目は無さそうだなぁ。……そういえば四年生がこの時間、別の訓練場で特異能力の鍛錬をするって言っていたなぁ。見に行くかぁ?」

「え?先生、それは見に行って大丈夫なんですか?」


自分が思いっきりツッコミをいれる。特異能力は存在そもそもがレアなもの。その鍛錬ともなれば一部の生徒しか持っていないだろうし、何より秘匿したい事もあるだろう。自分のとかも秘匿したい部類である。


「一応許可が出るか聞いてくるから少し待っててほしい!」


そう言うとスイロウ先生は別の訓練場まで走っていく。それを見ると、皆が話し出す。


「特異能力、ねー」

「……このクラスが多すぎる」


確かに。自分にシア、ファレスにフォレス、ニア。最低でも五人は居ることになる。


「一応ね〜僕も持ってるんだよ」


ダイナが爆弾を投下したので六人。過半数を超えた。


「ダイナの特異能力って何なんだ?」


クロウが聞いている。それは確かに気になる。ダイナがラクザでも使った記憶はないし、戦闘向きではないのかもしれない。


「ん〜秘密!」

「まぁ……そうだよな」


特異能力は言うも言わないも本人が決めること。それに関して異を唱える人はいなかった。


「そういえば、レテって持っているのか?」


クロウがこちらに問いかけてくる。持ってはいる。いるが……。


「持ってるけど今はまだ秘密、かな。多分水晶に出てきた単語だけじゃ想像できないと思うし」

「そんな能力があるのか……」


そう言ってごくりと唾を飲む音が聞こえると、丁度スイロウ先生が戻ってくる。


「オッケーを貰えたぞぉ!ただ、他言無用だからそれを守れる子だけだ!守れる子は手を挙げろぉ!」


自分も含め、全員が手を挙げる。それを見ると満足そうに頷いて、スイロウ先生が言う。


「じゃあ見に行こうかぁ!特異能力の鍛錬……つまり、特異能力とは何なのかってやつを!」



少し離れた場所に行くと、四年生と見られる人達が並んでいるのが見えた。恐らく特異能力の訓練ということでクラス関係なく集まっているのだろう。


「今来たのは今年のSクラスの一学年。くれぐれも他言はしないでおくれよ。後、失敗しても笑わない事。何せ特異能力は制御しきれない人の方が多いからな。わかったか?」

「はいっ!」


自分が返事をすると、皆続いて返事をする。もしかしてダイナが明かさなかったのも、制御が効かないからかもしれない。


「よろしい。……では、頼んだぞ」

「は、はい!」


皆に見られている中、多数の人型の的が用意されている場所で先輩が緊張気味に声を上げる。


「……我が祈りを捧げる。舞い降りたまえ!『精霊召喚』!」


すると燃えるような熱い風が吹き、そこに人型の炎が存在していた。


「特異能力とは本人その人から生まれるもの。君は火属性が得意だから火の精霊が召喚されたようだね。さぁ、命令してみてくれ」


先生が言うと、先輩が緊張しながらも精霊に命令する。


「せ、精霊よ!あの的を壊せ!」


指をさし、命令する。すると精霊は立ち上がり、人型の的を炎を纏った手で一つ破壊し、止まる。


「おぉ……!」


四年生が声を上げる中、自分達はじっとその光景を見ていた。


(精霊を召喚するんだ。その真価はまだまだ、そんなものじゃないはず)


そう思っていると、先生がぱちぱちと手を叩く。


「素晴らしい!まず能力を使えた事、そして命令を聞いた事は実に良い事だ!」

「あ、ありがとうございます!」


先輩がぺこりと頭を下げる。するとその上に被せるように先生が声をかけた。


「だがまだ精霊召喚の能力は発揮出来るはずだ!次は動く的を作る故、精霊に破壊させてみるといい」


炎の精霊が一旦主人である先輩の元に戻ってくると、動く的……人型で、動く的。人間のような的が作り出される。


「さあ、やってみるといい!」

「は、はい!精霊よ!あの的を……人型の的を全て壊せ!」


そう言うと精霊は突進し、的を蹴りで壊すと、その的の破片を持ってもう一つの的を破壊。次々と破壊していく。


(おお。これは壮観だ)


おおぉ……と感嘆の声が響く中、突然先輩が悲鳴をあげる。


「あっ、あぐぁ……!ぐぁぁ……!」

「っ!いかん!直ぐに精霊に帰還するように命令するのだ!」

「せ、精霊よ……帰還せよ……!」


先輩が頭を抱えたまま命令するも、精霊は戻らなかった。それどころかこちらをみている。


「……まずいな」

「えっ?」


自分が漏らした声にシアが反応する。この状況は、本で読んだことがある。


「特異能力っていうのは制御し切れない例が度々あるのはファレスとフォレスの件で知っていると思う。その中でも精霊召喚で起こりやすい制御の失敗は……精霊の暴走だ」

いつも読んでくださりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ