表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
59/270

魔力の底上げ

朝日が昇り、そんなに時間も経ってない庭にて、レテは皆に問いかけていた。


「そもそも皆に聞きたいことがある。責めたいとかそういうんじゃないんだ。単に聞きたい。この中で、魔力という存在を意識した人はどれぐらいいる?」

「魔力という……存在?」


ニアが聞き返してくる。皆も同じ反応のようだ。シアは我が家で特訓したからわかるだろうが、黙ってくれている。


「そうだ、魔力は空気をふわふわ漂っているものじゃない。身体の中にあるものなんだ。……試しに皆、お腹の辺りや心臓の辺りに意識を向けて欲しい。目を瞑って、そこだけを知覚する感じで」


そう言うと皆が目を瞑る。すると、数秒でミトロが何かを発見したように口を開く。


「何か、お腹の辺りに渦巻いているものを感じます。……これが、魔力?」

「そうだ、そのまま知覚し続けてみてくれ」


他の皆も分かったようで、シアを除いて初めて感じた魔力そのものに驚いているようだった。


「よし、皆目を開けて。……これが魔力、つまり自分が使える力のコップの水の総量だ。まず、魔法を扱う前にこの総量の上げ方を教えておく」


皆黙って聞いてくれている。質問があってもいいのだが、と思ってシアをチラリと見ると意図を察したシアが家の時と同じような質問をする。


「レテ君、総量なんて上げられるの?今私達、魔力があるっていうのを意識しただけだよ?」


その質問に、当時と同じように返す。


「シア、その気持ちは分かる。だけれどこの意識したというのが大事なんだ。

普段皆はこの魔力を意識せず使っている、勿論それでも魔力の総量は上がる。使った分だけ増えるわけだからな。けど、魔力を意識して引き出して、かつそれを限界になるまでやってあげると……どうなると思う?皆」


そう言って考え始める皆の中から、ダイナが口に出す。


「……意識して使った分、魔力のロスが感じやすくなる。その上、魔力量の底上げが実感しやすくなる?」

(いい所を突くな。流石だ)


そう思いながら、満足そうに頷くと補足しながら説明する。


「ダイナの言った通りだ。意識して使うと、意図せず魔力を使うよりもどのぐらいの魔力で魔法が撃てるか、最低限の魔力で済むようになる。その上、魔力は筋力と同じでギリギリで止めたり使い果たすと、足りないと感じてその総量を引き上げるんだ。そうすれば、最低限の魔力で撃つ魔法の数がどんどん増える。だからまずはこの意識して魔力を引き出すところからだ」


説明を終えると皆が立ち上がる。自分が的を生成しようとした時に、クロウが話す。


「なんかレテって……教え慣れてる?」

「そんな事は無いよ。スイロウ先生の授業を聞いていたら自然とそうなっただけかもしれない」


実際にはシアにも教えたし、何なら理屈で魔法の事をアグラタムに教えたりもしたがそれはそれ、これはこれだ。教え上手と思って貰えたら先生のお陰だろう。

気を取り直して、実感しやすい土の的を顕現系統で量産する。


「一瞬かよ……」

「ああ。でもショウ。これは顕現系統を持つ君でもいつかは絶対に出来ることだ。自分がやったのは、ただ魔力を引っ張り出してそれに的を作れ、と命令しただけなんだからな。だからまずは、魔力を引っ張るところからだ」


そう言うと皆を振り返る。


「まずは魔法の基礎の基礎、とりあえず手に球体を出現させる所だ。だけれど授業とは少し違う。自分の中の魔力を掬って、球体を作るんだ。球体を作る時も魔力への意識をとぎらせずに。皆、やってみてくれ」


皆、悪戦苦闘はしなかった。元々球体を出すのは授業でやった事だし、それが少し変わったに過ぎない。しかし、その効果は絶大だ。


「……私の中の魔力が、減った」

「感じたね。確かに今、私の中を通って魔力が出てきた」


その感覚だ。感覚さえ分かってしまえば後は反復練習あるのみなのである。


「フォレスとファレスの言う通りだ。恐らく皆、魔力が身体の中を通る感覚と減る感覚が実感できたと思う。これを意識すれば、いつも作る球体も少しの魔力量で済むことが分かっていくはずだ。

という訳で後は反復練習!どんな魔法……ああいや、皆や訓練生さんに迷惑をかけない程度の魔法を自分の魔力を感じながら掬って撃つんだ!的なら幾らでも出す!系統を使っても球体じゃなくても構わない!とにかく威力が出ると思ったものや使い慣れた魔法でいいから、魔力を意識し続けながらやるんだ!いいな!」

「「「はいっ!」」」


皆の声が重なって、とにかく的を並べる。

一時間過ぎた辺りだろうか。いち早く気づいたのは、主に火と光を複合で使う彼だった。


「……明らかに魔力の消費が減っている。それに、魔法の発生も早い。まるで、魔力が魔法を覚えたような……」


その表現は的確で、実際それが魔法が使えば使うほど強くなる、という理論そのものだ。


「そうなんだ。魔力が魔法を覚えるんだ。自分達が荷物を持つ時どうやって持ったら楽なのかを探るのと同じで、魔力もどうやったら同じ魔法を最小限の魔力で、素早く、強く撃てるようになるか。それを覚えるから魔法は使えば使うほど強くなるんだ。それを分かれば後は早いはずだ!皆、頑張って撃っていけ!」


皆が頷きながら自分の的に撃っていく。時に壊れれば直し、質問があれば答える。その繰り返しだ。

こうして、二日目から始まった特訓は魔力の扱い方から幕を開けた。

いつも読んでくださりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ