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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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ラクザへの救援

「早馬を用意出来る従者は直ぐに準備を!戦闘の出来る方は武装を整えて!今すぐに出発します!」


フレッドさんの的確な指示により人が動く。しかし、自分はそれでは間に合わないと思っている。


(ラクザへの襲撃……こんな平和な世の中、しかも今は休みの期間で護りを固めるラクザに襲いかかる賊はいないはずだ。だとしたらあの不気味なやつらか……)


タルタロス、と言った不可思議な連中を思い出しながら刻一刻と迫る緊張の中、フレッドさんに声をかける。


「フレッドさん!早馬を準備するよりも戦闘員の準備を!自分に考えがあります!」

「しかし、いくらレテ殿といえどもラクザまで早馬より早くは……!」


到達できない、と言いかけて自分の目を見たのだろう。

自分は本気でラクザに辿り着かせるつもりだ。今から行っても夕方、もしくは夜。そんな中戦闘をするのは無謀だ。


「……わかりました。ただし、早馬を準備し終わるまでです。皆!先に武装を整えなさい!早馬は最後に!」


その掛け声を聞くと同時に、ブレスレットに魔力を通す。勿論繋げた先は守護者……弟子のアグラタムである。


(アグラタム!応答しろ!)



「師ですか?どうしましたか?一刻を争うような声ですが」


自室で政務をしていたアグラタムがブレスレットからの連絡によりその手を中断させ、その内容に耳を傾ける。


(ラクザの街が襲撃されているとの矢文が届いた!あのラクザを襲撃するんだ。金や宝じゃないだろう。十中八九、自分はそこに集まった『人』が目的だと考えている!アグラタム、自分はラクザの座標が分からない。だから一瞬でいい。お前がラクザに飛んでくれ!)


「っ!ラクザが!?了解しました!ラクザに飛び、門を確認次第私は戻ってこちらの兵を集めて援軍に向かいます!」

(頼んだ!)


そう言うと直ぐにラクザの街への道をイメージして、門を繋ぐ。

門をくぐれば一瞬にしてラクザの街に辿りつく。確かに金属や魔法の音、それに悲鳴が聞こえる。

ぐっと口を噛み締めながらも師に連絡をとる。


「ラクザに到着しました!」

(でかした!今門を開く!)


「レテ君、ブレスレットを見てずっと何かやってる……」

「……ブレスレットに、何か秘策があるのかもしれない」


ラクザの娘である双子は心配そうにこちらを見てくる。だが、大丈夫だ。今座標が確認できた。これでラクザへ飛ぶことが出来る。


(開け!)


そう闇と光を交えて念じると門が現れる。唐突な異物に皆動揺しているようだ。それは従者やフレッドさんも同様である。


「この門を通ればラクザに辿り着きます!今は信じてください!武装が出来た人から、この中へ!」

「……門……ですと……?いえ、今はそれどころではありません!レテ殿の言う通り、準備が終わった者から中へ!事態は一刻を争います!我らが主のために!」


そうフレッドさんが号令を出すと、比較的準備が早かった魔法使いが先に飛び込んでいく。


「自分は行くけれど……皆はここで待っててくれるか?この先は危険だ」


他のクラスメイトに宥めるように言うが、皆が顔を横に振った。


「レテ君だけを行かせられない!私の、私たちのラクザをこのままじっと指をくわえて待っていることは出来ない!」

「……例え、それが危険を伴うものだとしても」


頑固な二人だ。だが、それでも行かせるわけにはいかないのだ。死なせないために。


「分かっているのか!?この先は本物の戦場だぞ!下手をすれば命を……いや、命を落とす確率の方が高いんだぞ!」

「だからレテ、お前はその為に俺たちに技を!生き残るための術を教えたんだろ!?」

「……っ!」

「……私達は団体行動で、主に戦えない人の救援に向かいます。戦闘は最低限にし、助けることを第一に。それでもダメですか」


ショウとミトロの説得に自分は天秤をかける。


(……いつかは戦闘になる。ならばここで戦場を体験させるのは……いや……それでも命を無駄には……!)


最後の一手を押したのは、シアだった。


「いつかは戦うことになる。私達はそれをレテ君だけに押し付ける事が出来ない。私は、私達はレテ君に戦う術を教えてもらった。なら、ミトロさんの言う通りその力を守るために振るう」


その言葉にみんな頷く。門を次々と兵がくぐり抜ける中、フレッドさんがお願いをしてくる。


「お願いします。お嬢様達を……ご友人様を。連れて行ってください。皆ラクザの力になりたいと思う者。それが決死の覚悟だとしても、貴方一人を行かせるわけには行かないのです」

「……わかりました。皆、いいか。ミトロの言う通り、怪我人や救助を最優先に!敵が出てきた時は一人でなく、連携をして撹乱に持ち込め!最悪倒せなくても正規の兵がそれに気づく!」

「ちょ、レテ君は!?」


ニアが聞いてくる。自分?自分など最初から決まっている。


「自分の実力は見ての通りだ。驕るつもりはない。油断するつもりもない。……ラクザを襲ってきたやつを、叩き潰す」


そう言ってシャラン……という音と共に左手に剣を持つ。この中で恐らく風魔法を駆使して飛行ができるのは自分だけだ。ならば自分は上からの迎撃に行こう。


「覚悟はいいな。なら自分から言うことは一つだけだ!誰一人として死ぬなッ!行くぞッ!」

「「「応ッ!」」」


そう言って門に飛び込む。そこで見たのは、戦火に塗れたラクザの街だった。


「……出来れば綺麗な街を見たかったが、それどころじゃないな。皆、ラクザを助けに行くぞ!」

いつも読んでくださりありがとうございます!

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