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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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来る時に備えて

「結局同じ部屋になっちゃったけど……良かったの?」


シアが自分に問いかけてくる。結局自分に宛てがわれた部屋にシアが来ることになって、枕だけ持って彼女が部屋にいた。


「自分としては困る事は何も無いからね」

「そっか、じゃあ寝よっか!ふぁぁ……夜更かししたからか、眠気が……」


いつもの就寝時間などとうに過ぎている。自分もようやく眠気がやってきてシアと同じく欠伸をしてしまう。


「寝よう、自分も……ふぁぁ……」

「なんか嬉しいな、レテ君と同じ気分になれるって」

「……なんで?」

「なんでだろうねっ?」


くすくすと笑いながらベッドに入る。自分もベッドに入ると、シアがぎゅっと自分の事を正面から抱きしめてくる。


(ちょっ!?抱き枕にされてる!?)


流石にドキドキしてしまう。けれど眠気は飛ぶことなく、直ぐに寝てしまった。



「……レテ君、本当に寝るのが早いなあ」


抱きしめたまま私はそっと呟く。彼は強くて、私の事を救ってくれて、いつも私と一緒にいてくれて。いつの間にかそんな彼が好きになっていった。

彼がお嫁さんにしてくれる、と言った日の事はずっと覚えている。あれは事故だったけれど、その覚悟は本気だ。

だから私も本気で彼の事を愛そう。イシュリアで敵無しな彼でも、時に秘密を抱えた彼でも、どんな彼でも。


「大好きだよ……レテ君……」


そう言って自分も彼をぎゅっと抱きしめながら眠りについた。

余談だが、先に起きた彼が私を気遣って動かなかったためにじっと私の顔を見つめていて、何だか恥ずかしかった。



「ファレス、フォレス。庭って借りていいのか?」


朝ごはんを食べ終わった連休二日目の朝。やはり美味しいご飯を食べ終わった後に二人に聞く。


「庭?うん、大丈夫だと思うよ!訓練の邪魔しなければ!」

「……一応、おじいちゃんに聞いてみるといいかもしれない。使い道含めて」


二人の暫定的許可が得られたので、皆に言う。


「皆、人攫いの事は覚えている?あれに負けない力をつけるために、自分で良ければ皆に訓練をつけたい。勿論自分は先生でもなんでもない。だから断ってもらっても全然構わない。でも、力が欲しいと思ったら自分は知る限りの事を全力で教える。居なかったら一人で鍛錬するだけ、になるけど。誰かいないかな?」


そう言うと、意外にもばっと真っ先に手が上がったのはショウだった。ワンテンポ遅れてシア、他の皆も全員手を挙げてくれる。


「常々思ってたんだよ、レテの顕現は早いし威力もある。その上他の系統顔負けの力もあるからそれを習ってみたいってな!レテから提案してくれるならそれに乗らない手は無いぜ!」


ショウに続いてレンターも声を出す。


「レテの光魔法は俺の知らない事も多い。それを教えて貰える絶好の機会、逃す訳にはいかない」


ふわふわとしたダイナも、珍しく真剣な口調で発言する。


「レテ君の風魔法、正直今の僕では全く敵わない。けれどその魔法ややり方、力の得方を教えて貰えればレテ君と並ぶとまではいかなくても、自分自身を守れるぐらいにはそれを昇華させていきたい」


決まりだ。傍で聞いていたフレッドさんに許可を求める。


「フレッドさん、先に庭の許可を取るのを忘れましたが……大丈夫ですか?」


そう言うとフレッドさんは一礼して、ニコリとしながら言葉を紡ぐ。


「勿論大丈夫でございます。お嬢様も乗り気でご友人殿も全員乗り気。それに、レテ殿の教えを聞いて基礎をもう一度鍛えて強くなる訓練生もいることでしょう。執事長として庭の使用を許可します。ご存分にお使いください」

「ありがとうございます、フレッドさん」


それを聞くとこちらも頭を下げて、皆に問う。


「……全日使っていい?」

「勿論!レテ君の貴重な講座の機会は逃せないよ〜」


そのニアの言葉を皮切りに皆がまた頷く。


(これは必要な事なんだ。自分の為だけじゃない。タルタロスと呼んだ何かから皆が自分で身を守るためには、学院で学ぶ知識じゃ足りない。だから、本と実践……そして自分だけの知識で皆を護る)

決意を固めながら、じゃあ皆の腹が落ち着いたらすぐに庭に、と発言したら皆が立った。シアとか結構食べていただろうに、大丈夫だろうか。


庭に向かうと、早い訓練生が既に訓練を始めていた。その横で、皆に話す。


「まず、皆も知っての通り魔法は使えば使うほど威力が増す。それは使う事で、頭が魔力をどう使えば効率よく、威力が高く、そして早く撃てるかを知っているからなんだ。……少し見ていて欲しい。自分は顕現系統だと言うことを忘れずに」


そう言うと、皆が不思議そうに離れていく。


それを確認すると、自分は『広域化系統』の要領で炎を広げ、『収縮系統』の技で岩の弾丸をド真ん中で撃ち抜く。続けて『付与系統』の技で脚に水を纏わせるとサマーソルトキックで炎を割いて、最後に『顕現系統』の騎士で炎を消す。


「顕現系統……だよな?」


クロウがわなわなと信じられない物を見たとばかりに言う。皆も信じられないとばかりだ。


「いいや、これは全て知識と魔力が覚えているんだ。確かに自分は顕現系統が得意だけれど、かと言って他の系統が全然使えないなんてことは無い。魔力と知識が系統の使い方を覚えているんだ。勿論、本人が得意とする系統にはかなわないけれどね。……ここまで来て、漸く訓練を始めるよ。系統も技も、知識と魔力が覚えるモノ。自分がなるべくわかりやすく教えるから、皆はそれをひとつでも多く吸収してほしい!」

「「「はいっ!」」」


皆が気合いの入った返事をするのを確認して、訓練に入る。


(……どんな奴らだろうと、友人は。友達を贄になどさせるものか。タルタロス!)

いつも読んでくださりありがとうございます!

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